ショートで守備練習するロッテ・友杉篤輝[撮影=岩下雄太]

 「規定打席、全試合出場と高い目標でやっていたので、それを達成できなかったので、今はそんなに満足していないです」。

 ロッテ・友杉篤輝は3年目の今季、116試合に出場して、打率.230、1本塁打、15打点、7盗塁の成績だった。

 友杉は今季に向けて、「体の使い方だったり、結構色々発見がありながらやっていたので、すごい充実してできてるかなと思います」と体力強化を図り、「ウエイトトレーニングしたりバットを振ったりしていたら筋肉量も増えて、たくさん練習したら体重が増えました」と体重がアップした。

 石垣島春季キャンプ中、「(打撃フォームは)少し変えてますね。イメージだけなんですけど、少し変わっていると思います。イメージしているスイングのために、それをしやすいような足の上げ方だったり、開き方みたいなのを変えてやっています」と話し、「(バットも)今は900グラムで継続しながらやってて、880ぐらい。20グラムくらい軽いやつも用意してもらって、色々試しながらやっていきたいなと思っています」と試行錯誤していた。

 オープン戦では3月11日の日本ハム戦終了後に打率.053まで落ち込んだが、15日の広島戦から3試合連続安打、18日の楽天戦で2安打し、「だいぶ悪かったんですけど、最近良くなってきた。狙いたい方向に打てたり、あとはタイミングもそうですけど、合ってきているかなと。捉え方も、やりたかったことが少しずつできているのかなと思います」と手応えを掴んだ中で開幕を迎えた。

 開幕してからなかなかスコアボードに“H”ランプを灯すことができずにいた。4月16日の取材では、「全然打てていないですし、何かを変えなきゃいけなといけないなというのと、一番打てていた時期のバットなので、何か違いというか、発見があればいいなと思ったので戻しました」と重いバットから軽いバットに変更するなどした。

 打てていない中でも「打率より悪くないなと思っているので、あとは1、2打席で結果を出して、後半打席立てるようにと思ってやっています」と前を向いていた。

 5月に入り、7日の楽天戦で今季初の猛打賞を達成すると、14日と15日の楽天戦で2試合連続マルチ安打、当たりが出てきた。その要因について訊くと「ちょっとポイントを前にしてヘッドが返るところでというか、引っ掛けるくらいの感じで行ったらヒットが出始めました」と説明。

 昨季は“強く振る”ことを意識していたが、「逆に強く振ろう、振ろうというのがあってなかったのかなと思うので、ちょっと意識を変えながら強くというか、勝手に力が出るような感じで今は逆に力を抜いてというイメージでやっています」と、“力を抜いてイメージ”で開幕前は振っていた。

 開幕前に話していた“力を抜いて打つイメージ”とは違うのだろうかーー。

 「そうですね、また違う感覚で打っています」。この時期、打球を見てもライト方向へのポップフライのアウトが減り、「レフト方向を狙う感じで行っているので、うまく引っかかっているかなと思います」と、レフトにライナー性の打球が増えていた。5月は月間打率.311をマークし、4月終了時点で.071だった打率も.254まで上昇した。

◆ 開幕から36試合連続無失策

 守備でも5月20日のオリックス戦、0-1の6回二死一、三塁で西野真弘の三遊間の打球を逆シングルでキャッチし、難しい体勢で二塁へ送球しアウトにすれば、5月28日のオリックス戦、1-0の5回先頭の西野が放ったピッチャーの股を抜けるあたりに、ひょこっと現れスライディングでキャッチしすぐに立ち上がり一塁へ送球しアウト。さらに同日のオリックス戦、1-1の8回二死満塁で西川龍馬のセンターへ抜けそうな鋭い当たりに、横っとびでキャッチし、素早く一塁へ送球しアウトにするなど、開幕から36試合連続無失策。

 好守備が多い要因に友杉は「送球が良くなっていると思うので、それと一緒に安定しているかなと思います」と分析。“送球が良くなっている”でいえば、昨年ZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習で、「根元さんと課題でゲッツーのスローイングの確実性、ランニングスローの確実性だったりというところをやっているので、うまく体の使い方を覚えながら正確性を上げていけたらと思います。守備はショートとして一番大事だと思うので、毎日しっかりやっていきたいと思います」と、全体練習後の特守でスローイングの練習に力を入れていた。

 その守備練習で意識していたのが、“軸足”の使い方。「根元コーチから守備に関しては、軸足じゃないかと言われるので、今(昨年11月6日取材)は取り組んでやっています。スローイングは今年(2024年)から力を入れてやっているんですけど、今(昨年11月6日取材で)は結構バッティングも守備も右足の軸の足の使い方を言われるので、軸足の使い方を意識したらスローイングも良くなってきました」。

 2月の石垣島春季キャンプでも守備に関して、「去年よりもいいスローイングになってきたと結構実感できているので、実戦が楽しみですし、実戦たいいボールが投げれるかっていうのを楽しみにしながらやっていますね。守備は特に軸足意識しながら継続してやれてるかな。それもだいぶ良くなってきたかなって思います」と好感触を掴んだ。

 “軸足”を意識してやってきた成果が出せているか訊くと、「そうですね、それもあると思いますし、縦振りというか上から回転よくというのを意識してから送球がすごく良くなったかなと思います」と話した。

◆ 粘りの打撃も守備は…

 6月は月間打率.190だったが、5月まで68打席で2四球だったが、6月は73打席立って6四球と、しっかりと選球したり、相手投手に球数を投げさせたりと、粘る打席が増えた。

 6月20日のDeNA戦では、4-1の9回一死二塁の第4打席、2球で追い込まれるも、そこからボール見極め、ファウルで粘り、マルセリーノが3ボールから2ストライク投じた10球目の153キロストレートを見送って、四球を選んだ。

 6月に入って四球が増えた理由について友杉は「もともと大事だと思っていたんですけど、振りにいく中で見極めができるようになったのかなと思います」と説明し、6月20日のDeNA戦、2球で追い込まれながら四球を選んだ打席については「結果的に四球になって良かったと思いますし、もちろん打ちにいく中で四球狙いではなくて、四球が取れているのはすごいいいかなと思います」と振り返った。

 一方、守備では6月10日の広島戦で初失策すると、「1つ出てしまうと続けてしまうのが僕の悪いところ。7月はすごいミスをして、もったいない部分があった」と6月と7月の2ヶ月だけで7失策を喫するなどシーズン8失策。

◆ オールスター明け

 オールスター明けは、ショートの頭を越える安打が増えた。「今年に関しては追い込まれてからも、ああいう難しい球を引っ張る意識で打っているので良かったと思います」。8月6日のソフトバンク戦、0-0の2回一死一塁の第1打席、大津亮介が2ストライクから投じた4球目のフォークをショートの頭をこえるライナー性のレフト前安打、8月7日のソフトバンク戦、1-0の5回無死走者なしの第2打席、松本晴が投じた初球の142キロストレートをショートの頭を越えるレフト前安打を放った。

 「いい時も悪い時もありますけど、ある程度、(ポイントを)前で打てているかなと思います」と自己分析。

 ポイントを前にして打つだけでなく、打席の中で狙い球を絞って打ったりしているのだろうかーー。「狙い球を絞って、ある程度この辺イメージしながら打つようにしています」。

 この時期打撃練習で意識していることについて、「終わってから自分で練習するときであったり、広角に打てるのが理想。練習では逆方向を打ちながら、試合では割り切って引っ張りに行くようにやっています」と話した。

 8月31日のソフトバンク戦、「遂に出ちゃいました。カウントも3ー1だったので真っ直ぐだけ狙ってしっかり振りに行くことができました。プロ野球生活で1本ぐらい打ちたいなと思っていたので良かったです」と、3-1の4回一死走者なしの第2打席、木村光が3ボール1ストライクから投じた5球目の150キロストレートをレフトへプロ初本塁打。8月は4本の二塁打を放つなど、長打も増えた。

 ポイントを前にして打つようになった5月は月間打率.311と調子を上げたが、取り組んできたことが形になり、自然と長打も出るようになってきたのだろうかーー。

 「そうですね、強い打球がいくようになりました。(長打が)増えればいいんですけど、まずは率よく打つことなので、そこは意識してやっていきたいと思います」。

◆ 送りバント

 8月後半以降、9番の打順でチャンスメイク、送りバントで1番打者に繋げることが多かった。

 『8番・ショート』でスタメン出場した9月20日の日本ハム戦は、2-7の5回の第2打席、日本ハム先発・達孝太が2ボール2ストライクから投じたストレートを捉え、右中間を破る二塁打でチャンスメイク。続く小川龍成がセンター前に運び、1番・西川史礁の右中間を破る当たりで三塁走者の友杉は3点目のホームを踏んだ。

 友杉は上位に繋げる役割を「できていないことが多いと思います」と反省するも、「出塁なんですけど、コンスタントに打つことができなければ、相手バッテリーのボール球が出てこないと自分は思っているので、まずはボール球を投げてもらえるようなバッティングをすることが大事かなと思います」と、イニングの先頭打者で打席に立つ際の意識について語る。

 送りバントについても、「9番で出ることも多くて、しっかり送れるようにというのは意識してやっています」と3月29日のソフトバンク戦で今季初犠打を決めてから8月24日の西武戦で犠打失敗するまで、18回連続で犠打成功させるなど、最終的にはパ・リーグ3位の21犠打をマークした。

◆ 来季に向けての課題

 シーズン終了後、打撃に関して「新しくいいところもあれば、まだまだだなと思うところがあったので、後半は最後残り試合が少なくなってから、いい部分が出てきたので、来年に活かせたらなと思います」と総括。

 5月から取り組んでいたポイントを前にして打つ感覚については「引っ張りにレフト方向に関してはいい打球を打てる感じがあるので、そこに逆方向を入れながらというのがまだまだできていない。後半、ライトに打とうとしてライト前に出始めたので、そこは良かったかなと思います」と課題を口にした。

 広角に打ちたいイメージについては「最初入ってきた時にプロのボールに対して引っ張ることができなくて、そこから引っ張りにいくことで色々苦しんだことがあったんですけど、引っ張れるようになって次は逆方向になってきたので、そこは良かったかなと思います」と話した。

 守備に関しては6月・7月の2ヶ月で8失策したが、「いい意味で失策を気にせずやった方が、後半また減ってきたりした。去年よりは少なくなったので、そこは良かったかなと思います」と振り返ったように、8月21日の楽天戦から32試合連続無失策でシーズンを終えた。

 昨年秋からスローイングに力を入れ、「いい感覚が増えてきたり、去年よりは少し良くなったかなと思う。継続しながら伸ばしていくことと、ランニングスローのミスが個人的に多いなと思うので、ランニングスローをもう1回練習したいと思います」と、“ランニングスロー”を強化した。

 来季はサブロー監督が就任する。「やることは変わらないですけど、監督が代わったら野球も変わると思うので、そこについていけるようにしながら自分をアピールできたらと思います」。新監督のもと、ショートのレギュラーを来季こそ掴み取りたい。

取材・文=岩下雄太

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