「ほとんどうまくいかなかったシーズンですけど、その中で得られたものがあったシーズンだったと思います」。
ロッテの髙部瑛斗は今年1年を総括した。
昨季はシーズン最終盤に左手首、右膝の故障で離脱したが、76試合に出場して、打率.300、1本塁打、23打点の成績を残した。毎年、打撃では新しい感覚を求めてプレーしているが、“2025年”の打撃スタイルについて、石垣島春季キャンプで「今評価されるのはOPSだと思うので、長打というところであったり、僕はヒットを打つタイプ。ヒット数をどんどん増やしていって、少しでも多くヒットを打ったりとか、チームのいい数値に持っていけるように僕がやろうかなと思っています」と決意した。
3月5日と6日に行われる『ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本vsオランダ』の日本代表に選出され、5日の試合では『9番・センター』で先発出場し、「チャンスは僕の中でも大事だなと打席に入っているので、そういうところで1本打てたというのはすごく良かったかなと思います」と、1-0の6回二死満塁の第3打席、右のデブロックが投じた初球の145キロツーシームをレフト前に2点適時打。侍ジャパン嬉しい初安打が打点付き。6日の試合は7-0の8回一死一塁の場面に代打で登場し、右のプリンスが投じた初球のストレートを積極的に振り抜き、レフト前に2試合連続となる安打。
「みんな考え方も違いますし、チームカラーとかもあるので、違うものが見られている。僕の中では勉強になっています」とし、刺激を受けたことについては「タイミングの取り方、考え方はいいイメージとかを作りやすいなと思いました」と充実の時間になった。
侍ジャパンで2試合連続安打を打ったが、打撃状態について「全然良くないですけど、これからしっかり上げていって開幕でベストに持っていかないといけない。僕はまずしっかり自分のことを見つめてやるかなと思います」とポツリ。
オープン戦では打率.286をマークし、3月28日のソフトバンクとの開幕戦では『7番・センター』でスタメン出場し3安打と好スタートを切った。3・4月はコンスタントに安打を打ったが、固め打ちが少なく、4月終了時点の打率.230。
「僕の場合は状態がいい時は初球からコンタクトできていいところに飛ばせる状態が良い時。少しずつできているのはいいことかなと思います」。
5月に入ると、持ち前の早いカウントから積極的に打ちにいくバッティングで、4日のソフトバンク戦から3試合連続複数安打と状態を上げた。だが好調は長くは続かず、5月は7日の楽天戦を最後に複数安打はなかった。
「全然ダメですけど、やらなきゃいけないので、上げなきゃいけないなという気持ちですね」。
試合前練習でもこの時期、「変な動きが多くなっていたので、それをなくすために1個にまとめているという感じですね」と右足を大きく上げて打ったり、6月8日の中日戦では、「色々工夫して今やっている途中なので、まだ形になっていないんですけど、うまく打てたかなと思います」と、0-0の3回無死走者なしの第1打席、タイミングの取り方を変え、松葉貴大からレフト前に安打を放った。
ピッチャーによっては「タイミングが合わないピッチャーの時にたまにやるという感じですね」とノーステップ打法を試みたり、タイミングの合わせ方についても「工夫しています。とにかくタイミングだと思います」と話した。
5月上旬に固め打ちが増え、状態が上がっていきそうな雰囲気は「感じましたけど、続けられていないのが現状。そこは忘れて、今に集中する感じですね」と胸の内を明かした。
去年から攻め方が変わってきたり感じているのか訊くと、「どうでしょう、自分次第だと思うので、そこは。自分ができていないことが多いので、自分がやらなきゃなと思います」と課題を自身の技術に向けていた。
6月は月間打率.207と苦しみ、7月7日に一軍登録を抹消。7月8日の日本ハム二軍戦では、4-6の7回一死一塁の第4打席、「あれは何回もできることじゃないので、ああいう形で打てれば最高ですね」と松岡洸希が1ボール1ストライクから投じたインコース136キロフォークをライトスタンドに本塁打を放った。
◆ 昇格後は引っ張った打球を増える
7月18日に再昇格を果たすと、「強く振ると考えて引っ張る方向が出てきているかなと思います」と、引っ張った打球が増えた。
8月11日のオリックス戦、3-5の10回一死走者なしの第5打席、才木海翔から放った右中間を破る三塁打、8月14日の日本ハム戦、8-1の6回二死走者なしの第3打席、福島蓮が1ボール2ストライクから投じた4球目の137キロチェンジアップを右中間を破る三塁打も非常によかった。8月11日のオリックス戦、14日の日本ハム戦の2本の三塁打については「振ることを意識してという感じですね」と振り返った。
打率も7月終了時点で打率.239だったが、8月は月間打率.349、8月終了時には打率.266まで上げた。
◆ 球数を投げさせる
早いカウントから積極的に打ちにいくスタイルが持ち味だが、再昇格後は「場面に応じて実践したりしています」と、7月27日の日本ハム戦は5打席で25球、8月11日のオリックス戦は5打席で23球、8月19日の楽天戦は5打席で24球、打席内で投手陣に球数を投げさせた。
7月27日の日本ハム戦では、4-4の11回二死一塁で山本拓実から粘りに粘って、3ボール2ストライクから8球目の152キロストレートを見送り四球を選んだ。「状況ですよね。自分でしっかり状況を見ないといけないなと感じたので、そこは考えています」。
9月4日の日本ハム戦、2-9の9回の第5打席、柳川大晟に対してボールを見極め、ファウルで粘り、3ボール2ストライクからの8球目、高めのストレートを見送り四球を選んだ打席などは、「いいピッチャーなので、簡単には打てない。制球も定まっていなかったので、そういう形になったのかなと思います」と、球数を投げさせた。
強く振ることを意識した8月以降の打率は.337。「全てではないと思うんですけど、それによっていいところもたくさんありましたし、強く振ることによって、自分の新しい強みも多少出てきたと思うので、プラスに左右してこれからに繋げられる部分は出ているかなと思います」。
来季につながっていきそうなものを掴めて、シーズンを終えられたのだろうかーー。
「掴み切っていないですけど、これから自分の考える材料もありますし、このオフどうしなければいけないというのも、後半の戦い方で明確になってきている部分があるので、うまく来年に繋げられるように大切にしたいなと思います」。
打撃の好不調の波はあったが、今季は大きな故障することなく、1年間戦い抜いた。「1年間怪我せずできたのは自分の中でもプラスですし、目標にしていたので、良いんですけど、結果が伴っていない。もっと結果を出せるように。悔しさの方が大きいですね」。
来季はサブロー監督のもと、1974年以来の勝率1位でのリーグ優勝を目指す。「サブローさんは凄く熱いと言いますか、勝ちに全力な方なので、サブローさんをびっくりさせるくらい僕も熱く戦っていきたい。あの人の想像を超えられるようなものを見せたいなと思います」。背番号も自ら志願して今季まで荻野貴司が着けていた『0』に変更。来季は、シーズン通して活躍してみせる。
取材・文=岩下雄太