「1日でも早くZOZOマリンスタジアムで投げられるように頑張るので、ものすごいご声援よろしくお願いします」。
昨年12月4日に行われた新入団選手発表会でこのように意気込んだロッテ・廣池康志郎はプロ1年目の今季、本拠地・ZOZOマリンスタジアムで10試合に登板するなど、一軍で18試合・20回1/3を投げて、1勝3敗4ホールド、防御率4.87の成績を残した。
二軍での実戦デビューは他の大卒ルーキーたちよりも遅かった。廣池と同じように、大卒でプロ入りしたドラフト1位・西川史礁(青山学院大)は開幕から一軍でプレーし、同じ投手でプロ入りした同3位・一條力真(東洋大)、育成3位・長島幸佑(富士大)は開幕してからすぐにファームで実戦登板を果たした。「早く投げたい思いもあるんですけど、焦らず、怪我が一番怖いので、少しずつ実戦の練習をしてから試合で投げられればいいかなと思います」と前を向いた。
実戦に向けて、「前回投げたよりいい投球が次の日できるように、練習で投げた動画を見るようにしていて、どこが悪かったかなとか見るようにして、次の練習に活かしたりしています」とトレーニングを積んでいた中で、4月30日の巨人二軍戦で二軍公式戦初登板を果たす。
大学4年間でストレートのスピードが12キロアップの最速153キロを記録。プロ入りしてからは4月20日の取材で「まだ試合で投げていないので、ブルペンで球速を計測しているんですけど、大学の時よりかはアベレージも上がってストレートは投げていけている。ストレートの質を上げていきたいと思います」と話した中で、ファーム公式戦初登板となった4月30日の巨人二軍戦で150キロ以上のストレートを連発。
5月9日のDeNA二軍戦では、1-8の7回一死走者なしで蓮を2ストライクから空振り三振に仕留めた3球目のストレートは自己最速となる154キロを計測した。
6月21日のDeNA戦で、一軍の公式戦初登板。初回は10球中8球がストレートと力で押し込む投球で三者凡退に抑えたが、2回に牧秀悟、筒香嘉智、戸柱恭孝に3者連続本塁打を浴び、「自分の真っ直ぐは投げられたと思うんですけど、変化球がまだまだだなって。やっぱり真っ直ぐを生かす為に変化球を磨いていかないといけないなと思いました」と、2回4安打3失点のホロ苦い初登板となった。
翌22日に一軍登録抹消され、「自分の中で変化球が得意ではないので、変化球でカウントを取ることを意識してやってきました」と、再び一軍のマウンドで投げるため、課題を持って取り組んだ。
6回・86球を投げ7安打2失点に抑えた7月2日の楽天二軍戦では、「一軍で投げてみて、変化球の時に腕が緩んだり、カウントが不利な時に変化球で取れたら楽にピッチングができるなと思っているので、楽天戦は変化球スライダーが一番制球もできたので、スライダー主体のピッチングになりました」と、ストレートが28球、スライダーが27球、ツーシームが14球、スプリットが10球、カーブが7球と変化球主体のピッチング。
プロ入り後最多の92球を投げた7月12日の楽天二軍戦は、「ピッチングコーチとかと話したりして、前回は真っ直ぐとチェンジアップが多くて、毎回課題を持って取り組んでいます」と、ストレート30球、次いでチェンジアップが19球と、テーマを持って投げ込んだ。
「自分の中で一番ストレートが自信のある球なので、真っ直ぐをブラさないように。まっすぐを軸にピッチングを組み立てて、変化球を磨いていけたらなと思っています」と、変化球の向上を図る中で、自身の良さを忘れることはなかった。
「今回中継ぎとして呼ばれたので、短いイニングになると思うんですけど、三者凡退でしっかり抑えて帰って来れるようにしたいです」。7月19日に一軍登録されると、20日のオリックス戦で、再昇格後初登板。
8-2の9回にマウンドに上がると、先頭の西野真弘を「初登板の横浜スタジアムで投げた時、筒香さんに打たれたのがカーブだったので、同じ失敗はしないようにしないといけないなと思って、西野さんにカーブを投げました」と2ボール2ストライクから投じた8球目の112キロカーブで空振り三振に仕留めると、続く杉本裕太郎を右飛で2アウトとする。
頓宮裕真に、2ストライクから投じた4球目のファウルは「入団した時から155投げるのを目標にしていたので、スピードの面で達成できたのは良かったかなと思います」と、目標に掲げていた自己最速の155キロを計測。次なる目標に「58くらいは出してみたいと思います」と意気込んだ。その頓宮を三直に打ち取り、試合を締めた。
一軍では初となるZOZOマリンスタジアムでのマウンドに、「一軍のマリンは初めてで緊張で、足に感覚がなかったですね」と振り返りながらも、「一軍の相手打者を三者凡退で抑えられたのは本当に、その中で変化球を試せたので自信になりました」と、三者凡退に抑えた。吉井理人監督も試合後、「堂々とストライク先行で良かったと思います」と評価した。
続く7月26日の日本ハム戦(エスコンフィールド)では0-5の5回に登板し、「自分でも思ったよりできすぎた内容で、まっすぐが結構走っていたので、真っ直ぐでも空振りを取れたのが良かったかなと思います」と、先頭の郡司裕也を153キロのストレートで3球三振、続く水野達稀を右飛、最後は万波中正を127キロのチェンジアップで空振り三振に仕留め、1イニングをわずか7球で片付けた。
7月29日の楽天戦(ZOZOマリンスタジアム)は、1-2の9回に登板し、二死走者なしから村林一輝にセンター前に運ばれるも、ボイトを空振り三振に打ち取り無失点。8月3日の西武戦では、1-1の6回から登板し2回を無失点に抑えプロ初ホールド。
8月15日のソフトバンク戦、「近藤選手を三振取れたんですけど、いいバッターを打ち取れると少しは自信になりました」と、1-1の7回一死満塁で近藤健介を2ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた6球目のスプリットが良い落ちだった。
ファームでやってきたことを「出せている日もあれば、ちょっとダメな日もあります。波が…」とポツリ。「ここぞという大事な場面、1球で試合が決まるボールとか投げてしまうこともあるので、1球を大事にしていこうと改めて感じます」と話すように、8月15日のソフトバンク戦では近藤を空振り三振に打ち取った後、続く山川穂高に満塁本塁打を浴び、8月19日の楽天戦では3-3の10回に失点し、2試合連続で敗戦投手と苦い経験も。
それでも、8月23日の西武戦では、0-2の9回にマウンドに上がると、0-2の9回一死二塁で村田怜音を2ストライクから投じた3球目の見逃し三振に仕留めたインコースのストレート、0-2の9回二死二塁でデービスを2ボール2ストライクから見逃し三振に仕留めた7球目のインコースのストレートは素晴らしかった。本人も「完璧に最高のボールを投げられました」と納得の表情。「自分の代名詞みたいなあそこに投げられないと打ち取れないかなと思っています」と右のインコースに投げ切れるのも強み。
同日の西武戦では、「上がってきてからいい時もあったんですけど、なかなか腕の振りが緩くなることもあったので、(8月23日の西武戦の)登板前とかはちゃんと投手コーチと話をしてとにかく腕を振らないと右バッターも反応してくれないから、とにかく腕振って投げろと言われました。昨日(8月23日の西武戦)はだいぶ意識して投げたらインコースにいい反応が出ていました」と明かした。
8月27日のオリックス戦、6-1の9回一死走者なしで紅林弘太郎に1ストライクから投じた2球目の123キロチェンジアップ空振りは良い抜けだった。チェンジアップについて「自分のチェンジアップは落差はないのですが、まっすぐに見えてスピードが落ちてる球。ファウルとか取れているので、いい感じだと思います」と納得のいくボールが投げられているようだ。
「勝ち試合とか関係なく自分のできるボールを投げようと思って投げています」と、8月31日のソフトバンク戦ではプロ入り後初めて勝ち試合の8回に登板し、9月17日のオリックス戦では1-1の8回に登板し無失点に抑えると、直後の9回表に勝ち越し、嬉しいプロ初勝利を手にした。
オールスター明け、一軍で登板する中で、「中継ぎで投げていてファームだったら1試合投げたら1週間空いたりするんですけど、一軍だったら中3日とかで自分の場合投げることが多くて、そこのリカバリーとかの面でも大事だなと感じます」と一軍で投げ続けるために必要なことについて語った。
今季の経験をプロ2年目の来季、生かすことができるか重要になってくる。今年の経験があったから、来季の活躍に繋がったと言えるシーズンを送ってほしい。
取材・文=岩下雄太