ロッテ・寺地隆成[撮影=岩下雄太]

 「最終的にバッティングの方は失速してしまいましたし、最後の最後まで守れたわけではないので、そこはしっかり体の部分、弱いところというか、最後に怪我をしてしまったところは課題だと思っています」。

 ロッテ・寺地隆成は高卒2年目の今季、少ないチャンスをモノにし、“打てる捕手”としての第一歩を踏んだシーズンだったが、全く満足していなかった。

 寺地は昨季高卒1年目ながらイースタン・リーグ2位の打率.290をマークし、一軍プロ初出場となった10月3日の日本ハム戦、第1打席にレフトレフトフェンス直撃の二塁打を放ちプロ初安打を記録した。シーズン終了後にはオーストラリアで行われたウインターリーグに参戦。

 ウインターリーグが終わり、日本に戻ってからは「1月中は自分の練習。自分の苦手分野を克服していきたいと思っているので、バッティングだったらインコースのさばき、内からというイメージを多くしてみたり、今日(1月28日)もスローイングの練習をしたんですけど、以前よりは横に流れるスローの変化がなくなってきているので、そこをやってきましたね」と課題に真摯に向き合った。

 2年目の今季に向け「目標としているのは初ホームラン。去年よりも試合の出場機会を多く求めて、今年は去年よりもしっかり出場できるように頑張っていきたいと思います」と一軍出場試合数のアップを誓った。

 春季キャンプは石垣島組でスタート。第1クール最終日には「いい緊張感でチームプレーだったり、できているんじゃないかなと思います」と話し、「日に日に成長しているってところをしっかり見ていただいて、まずはバッティングだと思うんで。守備もそうですけど、バッティングでどんどん成長していっている姿を見ていただければなと思います」と実戦練習がスタートする第2クールに向け意気込んだ。

 2月8日のライブBPでは「打席の内容はまだまだかなと感じていて、真っ直ぐに刺されないように手で探り探りになって、手で合わせにいこうとしていた部分があったので、ここから修正していきたいと思います」と納得いかず。田中楓基からセンター前に安打性の当たりを放ったが、「少しバットの先気味だったので、あれが芯で捉えていたら左中間だったり、レフトに強い打球だったのかなと思うので」と反省の言葉が並んだ。

 同日の全体練習後の室内練習場では「速い球になれるというか、実戦でのピッチャーのストレートであったり、マシンで普通の打席に立った球速よりはるかに速いと思うので、動体視力というか、反応ができる練習になっていると思います」とマシンに近づいて打席に立ち、打撃練習を行った。

 2月11日のライブBPでは、「3球目から逆打ちのサインのプレーだったんですけど、しっかり反対方向に。真っ直ぐ入りですけど、スライダーにしっかり対応できたかなと思います」と坂本光士郎が投じた3球目をレフト前にポトリと落ちる安打。同日の午後から行われた紅白戦でも「真っ直ぐ入りで、浮いたスライダーと思って、なかなか踏ん張りが効かなくて引っ掛けたような打球でしたけど、打ち損ないにしてはそんなに悪くはないのかなと。全然悪くない打席だったかなと思います」とピッチャー強襲の安打を放った。

 守っても、「スローイングを課題にしていた中で、自分の形の中でしっかり腕を振って、いいスローイング、少し垂れましたけど、いいスローイングに繋がったのですごく良かったのかなと思います」と友杉篤輝の盗塁を刺した。

 同日の紅白戦の出来について、「守備の面では盗塁を刺した部分と、ブロッキングで止められた部分もありましたけど、2つ逸らしてしまったのでもう1回練習をし直して、しっかり試合の中で止められるようにしたいと思いました。2打席目初球ストレートを打ちにいってショートゴロだったと思うんですけど、あのショートゴロでも感覚自体は全然悪くなくて、自分のポイントで前で捉えて、あれが少しバットの上で当たって弾き返せていればショートの頭を超えて、自分の本来の打撃ができたと思うので、トータルで見たら悪くないのかなと思います」と振り返った。

 2月14日のライブBPでは捕手として、「去年だったらなかなかない経験を今シーズンまだ始まっていない中で、春のキャンプですけど受けさせていただいたというのはいい経験になりますので、これから一軍にいれば組ませていただくことがあると思うので今のうちにコミュニケーションをしっかり取っていきたいと思います」と小島和哉、種市篤暉の球を受けた。

 対外試合がスタートしてからは、2月中は打率.077と苦しんだが、その原因について「なかなか今まで初球から打てる、メンタル面もそうですけど、自分で打撃を崩しに行っちゃっているということがすごく多かったので、そこをなんとか少しでも変えたいなと思って、自分なりに初球から振れる準備を心がけてやりました」と説明。

 3月7日のソフトバンクとのオープン戦で猛打賞を達成すれば、3月12日の日本ハムとのオープン戦でも2安打とバットでアピール。ソフトバンク・濵口遥大、日本ハム・齋藤友貴哉からは自身が課題にする“インコース”での安打を放ったが、「変化球だったので、うまく対応できたのかなと感じた部分があります。まだストレートには刺されている部分があるので、そこはこれからの課題かなと思います」と客観的に自己分析した。

 守備面については「ブロッキング面でもしっかり自分の形で入って、しっかりとめている部分が自分の中でも大きく見えているので、すごく自信につながっている部分ではあるんですけど、スローイングが練習でやっていることが繋げられていない。そこはもっと練習、意識をしてやっていかないといけないなと思います」と話した。

◆ 開幕一軍

 「開幕一軍はいいことだと思いますし、それを目標にしていたところなので、でも今は出られていないというのが現状。出場した時になんとか結果を出したいなと思います」。

 寺地は開幕一軍を掴んだが、開幕当時の立ち位置は期待の若手の1人だった。今季を迎えるにあたって捕手には昨季ベストナインを受賞し、プレミア12の日本代表の佐藤都志也がおり、出場するためにはその壁を越える必要があった。

 打席が立てていないことへの不安感は「少しはありますけど、そういうプランじゃないですけど、出場させていただける機会が少ないと思っていた。そこでなんとか少ないチャンスの中で結果を出したいですね」と前を向いた。

 打席に立てない中で、ホームでの試合前練習では工夫を凝らした。試合では白黒のバットを使用しているが、試合前の打撃練習の序盤では「自分が使っているバットより少し長くて、ヘッドを走らせるために、最初のバッティングの時に使うようにしています」と、白木のバットで打った。

 「出場機会が少ない中でもしっかり自分の中で結果を出さないと。一番は打撃でアピールしないといけないので、しっかりアピールできるように。捕手のところでも佐藤都志也さんに勝ることができないと出場機会が増えていかないと思うので、そこを目指してやっていきたいです」。

 少ないチャンスをモノにした。4月18日の日本ハム戦は『9番・捕手』でスタメン出場し、守っては田中晴也、鈴木昭汰、中森俊介の3投手をリードし日本ハム打線を無失点に抑えれば、打っても0-0の5回二死走者なしの第2打席、加藤貴之が1ボールから投じた2球目の121キロのスライダーをライトフェンス直撃の二塁打を放った。

 4月22日の楽天戦は0-0の3回二死走者なしの第1打席、「まっすぐを狙って、うまく反応して打つことができたと思います。1本打つことができて嬉しいです」と、早川隆久が1ボール1ストライクから投じた3球目のインコース145キロのストレートをライトへプロ初本塁打を放つと、1-0の8回一死走者なしの第3打席、藤平尚真が3ボール2ストライクから投じた8球目の140キロインコースフォークを右中間スタンドに本塁打と、1試合に2本塁打。守っても先発オースティン・ボスを来日初勝利に導く好リード。

 4月19日と4月20日の楽天戦、4月22日の西武戦ではベンチスタートも、4月20日の楽天戦と4月22日の西武戦、代打で2試合連続安打を放ち、4月23日の西武戦から先発マスクの機会が一気に増えた。

 開幕から1ヶ月半が過ぎた5月18日の取材で、チャンスが少ないかもと話していた中で、出場機会が増えたことについて訊くと、「ピッチャーの兼ね合いもそうですけど、出させていただいている以上、責任を持ってやらないといけないと思いますし、その分、勝利に貢献しないといけない。出ている以上は頑張らないといけないと思います」と、浮ついた様子が全くなかった。

◆ 交流戦では2番に定着

 交流戦が入ってからは、「任された打順で打っている感じです。そこに関しては、特にどの打順だろうがやることは変わらないので、はい」と、『2番・捕手』が寺地の定位置になった。

 今季に向けてシーズンオフは“ストレートの対応”、“インコースのさばき”を取り組んできたが、その成果を一軍の舞台で発揮しているように見えたが、「まだまだやと思っているので、これからさらにインコースの対応であったり、長所でもあるセンターから左方向というところを消さないようにやっていきたいと思います」と回答。

 “まだまだ”と感じる部分に、「ストレートでいく中でファウルを取られたり、若干打たされている打席も多いと思うので、その打席を少しでも少なくできるように。自分からバッティングフォームを崩さないよう自分の中の形で、1球、1球対応できればなと思います」と明かした。

 一軍と二軍の違いがあるとはいえ、ファームでは昨季不調の時期もあったが、「自分の中でもタイミングを崩されてしまうとフォームも崩れて打てないというのが、自分でも明確にわかっています。去年はそれがわからなかった部分があったと思うんですけど、今年は自分の中でもわかっているのでその試合の中で1打席、1打席工夫して、次の打席はこういこうというのをやっているので、去年と違う結果になっているのかなと思います」と、今季前半戦は大きな波がなかった。前半戦は打率.274、5本塁打、22打点の成績を残し、高卒2年目ながら『マイナビオールスターゲーム2025』にも監督選抜で出場した。

 オールスターゲームでは第2戦、『7番・捕手』でスタメン出場し、6-1の3回二死二塁で、山﨑伊織が1ボールから投じた高めのストレートを左中間フェンス直撃の適時二塁打。これが寺地にとってオールスター初安打、初打点となった。

◆ オールスター明け

 オールスター明けも、7月27日の日本ハム戦から8月7日のソフトバンク戦にかけて10試合連続安打。

 「打てる日もあれば打てない日もあると思いますが、凡打の内容だとか、ヒットを打ったらもう1本出したいところで出せないというか、(8月5日の)ソフトバンク戦もそうですけど、1打席目に折角ヒットを打ったのに、そこから無駄にしているわけではないですけど、結果的に無駄になってしまっている打席が多いと思います。詰めの甘さだと思いますし、これからどんどん詰めていかなければいけないところなので、そこはやっていかなければならないのかなと思います」。

 この時期、白黒のバットだけでなく、7月27日の日本ハム戦で全打席、白木のバットで打席に立つなど、白木のバットで打つこともあった。開幕から試合前練習では、ヘッドを走らせるために白木のバットを使用していたが、「それもありますし、ちょっと気分転換に、打てない日の次の試合とかだったり、ちょっとヒット打てなさそうだなと感じた時に気分転換に変えているという感じです」と教えてくれた。

 8月下旬からは故障により、指名打者で出場する機会が増えた。「特にキャッチャーで出ている時と変わらず、考えすぎるとどうしても初球から振りにいけないことがあるので、なかなかキャッチャーとして出ることは少ないですけど、DHという与られた役割の中でしっかりと全うできればなと思います」。

 9月16日のオリックス戦、2-7の7回一死三塁の第4打席、岩嵜翔に対し2球で追い込まれるも、2ボール2ストライクから8球目の142キロフォーク、9球目の142キロフォークを見送り四球を選んだ打席は非常に良かった。

 寺地は「自分の中でも、ちょっと違ったところが見えました。今までにない打席の工夫だったり、変化が見られたと、振り返って思いますね」と満足のいく打席になった。

 「なかなか今シーズンできたことじゃなかったので、自分の中でも成長を感じられたというか、真っ直ぐを打ちに行った中で低めの変化球を見送れることがあの打席ではできたので、これからもそういう打席を。追い込まれてから簡単に三振するのではなくて、なんとか粘って、粘って、失投を仕留められるようにというところをやっていければなと思いましたね」。

 9月22日の日本ハム戦、2-0の8回二死一塁の第4打席、「嬉しいです。去年ファームだったら99安打だったので、100安打の壁があったと思うんですけど、一軍の舞台でしっかり100安打打てたことは次に繋げられるのかなと思います」と、田中正義が1ボールから投じた2球目の外角128キロカットボールを泳ぎながらもライト前に安打。これが寺地にとってシーズン初の100安打となった。

 捕手でスタメン出場した試合は打率.270をマークしたが、「DHが多くなってから1本出る日があるんですけど、2本目、3本目がなかなか出なかったり、1本出ない日というのがあったので、それこそ悔しい打席が多かった。これが捉えられたというところもあったので、そこは次にしっかり繋いでいければなと思います」と、指名打者でスタメン出場した試合は打率.196と落ち込んだ。

 それでも、プロ2年目の今季は116試合に出場して、打率.256、5本塁打、33打点。規定打席にも到達し、球団では21世紀以降の高卒2年目選手でシーズン最多となる106安打を放った。

 シーズン通して、自主トレ期間から課題に挙げていた“インコースの対応”、“ストレートの対応”、ここに関してはどうだったのだろうかーー。

 「去年よりかはインコースのさばき、まっすぐに関しても打てているところもあれば、去年より成長したところはあるのかなと感じているんですけど、その中でもしっかりインコースを一発で仕留め切るということがなかなかできなかったところでもあったので、しっかり引き続きできるように来年の課題としてやっていければと思います」。

◆ 秋季練習・秋季キャンプ

 レギュラーシーズン終了後、ZOZOマリンスタジアムで行われた10月の秋季練習の打撃練習では、最初はバットを少し短く持ってノーステップ、少し時間が経つとバットを少し短く持って足を上げて打ち、今度はバットを長く持って足を上げて打つなど、さまざまな形で打った。

 その理由について「ノーステップの時はボールを引きつけて自分の良いポイントで打てることを確認できるので、足を上げたときに軸がブレないように、しっかりノーステップで軸を作った中で、しっかり短くバットを持ってコンパクトで打てるようにということを意識しているだけですね。特に試合でやるというよりかは、練習の中で足を上げた状態でしっかり軸をブレずにやれる状態を意識してやっています」と説明。

 「“このタイミングで足を上げたらどうなるんだろう”とか、確認できることは今だけだと思っているので、いろんなところで“ピッチャーが足を上げたこのタイミングでこうだった”、“このタイミングだったらよかった”、“逆にこのタイミングだったらダメだった”というのを今の時期は確認できると思うので、そういう作業もしています」と、さまざまなタイミングで打った。

 守備練習でも、捕手防具をつけ、1時間以上捕手練習。「足がもげるかと思いました」と振り返るほど、ハードな練習で徹底的に鍛えた。守備練習で意識していることについては「今はスローイングよりもブロッキング、キャッチングがメインなので、今年あまりうまくいかなかったところだとか、キャッチングの中でしっかりブロッキングができるのか、構えの段階からしっかりできるようにやっています」と語った。

 都城秋季キャンプで、「バッティングの面は秋のキャンプで自分の形というか、やるべきことがしっかり見つかった」と話し、「投げていない期間でブロッキングだったり、キャッチングは練習できて、キャンプで広島さんや韓国のチームと対戦させていただいた時も、しっかり試合に繋げられたので、次はスローイングをやっていければと思います」とスローイングを磨いていくことを誓った。

 来年に向けて勝負は始まっている。12月は技術練習を行いながら、ウエイトトレーニングをメインに行い、1月からはDeNA・戸柱恭孝に弟子入りし自主トレを行う予定。

 「今年の成績が自分の成績の最底辺だと思って今後やっていこうと思っているので、まだまだこんなもんじゃないぞと思っていますし、今年も勝利に貢献できたことが少なかったと自分の中では思うので、最大限自分の力を発揮してチームの勝利、順位をここから上げていって、勝利、優勝を目指して、チームを引っ張れればなと思います」。来年は正捕手を掴み、“打てる捕手”元年にして見せる。

取材・文=岩下雄太

もっと読む