阪神・藤川球児監督 (C)Kyodo News

 20~30年前に比べると、プロ野球の監督人事はやや入れ替わりが激しくなった印象がある。

 一昔前の1990年代前後は、森祇晶監督(西武=1986~94年)や野村克也監督(ヤクルト=1990~98年)、長嶋茂雄監督(巨人=1993~2001年)が10年近くにわたって政権を握ったが、現役最長は新庄剛志監督(日本ハム)の5年。ここ10年ほどは、ある程度の成績を残していても3~5年をめどに退くケースが多くなっている。

 そんな中、就任1年目から結果を出す監督も増加傾向だ。2024年シーズンまで就任1年目でチームを優勝に導いた新人監督は19人いた(2リーグ制になった1950年以降)が、そのうち11人が2000年以降だ。

 昨季以前の17人の中で、2年目もリーグ優勝を果たし連覇を成し遂げたのは、意外と少なく2人だけだった。1960年に大毎を優勝に導いた西本幸雄監督は1年で解任されており、実質16人中2人しか連覇を果たしていなかった。つまり、2年目のV確率はたった12.5%だったということになる。

▼ 「就任1年目」に優勝した監督と翌年順位(2リーグ制となった1950年以降)

1950年:湯浅禎夫(毎日)→3位

1960年:西本幸雄(大毎)→解任

1961年:川上哲治(巨人)→4位

1975年:古葉竹織(広島)→3位

1981年:藤田元司(巨人)→2位

1986年:阿南準郎(広島)→3位

1986年:森 祗晶(西武)→優勝

1998年:権藤 博(横浜)→3位

2002年:原 辰徳(巨人)→3位

2002年:伊原春樹(西武)→2位

2004年:落合博満(中日)→2位

2004年:伊東 勤(西武)→3位

2008年:渡辺久信(西武)→4位

2012年:栗山英樹(日本ハム)→6位

2015年:真中 満(ヤクルト)→5位

2015年:工藤公康(ソフトバンク)→2位

2021年:中嶋 聡(オリックス)→優勝

2024年:小久保裕紀(ソフトバンク)→優勝new

2024年:阿部慎之助(巨人)→3位new

※75年広島の古葉竹織監督はシーズン途中に就任し優勝。

 今季、“2年目のジンクス”に挑んだのは、小久保裕紀監督(ソフトバンク)と阿部慎之助監督(巨人)の2人だった。

 小久保監督率いるソフトバンクは故障者続出で開幕ダッシュに失敗したものの、若手の積極的な起用が功を奏し、夏場に日本ハムを逆転。小久保監督は史上3人目となる就任から2連覇を達成し、チームを5年ぶりの日本一にも導いた。

 そんな小久保監督と対照的だったのが、巨人の阿部監督だ。オフに“50億円”規模の大補強を敢行したにもかかわらず、阪神に独走を許しただけでなく、最後はDeNAにも逆転され3位に転落。川上哲治監督や藤田元司監督ら大先輩が成し得なかった就任からの連覇を果たせなかった。

 そして来季は阪神の藤川球児監督が難易度の高いこの偉業に挑戦する。他球団からのマークが厳しくなることも予想されるが、そもそも阪神という球団自体が連覇を経験したことがない。

 歴史的に見ると、阪神は優勝の翌年に高い確率でAクラスに入っているものの、期待を裏切り続けてきた背景がある。圧倒的な戦力を擁する阪神は、歴史を繰り返すのか、それとも覆すのか。2年目を迎える藤川監督の采配に注目が集まる。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

この記事を書いたのは

八木遊

1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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