「出だしが本当にかなり躓いたなっていう印象で、本当に後半なんとか試行錯誤しながら持ち堪えたなという感じでした」
ロッテの藤岡裕大は今季1年をこのように振り返った。
昨シーズン終了後に、オフのテーマに「毎年そうですけど、スイングスピードを求めながら、体もしっかり作って。打つことを中心にやっていきたいと思います」と話していたが、「自主トレはフォームもそうですし、フォームを中心に打つことをやっていました」としっかりとバットを振り込んできた。
今季はチームキャプテンを務め、石垣島春季キャンプでは「いつも意識して、いろんな声を出すことはやっています」と、これまでと変わらず、守備練習中に友杉篤輝、宮崎竜成といった若手選手たちに積極的に声をかけていた。キャプテンとして過ごした石垣島春季キャンプは「そんなに今までと変わらなかったですけど、若い子中心なので、そこは今までと違うところだと思います」と振り返った。
石垣島春季キャンプ最終日となった2月16日の取材で、開幕に向けて「個人としては良い状態で迎えたいですけど、143試合長いのでトータルを見てやっていきたい。チームとしてはオープン戦から勝てるチームにと思って、良い勢いで入っていければなと思います」と、怪我で離脱した時期もあったが3月14日の広島とのオープン戦から一軍復帰し、オープン戦最終戦となった3月23日の巨人戦では猛打賞を放った。
今季目指す数字に「OPSが8を超えられるように。そこを目指してやっています」と掲げ、開幕を迎えた。
3月28日のソフトバンクとの開幕戦、『2番・セカンド』でスタメン出場した藤岡は、0-1の6回に小川龍成、西川史礁の適時打で逆転しなお無死一、二塁の第3打席、有原航平が投じた初球のツーシームに流れを止めることなくきっちり捕犠打。藤原恭大の2点適時打、佐藤都志也の2ランに繋げる価値ある犠打となった。
3月30日のソフトバンク戦でも、1-4の7回無死一塁の第3打席、上沢直之が1ボール1ストライクから投じた3球目の116キロカーブを一ゴロで一塁走者・西川を二塁へ進める進塁打。その後、ポランコの左中間を破る適時二塁打、代打・岡大海の同点2点適時二塁打に繋がった。
進塁打、犠打とチームバッティングで貢献していたが、今季初安打を放つまでに5試合・14打席かかった。
シーズン終了後の契約更改の席で、出だし躓いた原因について「キャンプ中に(右肘の)怪我があったので、そこで思うように調整できず、試合数もシーズン前に打席に立つことが少なくて、その辺でイメージと一致しなかったというのもありますし、自主トレでやってきたことが体に染み込んでいなままシーズンを迎えたので、それが悪い方に出たなという感じですね」と自己分析。
その後も、なかなか安打が出ない中でも、4月11日のソフトバンク戦、得点には繋がらなかったが、0-0の初回無死一塁の第1打席、有原が2ボールから投じた3球目のツーシームを引っ張って二ゴロ。一塁走者・藤原を二塁へ進める進塁打と、最低限の役割を果たした。
4月15日に2安打すると、同試合から6試合連続安打を放つなど、4月を打率.232で終える。5月7日の楽天戦で、「とにかく繋ごうと思って打ちにいったのが最高の結果になりました」と今季第1号を放つと、23日の西武戦でも第2号ソロ。
交流戦に入ってからは6月4日の巨人戦、「ボール先行になったので思い切っていきました。一番良い形になってくれて良かった」と2回に第3号2ランを放つと、「チャンスだったので落ちてくれて良かった」と3回にも適時打を放つなど、2安打3打点の大暴れ。14日のヤクルト戦から4試合連続安打を放ち、6月20日のDeNA戦では、ケイに対して2球で追い込まれるも、ファウルとボール見極め、7球目135キロスライダーで四球を選んだ。
「シーズン前半は10日おきに注射を打ちながら、3ヶ月くらいずっとそんな感じでやっていた」と明かし、「後半はだいぶ落ち着いてきましたが、投げることも多くなってきて、負担はありましたけど、手術するほどでもないかなという感じですね」と現状の右肘の具合について説明した。
肘が回復傾向にあった9月は18試合に出場して、月間打率.360、1本塁打、5打点。OPS“8”を目指していた中で、9月のOPSは.908を記録した。打撃面で来季に繋がる部分はあったのだろうかーー。
「正直、後半なぜ打てていたのかわからない状態だったので、調子が良くて打てたのかなくらいで、あんまり来年に繋がるような感じで終えたなというのはないです」。
今季は規定打席に届かなかったものの、シーズン通して一軍でプレーし、102試合に出場して、打率.256、4本塁打、25打点、OPS.694で終えた。レギュラーシーズン終了後には、「ここで優勝したいという思いはありましたし、それを持って来年以降やらないといけないなと」と、今季取得した国内FA権を行使せず残留を決めた。残留の決め手の一つに、「来年ショートでやってくれと言われたので、そこが自分の中では大きかった」と、ショート復帰を挙げた。
藤岡は「どこをやるかはまだわからないんですけど、どこでも行けるようにキャンプまで準備したいなと思います」としながらも、ショートへのこだわりについて報道陣から問われると、「1番安定して守れる選手があそこを守るべきだと思いますし、二遊間は周りも見ないといけないというのもありますし、サインもすごく多い。責任感をもって守らないといけないポジション。やりがいはあるなと感じています」と話した。
「シーズン通してかなり苦しいシーズンもそうでしたし、個人としてもうまくいかないことだらけだったので、来年はそうならないようにしたい」。来季はチームとしても、藤岡個人としても、笑顔の多い1年にしたい。
取材・文=岩下雄太