『実況パワフルプロ野球2016』

 正月にレトロゲームショップで買った2026円のPS4ソフト5本入り福袋から、絶妙に懐かしい野球ゲームが出た。

『実況パワフルプロ野球2016』(コナミデジタルエンタテインメント)である。10年前の古い選手データの野球ゲームは、110円のジャンクコーナー常連の福袋的にはハズレソフトかもしれない。だが、個人的には大当たりだ。すべての野球ゲームは、発売当時のプロ野球の記録集でもある。

 さっそく久々に10年前のパワプロを起動させてみる。選手データをアップデートすると、2016年版と2017年版が遊べるが、17年版のみ日本ハムの大谷翔平をDH解除してリアル二刀流で使用することができる。なお、その17年が大谷の日本ハムラストイヤーだった。つまりパワプロ2016は、シリーズで日本ハムの大谷が遊べる最後の1本なのである(プレイステーション3対応ソフトの発売も本作がラスト)。

 実際のプロ野球の2016年シーズンは、栗山英樹監督率いる日本ハムがペナントレースで、ソフトバンクとの最大11.5差を大逆転V。日本シリーズで「神ってる」と「カープ女子」が話題の広島をくだし、10年ぶりの日本一に輝いて、大谷が初のシーズンMVPを受賞した。投げては10勝を挙げ、防御率1.86。打者としては打率.322、22本塁打、67打点でパ・リーグのベストナインでは史上初の投手と指名打者の同時受賞の快挙を達成する。CSファイナル第5戦では、日本最速記録を更新する165キロをマーク。日本シリーズでは、この年限りで現役引退する黒田博樹との対戦も話題となった。いわば、日本ハム時代の大谷翔平のハイライトとも言える1年だった。

選手データを確認すると、投手・大谷は最速165キロでコントロールE・42、スタミナA・88でフォーク、スライダー、スローカーブを実装。打者・大谷は、弾道3、ミートA・80、パワーA・80、走力B・75、肩力A・83で広角打法、内野安打、サヨナラ男、レーザービームといった特殊能力だ。チームメイトの中田翔やレアードがパワーAの弾道4なので、のちのMLB本塁打王の大谷(もはや弾道6レベル)も10年前はまだ進化の途中にいた印象である。

平成後期のNPBで大谷以上の強打者が、ヤクルトの山田哲人とソフトバンクの柳田悠岐だ。当時、山田は24歳、柳田は28歳のトリプルスリーが当たり前の全盛期真っ只中。山田は2015年に打率.329、38本塁打、100打点、34盗塁で史上初の本塁打王と盗塁王を同時獲得。ソフトバンクとの日本シリーズ第3戦では3打席連続アーチを放ち(3本目は千賀滉大から)、16年も2年連続トリプルスリーを達成している。

柳田も2015年はキャリアハイの打率.363、34本塁打、99打点、32盗塁で首位打者に輝き、「30-30クラブ」の仲間入り。仮にこのフィジカルがピークの時期の山田と柳田がメジャー挑戦をしていたらどれくらいの数字を残せていたか……というのは、野球ファンの永遠に語れる酒の肴である。ちなみに、当時ソフトバンクの甲斐拓也の登録名が、「拓也」だったことを覚えているファンがどれだけいるだろうか?

高橋由伸新監督が指揮を執った巨人は、首位広島と17.5ゲームの大差をつけられ2位。チーム内の外国人選手の多さに驚かされる。ギャレット、クルーズ、アンダーソン、ガルシア、アブレイユ、マシソン、マイコラス、ポレダ、ガブリエル、メンドーサと懐かしい面々だ。みんな大好き「コバヤシィ!」とキャッチング指導する頼れるマイコラス。16年に最優秀中継ぎのタイトルを受賞したバリバリのマシソン先生。野手では、えっガルシア? そう現在、メジャーリーグで活躍する、あのホセ・アドリス・ガルシアである。

キューバの逸材の巨人時代の背番号は「79」。1軍では7打数ノーヒットの打率.000という数字を残し、フランス経由であっさり亡命して風のように去ったガルシアは、2023年にはレンジャースで39本塁打を放ち、エンゼルス時代の大谷とキングを争った。本作では弾道3、ミートF、パワーD、走力B、肩力B、守備力Eと23歳の育てる助っ人枠である。もしも、ガルシアが巨人でしばらくプレーしていたら、岡本和真との「OG砲」で日本球界の歴史を変えていたことだろう。

 いや、そのifの歴史がパワプロ2016なら今から再現できる! 巨人を選択してペナントモードで、当時2年目の岡本とキューバの逸材ガルシアを一軍でスタメン起用。近未来に投資しつつ、幻の高橋由伸監督の胴上げを実現させたい。令和から、平成に飛んで違う世界線のプロ野球を楽しむ。まさに『実況パワフルプロ野球2016』は、野球ファンにとって『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の時空を行き来するデロリアンなのである。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

この記事を書いたのは

中溝康隆

1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2010年開始のブログ『プロ野球死亡遊戯』が話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人を担当し初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)『令和の巨人軍』(新潮社)ほか。新刊『巨人軍vs.落合博満』(文藝春秋)も絶賛発売中! 

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