広島・平川蓮 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2026・第7回

 いつだって新戦力の溌剌プレーを見るのは心躍る。

 チーム状態が、どん底で“孝行息子”の出現を渇望している時期ならならなおさらのことだ。

 広島のドラフト1位・平川蓮選手が、初の対外試合でいきなり爆発した。

 15日に行われた巨人との練習試合に「一番・指名打者」で出場すると、2安打1盗塁の鮮烈デビュー。初回は巨人・竹丸和幸投手との「ドラ1対決」となったが、力むことなく中前打。3回には二盗を決めると7回には勝ち越しとなる右前打と、内容も首脳陣を唸らせるもの。187センチ、93キロの巨体を誇る好素材には、新井貴浩監督も「対応力、適応力というものは本当に素晴らしいものを持っている」と最上級の点数をつけた。

 高校は北海道札幌国際情報、大学は仙台大と全国的な注目度は低かったが、走攻守三拍子揃った強打者に成長して、大学日本代表にも選出されている。左右どちらの打席でも一発が期待出来るスイッチヒッターというのも大きな魅力だ。

 広島入団後には、キャンプイン当日に秋山翔吾、小園海斗ら主軸選手に、いきなり質問攻めをしたと言うほど心臓面も強い。まさにプロ向きの金の卵と言えるだろう。

 この日は平川以外にも、ドラフト3位の勝田成選手(近大)や、同6位の西川篤夢選手(神村学園高伊賀)も揃って安打デビュー。中でも今季入団9選手のうち、ただ一人の高卒ルーキーである西川は、素材の良さが認められて異例の一軍キャンプを勝ち取っている。指揮官も「高校生とは思えない動き」と将来性に太鼓判を押す秘蔵っ子的存在だ。

 チームはかつてないほど、危機的状況に直面している。

 直近の2年間は、春先こそ快調に飛び出すが、夏前から失速が続きBクラスに沈んでいる。昨年は59勝79敗5分けの5位だが、6月の交流戦以降は26勝47敗3分けと壊滅的な状態に陥っている。特に攻撃陣は小園が首位打者、最高出塁率のタイトルを獲るなど一人気を吐いたが、規定打席に到達した打者はわずか3人。故障者や不振な選手が続出して、チーム本塁打(71本)はリーグ最下位、同得点(441点)も5位だからお寒い。

 夏以降、マツダスタジアムには空席が目立ちだし、ファンからもソッポを向かれ出した。実力と人気に赤信号が灯り、チームは若返りに活路を見出そうとしている。昨年のドラフト1位・佐々木泰選手がシーズン途中から大器の片鱗をのぞかせている。ここに平川らの新戦力が加われば新たな活力が生まれる。

 苦境に立つカープにとって追い打ちをかけるような痛恨の出来事もあった。

 1月27日には羽月隆太郎選手が禁止薬物(ゾンビたばこ)使用の疑いで逮捕されている。

 プロ7年目でようやく頭角を現して来た矢先の不祥事は球界全体に暗い影を落とした。チームにとっても汚名挽回は、新たに若返った組織で、溌剌としたプレーを続け信頼を取り戻すしかない。

 今春のキャンプ初日。新井監督の表情は例年以上に厳しく、報道陣も近寄り難い雰囲気にあふれていたと言う。「羽月事件」だけではない。自身も進退を賭ける勝負の3年目を迎えている。

「今年はとにかく結果にこだわる」と自ら背水の陣を宣言。厳しさを前面に押し出した“サバイバル・キャンプ”で、チームの新たな可能性を作り出そうと構想を巡らせる。

 投手陣では、昨年までの守護神・栗林良吏を先発に転向させ、捕手の坂倉将吾選手の一、三塁コンバートも模索。ここへ中村奨成や佐々木らがレギュラーを掴み、さらに大物ルーキー平川が外野の一角に入ってくれば、打線に厚みと破壊力が加わる。

「最初の試合でワクワクしていた。野球って楽しいなって思った」と、上々のすべり出しに平川の声が弾んだ。

 ふり向けばヤクルト。最下位一歩手前まで追い込まれた苦い思いも、球界を揺るがす不祥事もすべて背負っての再出発だ。

 マツダスタジアムに再び熱狂が戻って来るには大物ルーキーを予感させる平川の働きが必要不可欠である。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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