☆時代の転換点
ベイスターズのブルペンを長年支え続けてきた三嶋一輝が、チームを去る。DeNA体制の象徴とも言える右腕の離脱は、2026年というシーズンの大きな転換点だ。
その一報に、誰よりも特別な感情を抱いたのは、隣で苦楽を共にしてきた山﨑康晃だった。「寂しいですけれども、僕も現役としての賞味期限がありますからね」。
プロとしての冷徹な現実を見据えつつも、その言葉の端々には隠しきれない寂しさが滲む。
三嶋もまた、山﨑への想いは同じだった。
「ヤスとは本当に長い時間一緒に過ごした野球選手ですね。プライベートでの時間も多かったですし、本当にいろいろなことを話しました。僕が彼にしか言えないこともありましたし、彼も僕にしか言えないこともありました」。二人の間には、外からは窺い知れない濃密な時間が流れていた。
☆聖域を巡る「誇り」と「尊敬」
二人の関係を語る上で欠かせないのが、守護神という、チームに一つしかない「聖域」を巡る争いだ。2020年、不調に陥った山﨑に代わり、三嶋がその座を担った時期がある。
「彼がクローザーをやっている時期に、僕がちょこっとクローザーを務められたことは、僕の人生の中の誇りです。年下ですけれども、本当に彼のことは尊敬していますから」。誰よりも認めているからこそ、その座を奪い取ったことに喜びを感じた。
☆異なるエッセンスの融合
また山﨑は三嶋の気遣いにも触れる。
「僕とは違うエッセンスをブルペンに持ってきてくれた先輩でした。僕は帝京から亜細亜大で、泥臭くさぁ行くぞ!って感じが好きなんですけれども、三嶋さんはスマートにみんなの心に寄り添ってくれて。どんなときも誰一人離すことなく、みんなで同じ方向に向かって頑張ろうという、僕とは違った寄り添い方をしてくれた先輩でした」
熱く鼓舞する山﨑とは違う感性の三嶋。この二つの個性が重なり合うことで、ベイスターズのブルペンはより強固な絆で結ばれた。
☆継承されるリリーバーの魂
かつて三浦大輔監督と共に厚木で泥にまみれた自主トレ。そして、守護神の座を懸けた激しい日々。戦友が去る現実を前に、山﨑は複雑な胸の内を明かしながらも、前を向く。
「いろいろな引退試合を経験させていただきましたけれども、一緒にやってきたメンバーはいろいろ思うところがあるので」
田中健二朗、須田幸太、三上朋也、平田真吾、国吉佑樹、砂田毅樹、エドウィン・エスコバーら……。多くの先輩たちが繋いできたバトンを、最後に三嶋と山﨑が受け継いできた。「三嶋さんの想いも含めて、また僕たちは頑張っていかなきゃいけないですね」。三嶋が残した大切な心は、これからも横浜のブルペンに、確かに息づいていく。
写真・文・取材 / 萩原孝弘