DeNA・益子京右(撮影=萩原孝弘)

 DeNAベイスターズの捕手陣は、今や12球団でも屈指の層の暑さを誇る。侍ジャパンの経験もある山本祐大、天賦の才を持つ松尾汐恩、頼れるベテラン戸柱恭孝の3人に加え、九鬼隆平、東妻純平、さらには現役ドラフトで古市尊も加わった。

 この熾烈な競争の渦中、2018年のドラフト5位入団、8年目を迎える益子京右は、静かに熱く闘志を燃やしている。

◆ 勝負のプロ8年目

 益子は自らの立場を熟知している。2021年には一軍でお立ち台に上がり、勝負強さとフレッシュさをファンに印象付けたこともあった。しかし一軍出場は通算5試合のみ。ここ2年間はファーム暮らしが続いている現状では、危機感を覚えるのも当然のことだろう。

 「もう言い訳はできないですからね」。近年は肩、肘の痛みに悩まされ、24年オフには右肘クリーニング手術、25年5月には左有鉤骨骨片切除の手術を敢行。内なる敵ではなく、外に向けての戦いに100%の力を注ぐことができる今シーズンには、並々ならぬ覚悟が滲み出る。

◆ オーストラリアで2ヶ月半の武者修行

 「来年は本当に勝負の年」と位置づけ、昨年オフはオーストラリアのウィンターリーグに2ヶ月半、身を投じた。「野球のレベルはそんなに高くはないよって聞いていたのですが、めちゃくちゃレベル高かったです。今年WBCがあったこともあり、メキシコ、ベネズエラ、キューバとかいろいろな国からいい選手が集まっていましたね」

 日本の一軍級のピッチャーも「ごろごろいました」と当初はパワーとスピードに戸惑いもあった。しかし徐々にアジャストし、最終的には打率.276、ホームラン1、OPS.768という確かな数字を残した。

 「速い球を弾きにいきながら、ボールになる変化球を我慢するような待ち方はどれがいいんだろうと考えてやってました。それには無駄な動きを減らさないといけなかったです。モーションも早いので、タイミングを大きく取っていると難しかったですね」

 ボールを引き付け、見極める。そして最短距離でバットを出す。異国の地で得た技は、帰国後もしっかりと活かされている。「スピード自体は速く感じなかったですね。日本のピッチャーはめちゃくちゃキレイな真っ直ぐを投げるのと、やっぱりコントロールがいいので難しい面はありましたけど、もう大丈夫です」

 ブラッシュアップは技術面だけではない。オーストラリアでは肉体改造にも着手した。「いままでは筋肉トレーニングはあまりしてこなかったのですが、11月からやり始めました」。何かを変えなくてはという思いから始めた新しい取り組みから「体脂肪だけで3キロ減りました。筋量はキープしたままですがボールは飛ぶ実感があります。キレが出たので、足も速くなったんですよ」

 絞り込まれながらも堂々たる体躯から繰り出されるスイングは、格段に力強さを増している。

◆ いざライバルとの勝負へ

 まずは一軍に上がるため。村田二軍監督は「キャッチャーで使うには限られますね。ファーストやDHで使って、打力を活かしながらですね。もう8年目ですから、二軍では圧倒的な存在感が欲しいです」と条件をつける。

 一方で視野の広がった打撃には一目置く。「つなぐバッティングもできるようになってきています。得点圏で右方向に打ったり、フォアボールを取ったりすることはすごく上手なバッターです。続けていってくれれば、一軍で打つ方の枠にも取り上げてもらえますよ」

 益子自身、キャッチャーとして「今年は方も肘も調子が良くて、スローイングも安定しています」とこだわりは隠さないが、新指揮官の思いは痛感している。「そうですよね。バッティングですよね。最初は右の代打からの勝負ですね」。

 勝負の分かれ目は、ここ一番での集中力。捕手という重責を担いつつ、一軍のベンチに座り続けるためには、代打として結果を残し、不測の事態にはマスクも被れるという多才さが求められる。

 「そこはOPSと、チームがどうしても1本欲しいときに打てるかが勝負です」。益子にはそれを裏付ける根拠がある。

 それがオーストラリアで身につけた大切な武器。「いまもパーソナルジムでトレーニングしながら、力の向きが前すぎるポイントを修正しました。身体の中で力を伝えられています。だから最近追い込まれてからの対応がずっといいので、低めの変化球振っての三振がなくなってきています。三振してしまうと、何も事が起こりませんしね」

 速く、動くボールを長く見られるようになり、三振が減る。逆方向にも強く打ち返すことができ、フォアボールも取れる。出塁率と長打率が上がれば、必然的にOPSも上がってくる。そこに活路を見出す。

◆ ポジティブ思考もプラスに

 技術と肉体は磨き上げた。しかし最大の収穫は「心」の変化だったかもしれない。今年は結果を出さないと…その思いに囚われることもある。しかしそこもオーストラリアで考えが変わった。

 「マジでめちゃくちゃポジティブなんですよ。ミスしても謝る選手は誰もいないんです。謝ったときに『なんで謝るんだ?切り替えてやっていけばいいじゃないか。謝るってことは全力でやってなかったってことか?』って言われたんです」

 どんなときでも他人を尊重するということは、同時に自分自身をも大切にすることとイコール。異国の文化に触れ、自分の中でも気づきがあった。

「野球人としてだけでなく、一個人としても自信が持てるようになりましたね」

 万全の体調、肉体改造、打撃力アップ、そしてポジティブなメンタリティ。8年目、益子京右の反撃が始まる。

取材・文=萩原孝弘

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この記事を書いたのは

萩原孝弘

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