コラム 2017.01.24. 11:00

“打てる投手”は誰だ!? セ・リーグ投手打率ランキング

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打撃でもチームに貢献した巨人の菅野智之(C)KYODO NEWS IMAGES

菅野は“投手三冠”だった!?


 いよいよ近づいてきたキャンプインに向け、最後の準備に入っている各球団。キャンプメンバーの振り分けを決めるスタッフ会議が話題に挙がる中、巨人の尾花高夫投手コーチが口にした“意外”な発言が取り上げられた。

 それが何かというと「安打が少ない」というもの。これは投手陣に向けての発言で、具体的に「打率.150を目標としてほしい」と投手陣の“打撃改革”を促したのだ。

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 DH制のないセ・リーグの投手は、前の打者が敬遠されて勝負を臨まれるようなケースも少なくない。次のイニングの投球に備えることを優先する場合はともかく、打つべきところで投手がバットで結果を残せれば、チームとしても大きなアドバンテージとなり、個人としても自らを助けることに繋がる。

 ヤクルトの投手として通算112勝をマークした尾花コーチ。自身の通算打率は.111と目標に掲げた数字には届いていないが、投手陣の打力向上を願うのももっともだ。

 ここで、昨季、30打席以上打席に立ったセ・リーグ投手の打率ランキングベスト10を見てみよう。

【セ投手打率ランキング】※30打席以上
1位 菅野智之(巨) 率.222(54-12) 本0 点3 四球1 三振18 犠打5
2位 石田健大(De) 率.182(44-8) 本0 点3 四球0 三振24 犠打6
3位 藤浪晋太郎(神)率.167(48-8) 本0 点1 四球2 三振30 犠打7
4位 野村祐輔(広) 率.163(43-7) 本0 点3 四球2 三振15 犠打9
5位 井納翔一(De) 率.150(40-6) 本0 点0 四球1 三振14 犠打7
6位 今永昇太(De) 率.139(36-5) 本0 点1 四球2 三振13 犠打5
7位 メッセンジャー(神)率.138(65-9) 本0 点3 四球0 三振28 犠打2
8位 バルデス(中) 率.121(33-4) 本1 点3 四球2 三振14 犠打4
9位 吉見一起(中) 率.118(34-4) 本0 点1 四球2 三振18 犠打5
10位 山口 俊(De) 率.116(43-5) 本1 点4 四球3 三振23 犠打4


 こうして見ると、尾花コーチが提言した「打率.150」をクリアしたのはわずか5人。なかなか高いハードルと言える。

 “首位打者”は打率.222を記録した菅野智之(巨人)。昨季は最優秀防御率、最多奪三振の二冠を獲得しながら、打線の援護に恵まれず初めて2ケタ勝利を逃して9勝に終わった菅野。こう見るとバットでもリーグ随一の結果を残しており、巨人ファンならずとも同情したくなる。


“打てる投手”の代名詞・桑田の通算打率は...


 また、2位に入った石田健大(打率.182)をはじめ、DeNAから4人がランクインしているのも特徴的だ。

 チーム防御率(3.76)はリーグワースト2位だったが、DeNA投手陣の打率.130は.111の広島を抑えてリーグトップ。打撃面では“投手王国”だったと言える。

 以下、投手陣のチーム打率は阪神が.109で3位、中日が.107で4位、巨人が.097で5位、そしてヤクルトが.066で最下位となった。ヤクルト投手陣は、チーム防御率(4.73)に加え、打撃でも断トツのリーグワーストと、なかなか厳しい結果となってしまった。


 ちなみに、近代野球における“打てる投手”の代表格として知られた桑田真澄(元巨人)の通算打率は、なんと.216(890打数192安打)。2003年には打率.333(24打数8安打)を記録するなど、3割前後のシーズン打率を残すことも珍しくなく、本塁打も7本記録している。

 1点を争う僅差のゲームの場合、投手陣の打撃次第で勝敗が入れ替わることもあるだろう。それがペナントの行方を決するような重要な一戦だったとしたら……。

 桑田と同等の数字までとは言わないまでも、球界の偉大な先輩に少しでも近づくことができれば、自身の勝利をたぐり寄せることにもなる。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)