最近10年を振り返る...
プロスポーツ界でよく耳にするフレーズのひとつに、「2年目のジンクス」というものがある。1年目に活躍した選手が2年目に成績を落としがちであることを指し、頻繁に用いられる言葉だ。
そこに根拠は存在しないものの、迷信とも言い切れない。1年目に活躍すれば、オフに野球以外のイベントに参加することも増えるだろう。そんな積み重ねにより、翌シーズンに向けた調整に悪影響が出たりすることがないとは言えない。
さらに、目立った活躍をすればするほど、ライバル球団のマークもきつくなる。こういったことを総合的に見て、「2年目のジンクス」と称されるのだ。
こういった要因を見ると、「何もルーキーに限ったことではないのではないか...」という疑問が湧いてくる。たとえば助っ人外国人はどうか。メジャーやマイナーで実績があったとしても、日本球界では“1年生”。ルーキーと変わりない。
今回は直近10年間で来日1年目にタイトルを獲得した助っ人を調査。彼らが2年目にどのような成績を残したのか、調べてみた。
連続タイトルは2人も...
まずは野手編。ここ10年間で来日初年度にタイトルを獲得した選手は、計6名いた。
【野手編】
トニ・ブランコ(中日)
[2009] 144試 率.275 本39 点110 ☆本塁打王、打点王
[2010] 134試 率.264 本32 点86
マット・マートン(阪神)
[2010] 144試 率.349 本17 点91 214安打 ☆最多安打
[2011] 142試 率.311 本13 点60 180安打 ☆最多安打
ウラディミール・バレンティン(ヤクルト)
[2011] 140試 率.228 本31 点76 ☆本塁打王
[2012] 106試 率.272 本31 点81 ☆本塁打王
ミチェル・アブレイユ(日本ハム)
[2013] 138試 率.284 本31 点95 ☆本塁打王
[2014] 6試 率.211 本1 点1
エルネスト・メヒア(西武)
[2014] 106試 率.290 本34 点73 ☆本塁打王
[2015] 135試 率.235 本27 点89
マウロ・ゴメス(阪神)
[2014] 143試 率.283 本26 点109 ☆打点王
[2015] 143試 率.271 本17 点72
この6人のうち、2年連続でタイトルを獲得したのはマートンとバレンティンの2人だけ。マートンは5年目の2014年には首位打者にも輝き、バレンティンは3年目にシーズン最多60本塁打という金字塔を打ち立てた。
ただし、他の4人の中で大きく成績を落としたという例は日本ハムのアブレイユくらいか。アブレイユも2年目は腰の故障により、一軍出場はわずか6試合だけ。そのままシーズン途中で退団しているため、「2年目のジンクス」とは少し違う感もある。
続いて投手はどうだっただろうか。
より安定度が高い投手たち
投手で1年目にタイトルを獲得したのは5人いた。まずは彼らの成績を見てみよう。
【投手編】
セス・グライシンガー(ヤクルト→巨人)
[2007] 30試(209回) 16勝8敗 奪三振159 防2.84 ☆最多勝
[2008] 31試(206回) 17勝9敗 奪三振167 防3.06 ☆最多勝
コルビー・ルイス(広島)
[2008] 26試(178回) 15勝8敗 奪三振183 防2.68 ☆最多奪三振
[2009] 29試(176回1/3) 11勝9敗 奪三振186 防2.96 ☆最多奪三振
呉昇桓(阪神)
[2014] 64試(66回2/3) 2勝4敗39セーブ 奪三振81 防1.76 ☆最多セーブ
[2015] 63試(69回1/3) 2勝3敗41セーブ 奪三振66 防2.73 ☆最多セーブ
クリス・ジョンソン(広島)
[2015] 28試(194回1/3) 14勝7敗 奪三振150 防1.85 ☆最優秀防御率
[2016] 26試(180回1/3) 15勝7敗 奪三振141 防2.13 ☆沢村賞
マイルズ・マイコラス(巨人)
[2015] 21試(145回) 13勝3敗 奪三振107 防1.92 勝率.813 ☆最高勝率
[2016] 14試(91回2/3) 4勝2敗 奪三振84 防御率2.45 勝率.667
投手では、主要タイトルを獲得した5人のうち、3人が2年連続で同じタイトルを獲得していた。
その他にも、ジョンソンはタイトルこそ逃したが、2年目に沢村賞に輝くなど活躍。野手に比べ、投手の方が安定度は高いと言っていいだろう。
大きく成績を落としているマイコラスも、2年目は右肩の故障などで初登板が6月下旬までずれ込んだのが痛かった。復帰後はしっかりとした投球で防御率も2.45を記録。復活を印象づける形でシーズンを終えている。
注目はジャクソンとマーティン?
こうして見ると、野手・投手ともに1年目からタイトルを獲得するような選手(特に投手)は、2年目も同等の成績を残す可能性が高いということが分かった。
例外となっているアブレイユとマイコラスに関しては、やはりケガの影響が大きい。それも含めての「ジンクス」なのかもしれないが、過去10年の助っ人に関しては、『故障さえなければ、2年目のジンクスはない』と結論付けることができそうだ。
なお、昨シーズンは主要タイトルを獲得した新外国人選手はいなかったが、その中でも目立ったのが優勝チームのリリーバー2人である。
広島のジェイ・ジャクソンはホールドポイントでリーグ2位に食い込み、日本ハムのクリス・マーティンはシーズン途中でのストッパー転向ながら21セーブ・19ホールドを記録。お互い試合終盤の大事な役割を担い、チームを優勝に導いている。
連覇に挑むチームの中で、2年目を迎える2人に注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)