コラム 2017.02.13. 11:00

06年里崎、09年亀井…WBCをきっかけにブレイクした侍ジャパン選手

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WBC後に活躍した里崎智也(左)、亀井善行(右)

里崎は大会ベストナインを受賞


 WBCが開催される度に指摘される問題がある。数多くの有名選手の代表辞退、例年ならまだ調整期間となる3月の開催時期…。確かにそれらは改善すべきだが、WBCのデメリットはさかんに議論されても、メリットはあまり語られることがない。これまでに、この大会をきっかけにブレイクした男たちもいたはずだ。今回は過去のWBC参加後に大きく飛躍した侍ジャパンの選手たちを振り返ってみよう。

 里崎智也は29歳で迎えた第1回WBCにおいて、侍ジャパンの正捕手としてベストナインに選出される大活躍。打率4割を超える打撃、さらに味方野手から「おまえのリードは怖い」と言われるほどの強気なリードで投手陣を牽引した。

 大会前年の05年は所属チームで橋本将と併用されていたが、WBC後の06年シーズンからレギュラー定着すると、ロッテの捕手では21年ぶりの規定打席到達。さらに自己最多の17本塁打、56打点を記録し、キャリア初のベストナインとゴールデングラブ賞も獲得してみせた。

 成績に加え、人気や知名度の面でもWBCをきっかけに大きく飛躍した選手の1人だろう。その活躍には日本代表を率いた王監督も感謝していたようで、里崎の著書『非常識のすすめ』(角川書店)によると、第1回WBCから8年後の2014年9月、38歳になった里崎が引退会見を終えて自宅に戻ると、ソフトバンク会長の王から「16年間、お疲れさまでした。第2の人生も頑張ってください」のメッセージとともに、立派な胡蝶蘭が届けられていたという。

里崎智也(ロッテ / 29歳)
【WBC成績】
06年:8試 率.409 本1 点5
【NPB成績】
05年: 94試 率.303 本10 点52 OPS.842
06年:116試 率.264 17本 56点 OPS.814
※所属・年齢は大会当時


亀井は大ブレイク


 09年第2回大会の亀井善行は、まさかの「サプライズ選出」と言っても過言ではないだろう。当時巨人監督の原辰徳は王の後任として侍ジャパン監督に就任すると、前年度わずか96試合出場で打率.268の若者を代表選出してみせる。

 26歳の若武者は巨人No.1の外野守備力を誇り、走塁センスはチーム屈指。さらに意外性の一発もあり、小技もできる。原監督や高代延博内野守備・走塁コーチにとって、もしもの時の「スーパーサブ」としての抜擢だったが、亀井は意外なところで日本代表に貢献した。

 大黒柱のイチローが打撃不振に喘いでいた時、亀井は悩める天才打者を鼓舞しようと、チームメイトたちにソックスを見せる「イチロースタイル」で試合前練習に臨むことを提案。イチローも後輩たちのその気遣いに心から感謝したという。

 本大会ではわずか3試合の出場に終わった亀井だったが、09年シーズンに突如覚醒する。4月25日の中日戦、岩瀬仁紀から代打逆転サヨナラ弾を放つと、6月中旬から5番に定着。当時全盛期のオガラミコンビのあとの5番打者を任せられ、シーズン3本のサヨナラ弾を放つ勝負強さを見せ、初の規定打席に到達。前年から20本増の25本塁打を放ち、ゴールデングラブ賞も獲得した。

 終わってみれば、原監督とともに侍ジャパン世界一と巨人日本一に輝く最高のシーズンを送った亀井は、その後故障に苦しみ伸び悩んだ時期もあったが、34歳の今も巨人の貴重なスーパーサブとしてプレーし続けている。

亀井善行(巨人 / 26歳)
【WBC成績】
09年:3試 率1.000 本0 点0
【NPB成績】
08年: 96試 率.268 本 5 点23 OPS.731
09年:134試 率.290 本25 点71 OPS.864

 もうすぐ侍たちの野球人生を変える、4年に1度のビッグイベントが始まろうとしている。果たして、今大会の日本代表における「第2の里崎」「ネクスト亀井」は誰になるのか? 2017年シーズン、WBCをきっかけに飛躍する選手の出現を楽しみに待ちたい。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)
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