コラム

【白球つれづれ】捕手のしたたかさ

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侍の正妻として活躍した小林誠司(左)

白球つれづれ2017 ~第4回・伊東勤と小林誠司~


 WBCの興奮冷めやらぬ中でプロ野球は31日(金)にいよいよ開幕する。侍戦士たちに激戦の疲れもあり、例年とは違った先発ローテーションを余儀なくされるチームも出てくる。波乱の要素の多い船出と言えるだろう。


OP戦の首位はロッテだけれども…


 オープン戦の成績だけを見るとロッテの強さが目を引いた。13勝2敗3分けのトップ。実に勝率は.867と驚異的な数字だ。

 ところが、毎年恒例の各評論家による順位予想ではロッテの評価は決して高くない。ソフトバンクのような巨大戦力があるわけでなく、日本ハムのように大谷翔平や中田翔といったスーパースターがいるわけでもない。

 加えて今季は昨年までの主砲であるA・デスパイネが、よりによってライバルのソフトバンクに移籍したのでは前評判が高くなるわけがない。2年連続Aクラスの実績があっても「昨年以下」が大方の見立てである。


捕手最強監督論


 だが、悲観的な見方ばかりではない。あるパリーグの球団幹部は興味深い分析をする。「あの戦力でロッテはむしろ毎年よくやっている。その最大の強みは伊東監督のしたたかさとやりくり上手。指揮官というのはちょっと性格が悪いくらいがいいんだよ」

 本人の名誉のためにもここは補足が必要である。人間・伊東勤の性格が悪いと言っているのではない。野球界で名監督と称された男たち。古くは三原脩、水原茂から川上哲治、広岡達朗らまで勝負に徹する指揮官でお人好しはいない。

 そればかりか、時には非情の采配、用兵を決断していくのだから並外れた神経の持ち主でもある。加えて、伊東のしたたかさは捕手出身ということと無縁ではない。

 かつて、元ヤクルト、阪神らで智将とうたわれた野村克也は「捕手最強監督論」を唱える。その最大の根拠は「投手以下野手はホームベースに向いてプレーをするが、キャッチャーだけは野手方向を向いている。だから常に全軍のことを注意深く見守る習性がある」。

 投手や野手の心理面だけでなく、どう仕掛ければ相手は嫌がり、どう仕向ければ術中にはめていけるのか?敵のデータ分析から戦略戦術まで365日、考えていくのが捕手の務め。

 さらに完封勝利してもヒーローは投手で、1球のミスリードで敗戦につながれば監督に叱られるのは捕手なのだから性格もゆがむ?なるほど近年の名捕手と言われた古田敦也も谷繁元信も決して「ネアカ」ではない。


混パの再現なるか?!


 陣容を見れば先発の両輪である石川歩と涌井秀章は計算できるが三番手以下は決して盤石ではない。デスパイネの抜けた打線もM・ダフィーやJ・パラデスらの新助っ人で補えるかは未知数だ。

 一方で、伊東は新たな戦いのためにチーム内の大手術も断行している。昨季のベストナインに輝いた主力の鈴木大地を遊撃から二塁へコンバート。空いたポジションには中村奨吾や平河大河らの若手を起用して活性化させている。

 投手陣の小刻みな継投にチーム内競争で刺激を与えていくのが伊東流のしたたかさ。オープン戦の勢いそのままに開幕戦でソフトバンクを叩けば混パ再現も可能だ。


侍の正捕手にも注目


 開幕を前に現役の中にも注目したい捕手がいる。巨人の小林誠司。昨年のセ・リーグ打撃成績では.204の最下位、打てない捕手のレッテルを貼られかけていたのがWBCでよもやの大変身。大会前は嶋基弘(楽天、負傷で途中辞退)らの補完要員と見られていたが、いざ先発起用されるとバットでも大貢献、大会を終わってみれば打率は.450と侍ジャパンの安打王でラッキーボーイの名がつけられた。

 そんな小林に今、求められているのはやはり捕手としての信頼感だろう。正捕手だった阿部慎之助の内野コンバートによって昨季から正妻の座を任されたが、まだリードで手一杯では相手の脅威とはならない。

 「全体的にまだプレーが軽い」とはWBC期間中の谷繁前中日監督の指摘だがリードに限らず、敵を欺くしたたかさまで発揮していけるか?こちらはオープン戦最下位の巨人。浮上のカギは4年目のイケメン捕手が握っている。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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