エース級の投手たちにも苦手チームはある
3月31日、いよいよ新たなシーズンの幕が開ける。30日午後には開幕カード全6試合の予告先発が発表され、大役を務める12名の投手たちの名が公示された。
多くのプロ野球関係者が異口同音に語るのは、「開幕戦はただの1試合ではない」ということ。当然、記念すべき開幕戦のマウンドに上がるのは、首脳陣がシーズンの命運を託すに値する投手たちだ。
しかし、いかにエース級の投手たちといえど、苦手な打者やチームがある。そこで、12人の開幕投手たちが、開幕カードの対戦チームを相手に昨季はどのような成績を残したのかを振り返ってみたい。
【開幕投手12人vs.開幕カードの昨季対戦成績】
<セ・リーグ>
・巨人:マイルズ・マイコラス vs.中日
3試(24回) 1勝1敗 防御率1.13 WHIP0.88 被打率.217 自責点3
・中日:大野雄大 vs.巨人
5試(35回2/3) 2勝2敗 防御率3.03 WHIP1.15 被打率.255 自責点12
・ヤクルト:石川雅規 vs.DeNA
7試(39回2/3) 4勝2敗 防御率3.86 WHIP1.13 被打率.248 自責点17
・DeNA:石田健大 vs.ヤクルト
3試(18回) 2勝0敗 防御率1.00 WHIP1.00 被打率.239 自責点2
・広島:クリス・ジョンソン vs.阪神
5試(33回) 3勝1敗 防御率1.91 WHIP1.00 被打率.197 自責点7
・阪神:ランディ・メッセンジャー vs.広島
3試(13回) 1勝1敗 防御率12.46 WHIP2.92 被打率.426 自責点18
<パ・リーグ>
・日本ハム:有原航平 vs.西武
1試(4回) 0勝1敗 防御率11.25 WHIP2.25 被打率.350 自責点5
・西武:菊池雄星 vs.日本ハム
3試(17回) 1勝2敗 防御率2.65 WHIP1.41 被打率.241 自責点5
・オリックス:金子千尋 vs.楽天
5試(37回1/3) 2勝2敗 防御率2.89 WHIP0.96 被打率.209 自責点12
・楽天:美馬 学 vs.オリックス
4試(27回2/3) 2勝0敗 防御率2.60 WHIP1.08 被打率.235 自責点8
・ソフトバンク:和田 毅 vs.ロッテ
5試(40回) 3勝1敗 防御率2.48 WHIP0.93 被打率.200 自責点11
・ロッテ:涌井秀章 vs.ソフトバンク
8試(60回) 2勝2敗 防御率3.60 WHIP1.47 被打率.296 自責点24
燕キラーの石田、鯉に滅法弱いメッセ
さすがに開幕投手に選ばれる投手たちだけあって、限られた球団別対戦成績を抜き出しても優秀な数字が目につく。
3年ぶりのリーグVを目指す巨人のマイコラスは、中日戦3試合に登板。勝敗では1勝1敗と五分ながら、自責点はわずか3。防御率も1.13で1投球回当たりに出塁を許した走者数を表すWHIPも0.88と抜群の成績を残している。対する大野の成績も、先発投手として決して悪くはないのだが、マイコラスとの比較ではやや分が悪いか。
近年は毎年のように開幕投手が入れ替わっているDeNAは、3年目の石田を抜擢。昨季は9勝を挙げて大きな飛躍を遂げた石田だが、中でもヤクルト戦を得意としていた。3試合に登板して負けなしの2勝を挙げ、防御率とWHIPはともに1.00。自身のセ団別対戦成績でも、最も優秀な数字を残したのがヤクルト戦なのだ。ラミレス監督の頭にも、この対戦成績があっての抜擢だったのだろう。5年ぶり8度目の開幕マウンドに上がるベテラン・石川に若き左腕が挑む。
一方、散々な結果を残してしまったのが広島に対するメッセンジャー。防御率12.46、被打率.426という厳しい数字が並ぶ。1勝こそ挙げているものの、その試合も味方打線に助けられてのもので、自身は5回で自責点7と完全に攻略されている。対して広島のジョンソンは阪神戦5試合で3勝を挙げ、防御率1.91、被打率は2割を切る.197。ふたりの対戦成績だけで見れば、昨季のリーグ覇者が圧倒的に有利だが、結果はいかに。
データ通りにならないのも野球の醍醐味
相性の悪さでいうと、西武を相手に防御率11.25、被打率.350と厳しい数字を残してしまったのが日本ハムの有原だ。西武戦はわずか1試合に登板したのみであるが、有原は2015年の西武戦でも3試合12回2/3を投げて被打率.404、防御率10.66と打ち込まれており、相性の悪さを露呈してしまっている。対する菊池は1勝2敗と負けが先行しているものの、防御率2.65、WHIP1.41は十分に及第点と言えよう。
抗した成績となっているのがオリックスの金子と楽天の美馬。金子は1試合の救援登板があるが、先発したのはともに4試合。防御率、WHIPなどは互いに近い数字を残している。ただ、美馬は負けなしの2勝。勝敗がつかなかった2試合も6回以上を投げて自責点3以内に抑えるクオリティ・スタートを達成しており、相性の良さを感じさせる。岸孝之のインフルエンザ感染によって大抜擢された男が、オリックスのエースを相手にどんな投球を見せるか。
昨季、最多勝と最高勝率の二冠に輝いたソフトバンクの和田は、ロッテ戦5試合に登板して1試合平均8回を投球。WHIP0.93、被打率.200と、さすがとしか言いようがない安定感を示している。1敗した試合も8回2失点ときっちり試合を作っており、まさに盤石である。対する涌井は対戦成績こそ和田に劣るが、過去7度登板した開幕戦では5勝2敗。2015年、2016年とロッテ移籍後の開幕戦2試合はともに勝利投手となっており、開幕戦そのものと相性がいい。パ・リーグを代表するエース対決に注目だ。
データが重視される現代野球ではあるが、往々にしてデータを覆すような結果となるのも野球の醍醐味。これらのデータを頭に入れて開幕戦を観戦すればまた大きな楽しみが生まれるのではないだろうか。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)