「状況別打撃成績」を見ると…
度重なるケガの影響もあり、近年では限界説がささやかれることもあった阿部慎之助が健在ぶりを見せつけている。
38歳になって迎えた今季はここまで本塁打と打点でリーグトップの数字を残し、打率も中日・大島洋平に次ぐ2位。特に23打点は2位のエルドレッド(広島)、ロペス(DeNA)の15打点を大きく引き離した断トツの数字だ(※23日現在)。
それもそのはず。今季の阿部はとにかくランナーを置いた場面で強さを発揮している。得点圏打率もリーグ2位の.435と高い数字を残しているが、走者一塁の場面でも恐ろしいほど打ちまくっている。以下は、阿部の走者状況別の打撃成績である。
【阿部の走者状況別打撃成績】
なし:率.120(25-3) 本0 点0
一塁:率.667(15-10) 本2 点6
二塁:率.364(11-4) 本2 点6
三塁:データなし
一二塁:率.500(6-3) 本1 点5
一三塁:率.500(6-3) 本0 点3
二三塁:率.000(0-0) 本0 点1
満 塁:率.000(0-0) 本0 点2
ベンチにいても脅威
走者がいない場面では、本塁打もなく打率.120となっているが、走者がいる場面では38打数20安打、打率はなんと.526という好成績を叩き出している。
また、得点状況による成績もかなり偏りがある。チームがリードしている状況では22打数5安打の打率.227、1本塁打、5打点にとどまっているが、同点時には20打数8安打の打率.400、2本塁打、8打点と一転して好成績を残しており、ビハインド時となると21打数10安打の打率.476、2本塁打、10打点とさらに数字が跳ね上がる。
勝ち越さなければならない、あるいは逆転しなければならないという場面でこれほど頼もしい打者もそうはいないだろう。投手の場合、重要な場面での力を込めた投球に対し「ギアを上げる」という表現が使われるが、阿部が打席でやっていることはまさにこれと同じこと。勝負どころでのプレッシャーが力みになるのではなく、それこそ力にできるのは数々の修羅場をくぐってきた経験ゆえだろう。
4月22日、23日の阪神戦では休養のためにスタメンから外れた阿部。ただ、12球団最低の代打打率に終わった昨季のチーム状況を思えば、ベンチに阿部が控えていることに逆に怖さを感じさせられた。グラウンド上だけでなく、ベンチの中にいても阿部の存在感が増している。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)