不名誉な記録を打破せよ
2013年の初優勝以降、3シーズン連続でBクラスに低迷している楽天。ところが、今季は開幕から一度も首位を譲ることなく3・4月を駆け抜け、4年ぶりのリーグ制覇へ向けて快調に走り続けている。
2番から4番まで3人の助っ人が並ぶ重量打線が話題となることが多かったが、チームを引っ張っているのはむしろ日本人打者だ。銀次や岡島豪郎、茂木栄五郎らが打率3割をキープしており、なかなか続けて出場ができていないベテラン・今江年晶の働きも随所で光る。好調な打撃陣と、オリックスに次ぐリーグ2位のチーム防御率を誇る投手陣がかみ合い、首位という結果につながっている。
なかでも一際輝いているのが2年目の茂木だ。ここまで24試合の出場で打率.309、6本塁打をマーク。左打者でありながらむしろ左投手を得意としており、5月3日のオリックス戦でも左腕・松葉貴大の甘いスライダーを右中間スタンドへと豪快に放り込んだ。
開幕から約1カ月にして昨季記録した7本塁打にあと1本と迫っており、“2年目のジンクス”など関係ないと言わんばかりに大いに成長した姿を見せている。
シーズン40本塁打ペースの長距離砲に!?
そんな勢いで本塁打を重ねている茂木には、ひとつの不名誉な記録の打破への期待も寄せられる。野球ファンにはよく知られた話だが、2005年のチーム創設以来、楽天には2ケタ本塁打を記録した生え抜き選手がまだいないのだ。
過去の生え抜き選手による最多本塁打はというと、島内宏明が昨季マークした9本塁打。9月12日のオリックス戦で9本に到達しながら、残りの出場17試合では不発に終わり、ファン待望の“生え抜き2ケタ本塁打”達成を逃している。
ここまでの茂木の打棒を見る限り、よほどのことがなければ2ケタ本塁打は間違いないだろう。その“よほどのこと”を避けるため、5日の西武戦ではスコアボードに茂木の名前が表示されることはなかった。4月25日のロッテ戦で痛めた左かかとの痛みが再発し、長期離脱を避けるための欠場となったのだ。
6日の試合では「1番・遊撃」の定位置に戻り、タイムリーヒットを放った23歳。いかに離脱をせずに長いシーズンを戦っていくことが出来るか。ケガとの付き合いというのも活躍するうえでとても重要な要素になる。
快進撃を支える切り込み隊長から、今後も目が離せない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)