どら増田のオリ熱魂!〜第2回〜
オリックスの駿太が好調を維持している。
糸井嘉男の阪神移籍により、オリックスの福良淳一監督も「駿太は打てれば即(外野の)レギュラー」と昨年の秋季キャンプから公言。ここまで32試合のうち29試合にスタメンで起用されている。
5月11日現在、打率.279は小谷野栄一とT-岡田に続くチーム3位の成績で、パ・リーグ打撃ランキングでも13位にランクイン。2014年は規定未満ながら打率.280、5本塁打と結果を残した駿太だが、この2年間は思うような成績を残せず、もがき苦しんだ。
6年目の覚悟
「もう後がない」
シーズンを終えてそう思った駿太は今年の1月、一昨年の交流戦の際に知人の紹介で知り合ったDeNA・梶谷隆幸と10日間に渡り自主トレを行った。
「本当は一昨年のオフに一緒にやろうかという話があったんですけど、そのときはまだ僕の中で(1人で)やりたいことがあって(実現しなかった)。でも昨年1年間やってみて、1人で練習すると数は打てるけど、技術面で疑問を持ってたんですね。だから今年は誰かにお願いしたいと思ったんです。それを梶谷さんにお話したらOKしてくれたので、一緒にやらせてもらいました」
今年でプロ6年目を迎える駿太は、2年目のオフから「自分の思いをリセットする」意味で、自主トレを基本的に1人で行ってきた。しかし、今年は1月にファンイベントを終えるとその足で東京に向かい、10日間のホテル生活を送った。
肉体改造の成果
東京での初めての自主トレは、朝から大学や社会人のグラウンドを借りてバッティングに励むと、午後はジムでウエイトトレーニングに臨む日々。肉体改造を目指したウエイトトレーニングでは、体重を増やすことに重点を置いた。
「梶谷さんがウエイトに力を入れてたんですよ。せっかく一緒にやらせてもらえるんだから、練習もウエイトトレーニングも梶谷さんと同じやり方にしたかった。体重は78.5kgだったのが、キャンプインの時には84kgにまで増えました。ただ食べるだけ、トレーニングするだけは良くないので、量も(食べる)物も考えながら増やしたんですけど、実感があったので、凄く充実してましたね」
肉体改造の成果は早くも現れている。今年は“強い打球”が多くなり、ここまでの29安打中10本が長打。ほかにも内野安打や進塁打、犠飛などでチームの得点に貢献する機会も増えた。これには福良監督も「駿太はああいうバッティングができれば大丈夫。今年一番成長しているのは駿太」と評価している。
刺激を受け続けた日々
「梶谷さんは凄く人のことを尊重してくれるんですよ。決して押しつけたりはしない。『駿太のやりたいようにやったら?』って。でも僕は僕で、何のために梶谷さんとやっているのかを考えて、今はどんな感じで打ってるんですか?とかけっこう質問攻めしたんですけど、梶谷さんの野球に対する考え方とかを聞くと、自分がやりたかったことはこれだって思えることばかりでしたね」
自主トレでは、駿太のバッティングを見た梶谷が、また梶谷のバッティングを見た駿太が、それぞれ笑顔で話しかける場面が多く見られた。
駿太に体格もバッティングスタイルも似ている梶谷。そのなかで柵越えを連発する姿を間近で見たり、細かいアドバイスをもらえたことは、かなり刺激になったようだ。
「僕は後がないのに、考え方を180度変えたんですよ。逆に後がないから変えられたんだと思います」と駿太は言う。
「これまでは打てなくても守備があるみたいな甘えがどこかにあったのかもしれない。今年は周りより自分と勝負したい。そのためには試合に出続けて、規定打席に乗らなきゃいけない。結果的にそれがレギュラーなり、一流選手への道になると思うので、(糸井の移籍で)今年がチャンスというのではなく、むしろ気を引き締めています」
絶対に曲げたくない10日間
今年はオープン戦から試合に出続けることにこだわった。また、チームの方針でもある『チームバッティング』にも積極的に取り組んでいる。
打席で追い込まれると、「少しでも確率を上げたい」という思いから、昨年のフェニックスリーグや秋季キャンプで取り組んでいたノーステップ打法に切り替えるなど、チームにとって自分が何をすれば良いか、何が必要とされるのかを考えながらプレーすることができている。
5月に入りチームは打撃不振に陥っているが、そんな中で駿太が10日に放った第1号ホームランは、本人も「完璧」とコメントするほどの“会心の一撃”だった。これから巻き返しをめざすチームにとっても、今年の駿太は攻守ともに戦力として欠かせない存在となっている。
「今年は自主トレで掴んだものを続けるだけ。梶谷さんと過ごした10日間で得たものは絶対に曲げたくない。あの10日間を1年間続けていきたい」
「練習は嘘をつかない」を信条にしている駿太にとって、梶谷と過ごした10日間はこれまでの野球人生において、とても大きな経験になったのは間違いない。
バッティングだけではなく、野球に対する考えかたにも影響を与えてくれた梶谷と再会するのは、交流戦が行われる来月の横浜スタジアム。2年前の横浜で梶谷と初対面した頃よりも、遥かに逞しくなった駿太がハマスタのグラウンドに立っているはずだ。
文=どら増田(どらますだ)