「まずは大学に行ったつもりで4年間は頑張ります」
ドラフト会議後の入団会見でよくこんな台詞を聞く。プロから指名された高校球児からしたら、大学や社会人野球に進む同級生には負けたくない。特にまだ学生生活を続ける大学の野球部は、キャンパスライフや女子大生との合コンとか楽しそうだ。ちきしょう、俺はプロの世界で大学に行ったつもりで4年間死にもの狂いでやってやる。そう思うのが人情である。
最近のプロ野球界は大谷翔平(日本ハム)や藤浪晋太郎(阪神)、そして今やカープの4番を張る鈴木誠也(広島)らを輩出した94年組を始めとして、若い高卒入団選手の活躍が目立つ。その1年後輩、13年ドラフト組では松井裕樹(楽天)と田口麗斗(巨人)のサウスポーコンビがそれぞれ結果を残している。
95年生まれで高校時代「東の松井、西の田口」と称された今季プロ4年目の彼らは、今の大学4年生と同い年。例えば田口は13年3位指名だが、今秋のドラフトにこのレベルの大卒左腕がいたら間違いなく競合必至のドラフト1位候補だろう。
なかなか大成が難しいと言われる高卒左腕だが、やはり上手く成長してくれるとチームにとっては大きい。今回はそんな魅力溢れる90年代以降の「高卒左腕プロ4年目」の成績を振り返ってみよう。
今中慎二(中日88年1位)
92年 11試 8勝2敗 防御率1.77
☆骨折で離脱も翌93年17勝で最多勝獲得
石井一久(ヤクルト91年1位)
95年 26試 13勝4敗1S 防御率2.76
☆自身初の二桁、153回で159奪三振を記録
井川慶(阪神97年2位)
01年 29試 9勝13敗 防御率2.67
☆192回を投げ、翌02年から5年連続二桁勝利
成瀬善久(ロッテ03年6位)
07年 24試 16勝1敗 防御率1.81
☆最優秀防御率、最高勝率獲得、月間MVP2度
村中恭兵(ヤクルト05年1位)
09年 9試 1勝6敗 防御率7.12
☆登板はすべて先発。翌10年に11勝を記録
吉川光夫(日本ハム06年1位)
10年 9試 0勝4敗 防御率6.92
☆2年後の12年に14勝。パ・リーグMVPに輝く
辛島航(楽天08年6位)
12年 16試 8勝5敗 防御率2.53
☆21日現在、菊池(西武)と並ぶパ左腕最多の4勝
菊池雄星(西武09年1位)
13年 17試 9勝4敗 防御率1.92
☆プロ初完封を含む年間3度の完封勝利
岡田俊哉(中日09年1位)
13年 66試合 7勝5敗2S15H 防御率2.79
☆プロ4年目で1軍デビュー、17年WBC代表
松井裕樹(楽天13年1位)
17年 22試 2勝1敗16S 防御率0.39
☆21日現在、パ最多セーブ
田口麗斗(巨人13年3位)
17年 7試 4勝1敗 防御率1.60
☆21日現在、セ防御率トップ
一昔前の高卒サウスポーは石井一久(元ヤクルト)のように、左の便利屋として中継ぎで経験を積み、4年目から先発ローテに定着していくパターンが目立った。ちなみに80年代の工藤公康もプロ4年目に中継ぎから先発転向すると自身初の最優秀防御率を獲得している。
それが21世紀に入ると、成瀬善久(ヤクルト)や菊池雄星(西武)のようにデビュー時から先発で固定して起用するケースが多いように思える。
現代の田口麗斗(巨人)も2年目春に先発デビュー、3年目の昨季巨人ではドラフト制後初の高卒左腕二桁勝利を記録。先輩の超高校級左腕・辻内崇伸は1軍登板なしのままプロの世界を去っていったが、田口は今季も防御率1.60と左のエースの座を内海哲也や杉内俊哉から完全に継承したと言っても過言ではないだろう。
特殊なのが、松井裕樹(楽天)のキャリアだ。1年目は17試合に先発して将来のエースを期待されながら、2年目にクローザー転向。松井は15年、16年の2年間で計121試合63セーブと投げまくり、今季もすでにチーム37試合中22試合に登板している。
登板過多だけが心配だが、弱冠21歳にしてすでにリーグを代表するクローザーへと成長した。侍ジャパンの権藤投手コーチの言葉を借りると「現代野球において、優秀な抑え投手の存在は4番打者と同等の価値」である。もしかしたら、松井や田口の活躍で今後のドラフト戦線の「高卒左腕」の見方が変わるかもしれない。
大学に行ったつもりで4年間は頑張る。それは同時にプロ4年目までに1軍で何らかの痕跡を残さないと先は厳しいことを意味する。数年後、小笠原慎之介(中日15年1位)や寺島成輝(ヤクルト16年1位)が「プロ4年目」を迎える頃、どんなサウスポーになっているのか今から楽しみだ。
ドラフト会議後の入団会見でよくこんな台詞を聞く。プロから指名された高校球児からしたら、大学や社会人野球に進む同級生には負けたくない。特にまだ学生生活を続ける大学の野球部は、キャンパスライフや女子大生との合コンとか楽しそうだ。ちきしょう、俺はプロの世界で大学に行ったつもりで4年間死にもの狂いでやってやる。そう思うのが人情である。
最近のプロ野球界は大谷翔平(日本ハム)や藤浪晋太郎(阪神)、そして今やカープの4番を張る鈴木誠也(広島)らを輩出した94年組を始めとして、若い高卒入団選手の活躍が目立つ。その1年後輩、13年ドラフト組では松井裕樹(楽天)と田口麗斗(巨人)のサウスポーコンビがそれぞれ結果を残している。
高卒左腕の4年目
なかなか大成が難しいと言われる高卒左腕だが、やはり上手く成長してくれるとチームにとっては大きい。今回はそんな魅力溢れる90年代以降の「高卒左腕プロ4年目」の成績を振り返ってみよう。
今中慎二(中日88年1位)
92年 11試 8勝2敗 防御率1.77
☆骨折で離脱も翌93年17勝で最多勝獲得
石井一久(ヤクルト91年1位)
95年 26試 13勝4敗1S 防御率2.76
☆自身初の二桁、153回で159奪三振を記録
井川慶(阪神97年2位)
01年 29試 9勝13敗 防御率2.67
☆192回を投げ、翌02年から5年連続二桁勝利
成瀬善久(ロッテ03年6位)
07年 24試 16勝1敗 防御率1.81
☆最優秀防御率、最高勝率獲得、月間MVP2度
村中恭兵(ヤクルト05年1位)
09年 9試 1勝6敗 防御率7.12
☆登板はすべて先発。翌10年に11勝を記録
吉川光夫(日本ハム06年1位)
10年 9試 0勝4敗 防御率6.92
☆2年後の12年に14勝。パ・リーグMVPに輝く
辛島航(楽天08年6位)
12年 16試 8勝5敗 防御率2.53
☆21日現在、菊池(西武)と並ぶパ左腕最多の4勝
菊池雄星(西武09年1位)
13年 17試 9勝4敗 防御率1.92
☆プロ初完封を含む年間3度の完封勝利
岡田俊哉(中日09年1位)
13年 66試合 7勝5敗2S15H 防御率2.79
☆プロ4年目で1軍デビュー、17年WBC代表
松井裕樹(楽天13年1位)
17年 22試 2勝1敗16S 防御率0.39
☆21日現在、パ最多セーブ
田口麗斗(巨人13年3位)
17年 7試 4勝1敗 防御率1.60
☆21日現在、セ防御率トップ
変わりゆく台頭の流れ
一昔前の高卒サウスポーは石井一久(元ヤクルト)のように、左の便利屋として中継ぎで経験を積み、4年目から先発ローテに定着していくパターンが目立った。ちなみに80年代の工藤公康もプロ4年目に中継ぎから先発転向すると自身初の最優秀防御率を獲得している。
それが21世紀に入ると、成瀬善久(ヤクルト)や菊池雄星(西武)のようにデビュー時から先発で固定して起用するケースが多いように思える。
現代の田口麗斗(巨人)も2年目春に先発デビュー、3年目の昨季巨人ではドラフト制後初の高卒左腕二桁勝利を記録。先輩の超高校級左腕・辻内崇伸は1軍登板なしのままプロの世界を去っていったが、田口は今季も防御率1.60と左のエースの座を内海哲也や杉内俊哉から完全に継承したと言っても過言ではないだろう。
球界を代表するクローザーも…
特殊なのが、松井裕樹(楽天)のキャリアだ。1年目は17試合に先発して将来のエースを期待されながら、2年目にクローザー転向。松井は15年、16年の2年間で計121試合63セーブと投げまくり、今季もすでにチーム37試合中22試合に登板している。
登板過多だけが心配だが、弱冠21歳にしてすでにリーグを代表するクローザーへと成長した。侍ジャパンの権藤投手コーチの言葉を借りると「現代野球において、優秀な抑え投手の存在は4番打者と同等の価値」である。もしかしたら、松井や田口の活躍で今後のドラフト戦線の「高卒左腕」の見方が変わるかもしれない。
大学に行ったつもりで4年間は頑張る。それは同時にプロ4年目までに1軍で何らかの痕跡を残さないと先は厳しいことを意味する。数年後、小笠原慎之介(中日15年1位)や寺島成輝(ヤクルト16年1位)が「プロ4年目」を迎える頃、どんなサウスポーになっているのか今から楽しみだ。