コラム 2017.05.29. 11:45

北の大地で見せた進化 大田泰示の確かな成長

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日本ハム・大田泰示(C)KYODO NEWS IMAGES

スケールの大きさを感じさせる“大物食い”


 昨季は最大11.5ゲーム離されたところからの大まくりでリーグを制し、そのまま日本一まで駆け上がった日本ハム。連覇に向けた戦いに注目が集まった新シーズンだったが、開幕前から故障者が続出。3・4月の戦いを最下位で終えるなど、スタートダッシュに失敗した。

 それでも5月はこれまで13勝8敗と巻き返し、チームは4位まで浮上。3位・西武には7ゲーム差と大きく水をあけられており、依然として厳しい状況が続いているものの、少しずつ光明が見えてきている。

 そんななか、特に明るい話題を振りまいているのが大田泰示だ。トレードで加入した未完の大砲は、若手主体で構成する日本ハムの“のびのび野球”が性に合っているのか、どこか悲壮感を感じさせた巨人時代よりも明らかに躍動している。

 5月26日のソフトバンク戦では、3回二死三塁の場面で決勝の6号2ランをマーク。甘い初球のストレートを完璧に打ち抜く豪快な一発だった。

 しかも、相手投手はバンデンハークだ。これまでも則本昂大(楽天)や涌井秀章(ロッテ)ら、リーグを代表する投手から本塁打を放つ“大物食い”ぶりを見せており、『エースキラー』と呼ぶには時期尚早かもしれないが、スケールの大きさを感じさせる。


決勝弾の“前の打席”に見た成長の跡


 しかし、そんな大田に確かな成長を感じたのは、本塁打の前の第1打席だ。

 2回一死一塁の場面。当然、相手バッテリーとしてはゲッツーが欲しいところ。ここで大田は立て続けに直球で内角を攻められた後、外角低めのボール気味のカーブに食らいついてしぶとくセンター前へと運んだ。

 結局、この一打が得点につながることはなかったものの、チャンスを拡大する見事な打撃だった。

 以前の大田といえば、外角のスライダーやフォークといった変化球にはとにかく弱い打者だった。2012年から2016年までの過去5シーズンにおける球種別打撃成績では、直球には3割近い打率を残している一方で、スライダーに対してはおよそ.250、フォークに至っては打率1割にも満たない。カーブもなんとか打率2割に乗せている状況だ。

 ところが、今季はその数字が激変。相変わらずフォークは苦手にしているが、カーブに対してはなんと6割近い打率を残している。サンプルはまだ少ないものの、変化球への対応力が上がっているのは間違いないと見ていい。


“未完の大砲”、いよいよ開花?


 交流戦前のリーグ戦全日程を終えた現段階で、大田の打率は.237。ぜいたくを言うなら2割台後半が欲しいところだが、率を求め過ぎると自分らしさを失いかねない。

 ただ、日本ハムへの移籍をキッカケに、のびのびとしたプレーで長打も出ているなか、変化球への対応も出来つつあるとするならば、出場し続けることで自然と打率も上がってくるのかもしれない。自然と期待も膨らむ。

 ファンを引きつけてやまない大器が、遅まきながら大輪の花を咲かせる気配を漂わせている。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)

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