藤平尚真がデビュー
開幕から早3カ月が経とうとしているプロ野球。3週間に及ぶ交流戦も終わり、リーグ戦が再開したところであるが、その交流戦の最終盤で一人の『金の卵』がプロデビュー戦に挑んだ。
6月16日に甲子園で行われた阪神-楽天の試合。楽天が先発に立てたのは、2016年のドラフト1位・藤平尚真だった。高卒新人としては一番乗りのデビュー。それも高校時代に自らの名を轟かせた聖地・甲子園に帰ってくるということもあって、大きな注目を集めた。
結果としては敗戦投手となったものの、内容的には5回2失点と力投。今後に期待を抱かせる姿を見せてくれた。
高卒選手はポジションに関係なくじっくり育てる、という傾向が強い近年であるが、かつては高卒1年目からバリバリで一線級と渡り合う選手というのも少なくなかった。
例えば藤平の高校の先輩にあたる松坂大輔は、プロ1年目からローテーションの一角として大活躍。最多勝にベストナイン、ゴールデングラブ賞に新人王も獲得する大活躍を見せている。
同じく横浜高出身の涌井秀章も、1年目は1勝6敗という成績ながら一軍で着実に経験を積むと、2年目には12勝(8敗)を挙げるなどブレイク。そこからエースへと登りつめた。
主戦級のはたらきを見せた藤浪&大谷
では、直近5年の「高卒」「ドラフト1位」で入団した投手たちの1年目を振り返ってみよう。
1年目から即戦力として活躍を見せた投手といえば、藤浪晋太郎(阪神)が真っ先に挙がる。
藤浪は開幕3戦目でプロ初登板・初先発を果たすと、6回2失点と好投。援護なく敗戦投手となったが。甲子園春夏連覇右腕としての片りんを存分に見せつけた。
結局1年目は24試合に登板。137回2/3と規定投球回には惜しくも届かなかったが、いきなり2ケタ・10勝をマークしてメッセンジャー(12勝)、能見篤史(11勝)に次ぐチーム3位の勝ち星を記録した。
その藤浪と同じ年に大きな期待を集めたのが、“二刀流”の大谷翔平だ。ドラフト時はメジャーへの夢との狭間で揺れ動いたなか、日本ハムが口説き落としてなんとか入団にこぎつけた逸材は、西武との開幕戦に「8番・右翼」で先発出場。岸孝之を相手に2打席目で初安打となる二塁打を放つと、3打席目では適時打を放つなどマルチ安打のデビュー。初戦から鮮烈な印象を残した。
最終的には野手として77試合に出場して打率.238、3本塁打という成績を残すと、投手としても13試合に登板して3勝負けなしで1年目を終了。懐疑的な見方が多かった“二刀流”を世間に認めさせた。
2人のその後はご存知の通り。今季に関してはやや苦しい戦いを強いられている両者であるが、今や球界を代表する選手として君臨している。
藤平に追いつけ、追い越せ?
ほかにも、シーズン序盤から一軍デビューを果たしたのが2013年のドラ1・松井裕樹(楽天)、そして2015年のドラ1・小笠原慎之介(中日)。ともに甲子園を沸かせた高校球界を代表する左腕投手として鳴り物入りでプロ入りした2人だ。
両者ともに先発も中継ぎも経験するなど、高卒1年目から十分な経験を積んだ。すると松井は2年目から抑えに転向し、今や侍ジャパンへ選出されるほどに成長。小笠原はオフに受けた手術の影響で出遅れたものの、復帰後は先発としてチームを支えている。
果たして、梨田昌孝監督はこれから藤平をどのように育てていくのか。好調なチーム状態との兼ね合いのなか、その起用法に注目が集まる。
また、同期には寺島成輝(履正社→ヤクルト)、今井達也(作新学院→西武)、堀瑞輝(広島新庄→日本ハム)とドラ1入団の投手が3人もおり、彼らの一軍デビューも待ち遠しいところ。デビューは藤平が一番だったが、真っ先に初勝利を手にするのは誰か。金の卵たちのこれからが楽しみだ。
【直近5年・高卒ドラフト1位投手】
<2012年ドラフト組>
・大谷翔平(日本ハム)
[投手] 13試 3勝0敗 防4.23
[野手] 77試 率.238 本3 点20
・藤浪晋太郎(阪神)
[成績] 24試 10勝6敗 防2.75
・森雄大(楽天)
※一軍登板なし
<2013年ドラフト組>
・松井裕樹(楽天)
[成績] 27試 4勝8敗3ホールド 防3.80
・鈴木翔太(中日)
[成績] 5試 0勝0敗 防4.50
<2014年ドラフト組>
・高橋光成(西武)
[成績] 8試 5勝2敗 防3.07
・安楽智大(楽天)
[成績] 1試 1勝0敗 防0.00
・松本裕樹(ソフトバンク)
※一軍登板なし
<2015年ドラフト組>
・小笠原慎之介(中日)
[成績] 15試 2勝6敗 防3.36
・高橋純平(ソフトバンク)
※一軍登板なし
<2016年ドラフト組>
・藤平尚真(楽天)
[成績] 1試 0勝1敗 防3.60
・堀瑞輝(日本ハム)
※一軍登板なし
・今井達也(西武)
※一軍登板なし
・寺島成輝(ヤクルト)
※一軍登板なし