“外れ外れ1位”をバネに
DeNAのドラ1ルーキー・浜口遥大が粘りのピッチングで勝利をもぎ取った。
7月5日の阪神戦。その滑り出しは苦しいものだった。序盤の2回、自身の暴投や四球も絡んで早々に1点を失ってしまう。以降も毎回走者を背負う展開となったが、味方に逆転してもらった5回以降は無安打で得点を許さず、結局7回途中まで1失点の力投。新人王有資格者のなかで単独トップとなる6勝目を挙げた。
2016年秋のドラフト会議。DeNAは柳裕也(明治大→中日)、佐々木千隼(桜美林大→ロッテ)の交渉権を抽選で逃した末に、この浜口を指名した。
記録上は「ドラ1ルーキー」となるが、いわゆる“外れ外れ1位”という形だっただけに、同世代のルーキーたちに対するライバル心もあるだろう。ここまで柳が1勝2敗、佐々木が2勝7敗と苦しむなか、浜口は意地を見せている。
浜口の負けん気の強さを語る上で欠かせないエピソードといえば、自身3連敗を喫することとなった5月16日・広島戦での一幕。4回まで無安打投球を披露しながら、5回に突如乱れて連続四球から5失点でKO。ベンチに戻った浜口の目には、自身に対するふがいなさ、または悔しさからか涙が浮かんでいた。
“涙の降板”から負けなしの4連勝
浜口の武器は最速151キロの直球とブレーキが効いた120キロ前後のチェンジアップ。緩急を活かしたコンビネーションにより、投球回(74回)を大きく上回る三振(84個)を奪っている。
真上から力強く腕を振り下ろす豪快なスタイルは若々しく小気味よい。だが、当然ながら若さゆえの課題もある。もともと荒れ球気味であり、それが武器になることもあるものの、制球の乱れにより自らを苦しめることも少なくない。
先述の広島戦でもそうだが、5日の阪神戦でも失点した場面を含めてピンチにはことごとく四球が絡んでいる。5回には無死から連続四球で一・二塁としてしまった。その時は阪神のドラ1ルーキー・大山悠輔を併殺打に斬り、続く高山俊を遊飛に打ち取ってなんとかピンチを脱したが、下手をすればひとり相撲で失点してしまっていた可能性もある。
だが、まだプロ1年目。課題を抱えながらもローテーションの一角として立派にチームに貢献している浜口に対して、期待は高まる一方だ。
7月14日と15日に開催される「マイナビオールスターゲーム2017」にも、監督選抜での出場が決定。セ・リーグの新人としては唯一の選出となった。
あの“涙の降板”から6戦負けなしの4連勝。快進撃を続ける“外れ外れ1位”が、新人王に向かってひた走る。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)