3本柱以外では計13勝34敗…
3人合わせて、計22勝10敗。巨人の先発3本柱の今季成績である。
菅野智之は8勝でリーグ勝利数トップタイ。田口麗斗は防御率リーグトップの2.08。マイコラスもクオリティ・スタート(=QS/6回以上を投げ自責点3以下)の回数11はリーグ2位という安定度だ。
この3人で貯金12。しかし、チーム成績はというと、35勝44敗で現在リーグ5位だ。つまり、それ以外の投手では、計13勝34敗の借金21ということになる。
3人への依存度の高さが浮き彫りに…
今季ここまで79試合を戦った巨人。そのなかで『先発した投手』は延べ11名だ。
【巨人・先発陣の成績】
マイコラス 15試 7勝4敗 防2.73
菅野智之 14試 8勝4敗 防2.34
田口麗斗 13試 7勝2敗 防2.08
大竹 寛 10試 4勝4敗 防5.03
内海哲也 8試 2勝5敗 防5.53
宮国椋丞 6試 0勝6敗 防5.74
吉川光夫 5試 0勝2敗 防3.86
山口 俊 4試 1勝1敗 防6.43
池田 駿 2試 0勝1敗 防8.22
高木勇人 1試 0勝0敗 防0.00
畠 世周 1試 0勝0敗 防9.00
※すべて先発時の成績
本来ならば2ケタ勝利を計算したい内海や山口俊、大竹の3名がそれぞれ防御率5点台以上。復活が期待された宮国や吉川光は1勝もできないまま二軍落ちしてしまった。新人の畠や池田も未勝利だ。
このように3本柱以外の先発はほぼ壊滅的と言っても過言ではない状況で、深刻な先発不足が大型連勝できない要因にもなっている。ちなみに菅野、田口、マイコラスが投げた42試合で先発投手に勝敗がつかなかったのは10試合。その戦績は2勝8敗だ。ブルペン陣も安定しているとは言い難く、3本柱への依存度の高さがよく分かる。
裏ローテを制すものがペナントを制す?
いつの時代も、優勝に絡むチームの条件として“ローテ4番手以降”の頼れるタフなスターターの存在が欠かせない。
西武黄金時代を支えた渡辺久信(現シニアディレクター)も、自身の現役時代を「俺の場合、勝ったり負けたりがけっこう多かったけど、とにかく身体が強いぶん、投げられるんですよ。チームにとって使い勝手のいい投手だった」と振り返り、「1年間しっかりローテーションを崩さずに投げてくれるピッチャーは必要。俺が監督をやっている時も、そういうピッチャーにすごく助けられた部分もある。10勝10敗でも、他のピッチャーの影響を考えたら必要な投手なんです」(『読む野球』No.8/主婦の友社より)とエースクラスのように大きく勝ち越すことができなくとも、長いペナントレースのなかでしっかりローテを守れる先発投手の重要性を説いている。
例えば、巨人の場合でも5年前の2012年、五冠を達成したシーズンでは、内海が15勝を挙げて最多勝のタイトルを獲得。さらに杉内俊哉とホールトンがそれぞれ12勝を挙げ、この3本柱で計39勝18敗の貯金21を稼ぎ出した。
しかし、注目すべきは彼らだけでなく、当時ローテ4番手に沢村拓一がいたことだ。27試合で10勝10敗、防御率は2.86。貯金は0だが、チーム2位の計169回2/3を投げた筋肉マン。裏ローテを制するチームが、ペナントを制す…。ある意味、ローテ4番手に沢村クラスの投手がいるというのは、原巨人の強さの象徴でもあったように思う。
求む!“第4の男”
その沢村も2015年にクローザーへ転向。今季は右肩の違和感で未だ一軍登板なし。今こそ2012年の沢村のようにタフな投手が求められるが、現状のメンバーでは高木勇人に注目したい。
今季初先発となった4月19日のヤクルト戦(鹿児島)では、送りバントを試みた際に利き腕である右手に投球が当たり負傷降板。一軍復帰まで2カ月近くを要したが、6月下旬に昇格してからは6試合に救援登板。イニング数こそ少ないものの、防御率0.63という数字を残している。
ルーキーイヤーの2015年には26試合に先発し、9勝10敗で防御率は3.19。その年は163回2/3を投げ、菅野とマイコラス、ポレダのあとの“ローテ4番手”を年間を通して守ってみせた。
もちろん、右肩痛から復帰したばかりの山口俊も、DeNA在籍時の昨季はリーグ最多タイの5完投に3完封、7月以降は6勝1敗と夏の暑さにも負けないタフさを持っている。推定年俸2億3000万円、このまま終わるわけにはいかない。
いったい誰が、3本柱の負担をワリカンするのか…。由伸巨人、真夏の逆襲の鍵を握るのは『ローテ第4の男』の出現だろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)