どら増田のオリ熱魂!〜第9回・山崎福也〜
オリックスの3年目左腕、山崎福也が10日の日本ハム戦(京セラD)でプロ初完封勝利を飾った。
山崎福は前回登板の5月26日のロッテ戦(ZOZOマリン)で、2回2/3、4失点で降板。福良淳一監督ら首脳陣の判断で、試合中にもかかわらず帰阪を命じられた。山崎福は球場からホテルに向かい着替えを済ませると新幹線で大阪へ。翌朝、ファームの練習に合流した。
「あのときは何で球がいかないのか、わからなかった」
イニング間のキャッチボールでも制球が定まらなかったあの日のことを、山崎福はこのように振り返った。1人での帰阪だったため、切符もみどりの窓口で自ら交換し、新幹線に乗り込んだ。頭の中には「また一軍で投げられるのだろうか?」という不安や悔しさで、帰阪してからもしばらくは前向きな気持ちになれなかったという。
汚名返上へ
「日々練習してファームで結果を残していく中で、自信というか前向きな気持ちになりました」
降格後はファームでも大量失点が続き、精彩を欠いたように見えたが、精神的にも落ち着きを取り戻した山崎福は、先月29日に行われたウエスタン・リーグの阪神戦(鳴尾浜)に先発すると、8回を129球、被安打6、奪三振7、失点0と好投し、一軍復帰のチャンスを射止めた。
久々の一軍マウンドとなったが、初回に日本ハム先頭の西川に中前打を許すと、続く松本に四球。いきなり無死1、2塁のピンチを迎える。
このとき山崎福の心境は「ヤベェな」。キャッチャーの若月健矢は「焦った顔をしていた」と感じ、ベンチの福良淳一監督も試合後、「どうなるかと思った」と振り返った。しかし、若月の「腕を振れ!」という檄も功を奏し、レアード、大谷といった強力な後続を打ち取ることに成功した。
3回からは昨年しっくり来ていたセットポジションに変えたことで、得意のカーブでカウントが取れるようになり、鋭い角度で落ちるチェンジアップに日ハム打線のバットは空を切った。
「今回のチャンスはプレッシャーというより、見返してやろうと思っていた」
そんな思いを胸にマウンドに上がり続けた山崎福は、気がつけば一軍ではキャリアハイとなる8回を投げて128球、無失点に抑えていた。
バッテリーが手にした自信
福良監督は7回と9回の2度、「球がヘロヘロだった」山崎福に「まだ行けるか?もう無理やろ?」と声をかけたが、山崎福の答えは迷わず「行きます!」だった。
8回のピンチは大城滉二の守備に救われ、最終回は危うい球が多い中、気迫で三者凡退に抑えプロ初完封勝利の勲章を手に入れた。キャッチャーとして檄を飛ばし続けていた若月は今にも泣きそうな表情で、山崎福と喜びを分かち合った。
鈴木郁洋バッテリーコーチは「若月は福也より歳下だけど、『しっかり放れ!』とか、試合中にかなりキツイことも言える関係。この試合を完封できたのは、福也にとっても若月にとっても自信になったと思う」と山崎福と若月の関係性について語ってくれた。
山崎福も「(若月は)僕のこと歳上だと思ってないんですよね。(笑)友達みたいな関係。でもあいつは何でも言ってくれるんで、ホントにいいっすよ」と話せば、若月も「(山崎福と完封ができて)感動しました」と答えるなど、2人の信頼関係の深さを強く感じる。
支えとなった声援
そして何より、初完封に向けて大きく背中を押したのは、最終回のマウンドに向かう山崎福に送られたファンの大歓声と拍手だった。
「はじめてのことなんで、ビックリしましたが、あれは本当に力になりましたね。感謝してます。ファンの皆さんの声援は力になるので、これからも球場に足を運んでほしいです」
最終回に向かう場面を思い出したのか、満面の福也スマイルを浮かべながら、ファンへの素直なメッセージを送ってくれた。本人も「問題はこれからなんで、今後もしっかりと試合を作っていきます」と話す。
今回の完封劇は“先発左腕”山崎福也の始まりに過ぎない。後半戦はシーズンが終わるまで、松葉貴大とともにしっかりと先発ローテーションを守り、チームの巻き返しに貢献してもらいたい。
取材・文=どら増田(どらますだ)