大学時代の登板は2試合のみ…
いよいよ後半戦の幕開けを迎えるプロ野球。セ・リーグでは広島が連覇に向けてばく進中。2位・阪神に8ゲーム差をつけて独走状態に入りつつある。
強力打線に目が行きがちなチームであるが、今季は黒田博樹の引退に加えて開幕直後にエースのクリス・ジョンソンが戦線離脱。ストッパーの中崎翔太も離脱となるなど、投手陣は危機的状況を迎えていた。
そんなチームを救ったのが若き力の台頭。特に大卒3年目の薮田和樹は5月30日から先発に転校すると、5戦連続で勝利を記録。リーグ2位タイの8勝をマークし、現在チャンピオンチームの勝ち頭となっている。
薮田と言えば大学時代に最速151キロ右腕という看板はあったものの、ヒジや肩の故障に悩まされてリーグ戦の登板は3年春の2試合のみ(0勝0敗)。全国的には無名と言える存在で、広島が2位で指名した時には驚きの声も挙がった。
ルーキーイヤーから6試合に先発して1勝をマークすると、昨季は先発・中継ぎで16試合に登板。3勝1敗、防御率2.61と好投を見せ、便利屋としてチームを支えた。
今年も当初は中継ぎからのスタートも、上述の通り先発に転向すると連勝街道まっしぐら。前田健太の穴を野村祐輔が埋めた昨季の再現のように、黒田の穴を埋める働きを見せている。
無名左腕から中継ぎの一角へ
ほかにも、ドラフト当初は“隠し玉”的存在でありながら、チームの主力へと成長した選手が何人かいる。
広島を追う2位・阪神の強みといえば、安定した中継ぎ陣。そこに今季から加わったのが、大卒4年目左腕の岩崎優である。
昨季までは先発が主で、3年間通算でリリーフ登板はわずか3試合だった26歳。ところが今季はリリーフとして33試合に登板し、1勝0敗8ホールド、防御率1.60と好投を続けている。
勝利の方程式として注目を浴びるのは桑原謙太朗にマルコス・マテオ、ラファエル・ドリスといったところであるが、勝ち負けの展開に関わらず働く岩崎の存在は貴重。同じ左腕の高橋聡文とともに、首脳陣からの信頼も厚い。
そんな岩崎は2013年のドラフト6位で指名を受けた投手。どの球団も欲しい左腕とはいえ、常時140キロに満たない球速が不安視されて他球団はほぼノーマークに近かったという。それがドラフト当日に阪神・中尾孝義スカウトが獲得を進言したことで、指名に至ったという逸話も残っている。
“隠し玉”からチームの主力となり、立派な戦力となった2人。セ・リーグ優勝争いを盛り上げる薮田と岩崎のこれからに注目だ。