フレッシュ球宴で圧巻の全球直球勝負
7月13日に行われたフレッシュオールスター・ゲーム。ウエスタン選抜の先発マウンドに上がったのは、阪神のドラフト2位ルーキー・小野泰己。自らの希望で全球直球勝負に挑み、胸のすくような快投を演じた。
先頭の吉川尚輝(巨人)はこの日最速の150キロで浅い左飛。続く鈴木翔平(西武)は完全に詰まったボテボテの遊ゴロに仕留めると、最後は田中和基(楽天)を再び150キロで空振り三振に斬って取った。
わずか10球で打者3人を片付ける完璧な投球。一軍での経験を見せつけるかの如く、格の違いを感じさせる圧巻の内容であった。
心の強さを感じさせるマウンドさばき
福岡県出身の23歳。折尾愛真高から、近年多くのプロ野球選手を輩出している富士大を経てドラフト2位で阪神に入団した。ドラフト指名後に目標の選手としてチームの先輩・藤川球児を挙げているように、ゆったりとしたオーバースローから投じるスピンの効いた直球が最大の武器だ。
その直球は春季キャンプから首脳陣に高く評価され、5月21日のヤクルト戦で一軍初先発を果たす。以降、これまで7試合に先発。成績は39回を投げて0勝5敗、28奪三振、防御率4.62。この数字だけを見るといまひとつという印象も受けてしまうが、それは初先発からの2試合7回1/3で計10失点を喫してしまったことによるもの。
その後の5試合を見ると、6回以上を投げて自責点3以内に抑えるクオリティ・スタートを4試合で達成している。打線の援護に恵まれないなど不運が続いているものの、内容としてはいつプロ初勝利を挙げてもおかしくない投球を続けているのだ。
また、小野には直球のほかに心の強さという武器もある。好投しながらもこれだけ黒星が続くと、ベテランであっても調子を落としてしまうケースも少なくない。
ところが、マウンドでの小野は実に堂々としたもの。初めての舞台であるフレッシュオールスターでも、時折笑顔を浮かべながら伸び伸びとボールを投じていた。ある種“お祭り”であるフレッシュオールスターだったからなのかもしれないが、そのマウンドさばきは精神的な余裕を強く感じさせるものであった。
今後も変に気負うことなくいまの投球を続けていれば、必ず結果はついてくる。今季は投手陣の奮闘が目立つ阪神であるが、先発陣はというと藤浪晋太郎や青柳晃洋が期待されたような結果を出せず、ファームで調整中。後半戦、虎のキーマンとなるのはこの強心臓ルーキーかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)