“投手最高の栄誉”の代償…?
現在ア・リーグ東地区の首位を走るレッドソックス。現地時間23日(日本時間24日)のエンゼルス戦では、先発のリック・ポーセロが8回を3失点に抑える力投を見せながら、打線の援護なくチームは2-3で惜敗。この結果、ポーセロに今季13個目の黒星が付いた。
昨季は22勝4敗と18もの貯金を作り、メジャーにおける“投手最高の栄誉”サイ・ヤング賞に輝いた右腕。ところが今季は4勝13敗で防御率4.52という苦しいシーズンを送っている。
実は、近年のア・リーグでは「サイ・ヤング賞に輝いた投手は翌年苦しみがち」というジンクスが生まれつつある。以下は2001年以降にサイ・ヤング賞に輝いた投手の受賞者年とその翌年の成績を比較したもの。
【サイ・ヤング賞投手の受賞年と翌年成績】※2001年以降
▼ 2001年
AL:ロジャー・クレメンス
[受賞年] 20勝3敗 防3.51
[翌 年] 13勝6敗 防4.35
NL:ランディ・ジョンソン
[受賞年] 21勝6敗 防2.49
[翌 年] 24勝5敗 防2.32
▼ 2002年
AL:バリー・ジト
[受賞年] 23勝5敗 防2.75
[翌 年] 14勝12敗 防3.30
NL:ランディ・ジョンソン
[受賞年] 24勝5敗 防2.32
[翌 年] 6勝8敗 防4.26
▼ 2003年
AL:ロイ・ハラデイ
[受賞年] 22勝7敗 防3.25
[翌 年] 8勝8敗 防4.20
NL:エリック・ガニエ
[受賞年] 2勝3敗55セーブ 防1.20
[翌 年] 7勝3敗45セーブ 防2.19
▼ 2004年
AL:ヨハン・サンタナ
[受賞年] 20勝6敗 防2.61
[翌 年] 16勝7敗 防2.87
NL:ロジャー・クレメンス
[受賞年] 18勝4敗 防2.98
[翌 年] 13勝8敗 防1.87
▼ 2005年
AL:バートロ・コローン
[受賞年] 21勝8敗 防3.48
[翌 年] 1勝5敗 防5.11
NL:クリス・カーペンター
[受賞年] 21勝5敗 防2.83
[翌 年] 15勝8敗 防3.09
▼ 2006年
AL:ヨハン・サンタナ
[受賞年] 19勝6敗 防2.77
[翌 年] 15勝13敗 防3.33
NL:ブランドン・ウェブ
[受賞年] 16勝8敗 防3.10
[翌 年] 18勝10敗 防3.01
▼ 2007年
AL:CCサバシア
[受賞年] 19勝7敗 防3.21
[翌 年] 17勝10敗 防2.70
NL:ジェイク・ピービー
[受賞年] 19勝6敗 防2.54
[翌 年] 10勝11敗 防2.85
▼ 2008年
AL:クリフ・リー
[受賞年] 22勝3敗 防2.54
[翌 年] 14勝13敗 防3.22
NL:ティム・リンスカム
[受賞年] 18勝5敗 防2.62
[翌 年] 15勝7敗 防2.48
▼ 2009年
AL:ザック・グリンキー
[受賞年] 16勝8敗 防2.16
[翌 年] 10勝14敗 防4.17
NL:ティム・リンスカム
[受賞年] 15勝7敗 防2.48
[翌 年] 16勝10敗 防3.43
▼ 2010年
AL:フェリックス・ヘルナンデス
[受賞年] 13勝12敗 防2.27
[翌 年] 14勝14敗 防3.47
NL:ロイ・ハラデイ
[受賞年] 21勝10敗 防2.44
[翌 年] 19勝6敗 防2.35
▼ 2011年
AL:ジェスティン・バーランダー
[受賞年] 24勝5敗 防2.40
[翌 年] 17勝8敗 防2.64
NL:クレイトン・カーショー
[受賞年] 21勝5敗 防2.28
[翌 年] 14勝9敗 防2.53
▼ 2012年
AL:デービッド・プライス
[受賞年] 20勝5敗 防2.56
[翌 年] 10勝8敗 防3.33
NL:RAディッキー
[受賞年] 20勝6敗 防2.73
[翌 年] 14勝13敗 防4.21
▼ 2013年
AL:マックス・シャーザー
[受賞年] 21勝3敗 防2.90
[翌 年] 18勝5敗 防3.15
NL:クレイトン・カーショー
[受賞年] 16勝9敗 防1.83
[翌 年] 21勝3敗 防1.77
▼ 2014年
AL:コリー・クルバー
[受賞年] 18勝9敗 防2.44
[翌 年] 9勝16敗 防3.49
NL:クレイトン・カーショー
[受賞年] 21勝3敗 防1.77
[翌 年] 16勝7敗 防2.13
▼ 2015年
AL:ダラス・カイケル
[受賞年] 20勝8敗 防2.48
[翌 年] 9勝12敗 防4.55
NL:ジェイク・アリエッタ
[受賞年] 22勝6敗 防1.77
[翌 年] 18勝8敗 防3.10
▼ 2016年
AL:リック・ポーセロ
[受賞年] 22勝4敗 防3.15
[翌 年] 4勝13敗 防4.52(※)
NL:マックス・シャーザー
[受賞年] 20勝7敗 防2.96
[翌 年] 11勝5敗 防2.26(※)
※現地7月23日時点の成績
2年前の受賞者ダラス・カイケル(アストロズ)はキャリアハイとなる20勝を挙げるも、翌年(昨季)は9勝止まりで12敗と負け越し。2014年のコリー・クルバー(インディアンス)も、18勝を挙げた翌年に9勝に終わっている。
ナ・リーグではランディ・ジョンソン(01~02年)やティム・リンスカム(08~09年)、クレイトン・カーショー(13~14年)といったところが2年連続の受賞を果たしているのに対し、ア・リーグはペドロ・マルチネス(99~00年)を最後に連続受賞がないのだ。
2001年以降の受賞者を見ても、ナ・リーグと比べてア・リーグの方が苦しむ投手が多い傾向。受賞年から勝利数を増やしたのは、2010年の受賞者フェリックス・ヘルナンデスただ一人だった。
もちろん、投手最高の栄誉に輝いた翌年にそれ以上の勝ち星を積み上げるというのは容易ではないが、ナ・リーグでは救援のガニエを除いても4人いる。
防御率に関しても同じように、ア・リーグの投手で受賞翌年に数字が良化したのは2007年受賞のサバシアだけ。これもナ・リーグでは6人が数字を向上させている。
しかもそのサバシアも、受賞翌年のシーズン途中にナ・リーグのブリュワーズに移籍をしている。ア・リーグのインディアンスでは6勝8敗、防御率3.83という成績だったが、移籍後に11勝2敗、防御率1.65という成績をマーク。ナ・リーグへの移籍が功を奏した結果とも言える。
今季もその例に漏れず、苦しい成績となっているポーセロとは対照的に、シャーザーは変わらぬ好成績を残している。この不思議なジンクスはどこまで続くのか…。2人のここからの奮闘と、今季の受賞投手にも注目が集まる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)