一軍復帰後12試合連続無失点
楽天の“ドラ9”ルーキーが徐々に存在感を増している。
社会人野球の名門JX-ENEOS出身の25歳・高梨雄平。ドラフト下位指名ながら1年目から一軍で結果を残す変則左腕だが、もともとのフォームはスリークオーターだ。
しかし、思うような結果を出せないまま迎えた社会人2年目の昨夏、フォーム改造を決断。サイドスローに転向すると、その希少性も注目を集めてプロ入りに成功。開幕一軍入りも掴み取った。
プロ3試合目の登板となった4月6日のソフトバンク戦では、1点リードの5回から登板。2安打を許しながらも1回を無失点で切り抜け、他の注目新人たちに先駆けて新人一番乗りのプロ初勝利を挙げたことでも話題を集めた。
その後は4月26日のロッテ戦で5失点(自責は1)を喫して一度は二軍に落ちたものの、6月7日のDeNA戦で一軍復帰。以降は12試合連続で無失点登板を続けている。
7月20日の日本ハム戦でも2回を無失点に抑え、防御率はついに1.00を切った。現在の防御率は0.92という頼もしい数字だ。
当然ながら、首脳陣の評価も右肩上がり。6月30日のソフトバンク戦で初ホールドを記録すると、以降はホールドが記録される場面での登板が増加。ここまでに挙げた5ホールドは、ハーマン、福山博之、同じルーキーの森原康平に次ぐチーム4位の数字である。
左サイドの代名詞・宮西尚生を研究
現在の球界を代表するサイドスロー左腕といえば、やはり日本ハムの宮西尚生だろう。
実際のところ、高梨も宮西や森福允彦(巨人)の投球を研究して現在のフォームにたどり着いたという。昨年11月の新入団選手発表会見では、「少数派の男になりたい」と発言。社会人からドラフト9位でプロに滑り込んだ男らしい、自身の特性を最大限に生かそうとする姿勢が垣間見える。
宮西を意識してか、「故障しないで50試合、60試合投げたい」とも語っている高梨。ルーキーイヤーから9年連続で50試合以上の登板を果たしている鉄腕・宮西のような輝きを、将来、放つことができるか。ドラ9左腕の“下克上”に期待だ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)