盗塁数はわずか2年でワーストからトップへ
長く楽天とソフトバンクの2強が首位を争っていたパ・リーグの戦況が変わりつつある。その立役者は昨季まで3年連続でBクラスに沈んだ西武。変わったのはその攻撃だ。近年の西武打線といえば、強打者が並んでいる一方で三振も多く小技が利かない大味な印象があった。それが今季は様変わりしている。
チーム本塁打はソフトバンクに次ぐリーグ2位と相変わらず多いが、昨季.193だった三振率(三振数÷打席数)は.187に減少。そして、何よりも大きく変化したのが盗塁だ。ここまでの86盗塁は2位ソフトバンクの60盗塁に大差をつける断トツの数字。広島の82盗塁をも上回る12球団トップである。
ほんの2年前、2015年シーズンに西武が記録した盗塁数は66。リーグワーストの数字であった。それがわずかな期間で大きく変わった。昨季のシーズン盗塁数は97に激増しリーグ4位に上昇。53盗塁で盗塁王のタイトルを獲得した金子侑司の台頭が大きく影響した。
しかし、今季はその金子がケガで約2カ月も出遅れたにもかかわらず、ルーキー・源田壮亮の活躍などもあってリーグ1位の盗塁を記録している。パ・リーグの盗塁ランキング上位には、1位・源田(28盗塁)、3位・外崎修汰(15盗塁)、5位・金子(13盗塁)、6位・秋山翔吾(12盗塁)と西武の選手がずらりと並ぶ。
チームの士気やムードを高める盗塁
8月3日の楽天戦では、初回に秋山の先頭打者本塁打で先制すると、四球で出塁した源田が早速二盗。浅村栄斗のヒットで三進した源田は捕逸によりあっさりと2点目のホームイン。結果的に源田の足で稼いだこの得点が決勝点となり、チームは完勝で26年ぶりの12連勝を果たした。
今季から指揮を執る辻発彦監督は、現役時代には俊足で知られ、シーズン30盗塁を3度記録した。1987年の巨人との日本シリーズで見せた好走塁はいまや“伝説”とまで呼ばれる。その辻イズムが浸透したか、チームの走塁・盗塁意識が高まっているのは間違いない。
シーズン序盤にもたついた西武だが、破竹の13連勝もあり、2位ソフトバンクに5.5ゲーム差と迫ってきた。鮮やかな盗塁はファンを沸かせ、ベンチのムードや士気を高めることにもなる。ひょっとしたら逆転優勝も……と思わせる西武の勢いには、様変わりした西武の攻撃、“足”が寄与している部分も大きいはずだ。西武の“足攻”が、試合展開はもちろんペナントレースすらかき回し始めている。
※数字は2017年8月10日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)