磨いてきた投球術でベテランをも幻惑
8月27日、東京ドームで行われた巨人-阪神の“伝統の一戦”。巨人のドラフト2位ルーキー・畠世周が文字通り躍動した。
最速152キロの直球が武器の本格派右腕だが、力でねじ伏せるような印象はない。むしろカットボール、スライダー、チェンジアップなどの変化球を巧みに交えながら、打者を出し抜くような投球で阪神打線を翻弄。終わってみれば7回を1安打、11奪三振、無失点の見事な内容で4勝目をマークした。
目を引いたのは、左打者の内角を突く投球。初回、糸井嘉男と上本博紀から連続三振を奪って迎えた福留孝介に対し、内角直球で勝負。福留は反応すらできず見逃し三振に倒れた。
4回には、糸井に対して内角のカットボールで挑む。糸井はのけぞるも、ボールは内角いっぱいに構えられたキャッチャーミットに収まり見逃し三振。ただでさえスピードもある直球は、磨いてきた投球術と高精度な変化球とのコンビネーションによってさらに威力を増し、歴戦のベテランをも幻惑した。
左打者を苦にしない頼もしき新人右腕
この日の畠は、福留や糸井、鳥谷敬といった経験豊富なベテランのほか、右投手に対する代打の切り札に成長した伊藤隼太からも三振を奪い、右腕ながら左打者を完璧に抑え込んだ。
右打者・左打者それぞれに対する畠の成績が興味深い。対右打者の被打率.208に対し、対左打者も.217と遜色ない。しかし、三振となると対右打者が24(87打席)、対左打者は29(88打席)と、むしろ左打者からの方が多く奪っているのだ。
若手の場合、野手であれ投手であれ対戦相手の“左右別成績”は大きなハードルになることもある。その成績にあからさまな開きがあれば、出場機会は限られてしまうからだ。
畠の場合は、そのハードルをすでに悠々と飛び越えているということ。まして先発投手であれば、左をまったく苦にしないどころか高い奪三振力を左打者に対してより発揮していることは大きな武器となる。
今季の巨人は菅野智之、マイコラス、田口麗斗の強力3本柱に次ぐ先発投手の不在に悩まされてきた。畠は8回1失点で3勝目を挙げた8月20日のDeNA戦に続く好投によって “4本目”となるに十分過ぎる評価を得ただろう。
3位・DeNAまでは3.5ゲーム差。2位の阪神までも6ゲーム差と、セ・リーグの2位争いは過熱している。シーズン終盤に強さを見せることも多い巨人。畠の台頭により追撃態勢は整った。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)