3年ぶりの逆転劇へ…
セ・リーグ首位を走る広島に、一時は5.5ゲーム差まで迫った阪神。奇跡の逆転優勝への期待も高まる中、迎えた9月5日からの対広島3連戦。まさに“絶対に負けられない戦い”だったが、敵地でサヨナラを2試合含む3試合連続の逆転負けを喫した。
9月11日時点で両チームのゲーム差は「9.5」。広島のマジックも「5」まで減ってきており、リーグ優勝はかなり厳しくなってしまった。それでも、3位と6.5ゲーム差の2位につけている現状から、クライマックスシリーズの出場はほぼ当確と言える状況。逆転で日本シリーズに出場する道はまだ残されている。
思い返してみると、今から3年前の2014年。阪神は巨人と7ゲーム離れた2位でシーズンを終えたが、3位・広島を相手に1勝1分でファーストステージを突破すると、ファイナルステージでは巨人に4連勝。6試合を5勝1分の負けなしで駆け抜け、日本シリーズ出場の切符を掴み取った。
広島先発陣をカモにする意外な選手
短期決戦だけに、重要となってくるのが勢い。スタートから勢いに乗るためのカギを握るのは、相手との“相性”だ。そこで、今回は虎戦士たちの今季の『対広島成績』に注目。首位チームを得意にしている選手を探してみた。
【野手・対広島成績トップ5】
※20打数以上の打者を対象
1位 鳥谷 敬
[成績] 23試 率.386(83-32) 本0 点14
2位 梅野隆太郎
[成績] 20試 率.353(51-18) 本0 点12
3位 福留孝介
[成績] 23試 率.308(78-24) 本4 点17
4位 糸井嘉男
[成績] 16試 率.304(56-17) 本1 点11
5位 上本博紀
[成績] 18試 率.291(55-11) 本2 点5
野手では先日2000本安打を達成した鳥谷が貫録のトップ。単打狙いに徹したことが功を奏した感は強いが、なかでも昨年の最多勝投手である野村祐輔や守護神の中崎翔太、セットアッパーのジャクソンからは打率7割オーバーを記録。主戦投手との相性がいいのは頼りになる。
その他のラインナップを見るとおおむね納得のいくメンバーが名を連ねているが、意外なのが2位の梅野。シーズン打率は.213と決して良いとは言えない数字だが、対広島に限れば.353の好相性。他のセリーグチームとの対戦では3割を超えていないだけに、この高打率は驚異的とも言える。
内容を見ても、対野村での.800をはじめ、対岡田明丈も.429、対ジョンソンも.500と広島が誇る強力先発陣を相手に軒並みハイアベレージをマークした。
リリーフ陣は奮闘も…
つづいて投手。こちらは先発は10イニング以上、リリーフは5イニング以上を投げた投手を対象とした。
【投手・対広島成績トップ5】
※先発10イニングorリリーフ5イニング以上
1位 藤川球児
[成績] 9試 0勝0敗2ホールド 防御率0.93
2位 桑原謙太朗
[成績] 11試 0勝0敗6ホールド 防御率1.54
3位 岩崎 優
[成績] 15試 1勝0敗3ホールド 防御率2.14
4位 能見篤史
[成績] 3試 1勝1敗 防御率3.21
5位 岩田 稔
[成績] 3試 0勝0敗 防御率3.18
トップの藤川は、シーズン全体の防御率が2.62なことを考えるとこの成績はかなり優秀。チームは敗れたものの、9月5日からの対広島3連戦でも2試合に登板。強力打線をノーヒットに抑え、2ホールドを記録した。
その他、今季ブレイクした桑原に岩崎らも安定した成績を残しているだけに、ブルペンに関しては問題なさそう。クライマックスシリーズでの逆転に欠かせないのは、やはり先発陣の奮起だろう。
対広島で好成績を挙げる先発陣は能見と岩田だが、ともに3点台と凡庸で『シーズンよりは良い』といった程度。それ以上に他の先発陣が軒並み打ち込まれていることが気がかりで、今季のチーム勝ち頭である秋山拓巳が防御率10.80と大炎上。復活の期待がかかる藤浪晋太郎にしても、防御率は8.31だ。
ちなみに、対広島で3勝を挙げているメッセンジャーですら、防御率は4.18とシーズン防御率(2.46)から見るとかなり悪い。骨折のためクライマックスシリーズでの登板は絶望的だが、このデータを見るとそもそも全幅の信頼は置けない存在であることが分かる。
こうして整理してみると、シーズン以上にブルペン陣のフル回転は必至。能見や岩田以外の先発陣の奮起が求められる。緊急補強したルイス・メンドーサら、ニューヒーローの登場に期待したい。
泣いても笑ってもあと1カ月半ほどで閉幕する2017年シーズン。歓喜に沸くのはどのチームになるのか…。各チームのラストスパートから目が離せない。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)