復帰登板で見事に初完投
ロッテのドラフト1位ルーキー・佐々木千隼が復活の3勝目を挙げた。
9月13日の日本ハム戦。約2カ月ぶりとなる一軍マウンドに上がった佐々木は、初回と3回に一死三塁とするなど序盤からピンチを招く。しかし、粘りのピッチングで後続を断ち得点を許さない。
8回には四球も絡んで一死満塁。それでも動じることなく丁寧にコーナーを突き、松本剛を見逃し三振。二死から大田泰示を投ゴロに仕留め、この日最大のピンチを切り抜けた。初完封を目指した9回には一死から横尾俊建に豪快なソロアーチを浴びたものの、プロ初完投で自身の復帰登板に華を添えた。
大きな期待を背負った新人投手のひとりだっただけに、苦悩もあっただろう。プロ初登板は4月6日の日本ハム戦。5回1失点で早速初勝利を挙げるも、その後は序盤から打ち込まれるケースが目立ち4連敗。5月25日のソフトバンク戦で2勝目をマークしたが、それも打線の大量援護に助けられてのものだった。2勝目の後は5試合続けて勝ち星を挙げられず、7敗目を喫した7月5日の楽天戦後に登録抹消となった。
さらに、二軍降格直後に自身も初めての経験という広背筋痛を発症。精神的にも肉体的にも苦しんだはずだ。ファームではチームの先輩たちの助言もあり体を治すことに専念しつつ、「たっぷり時間があった」と、思うようにいかなかった自身の投球を見つめ直した。
その後、ようやく二軍でマウンドに上がったのは8月18日の西武戦。2番手として1回無失点に抑えた。続いて8月24日のDeNA戦では先発して2本塁打を浴びるなど3回2失点だったが、その後は一軍復帰に向けて徐々に調子を上げていく。8月31日の楽天戦で5回無失点、9月7日の巨人戦で4回無失点と結果を残し、ついに一軍へと帰ってきた。
求められる先発陣の軸としての働き
「佐々木はハズレだったか」という一部野球ファンの評価や、ロッテファンの寄せる大きな期待により、少なからずプレッシャーを感じるマウンドだったはずだ。その復帰登板での一発回答。二軍降格前に指摘された制球難も改善し、この日与えた四球は疲れの出てきた8回の2四球のみであった。
今季のロッテは先発陣がことごとく苦しんだ。西野勇士の先発転向は失敗に終わり、涌井秀章、石川歩ら主力が力を発揮できない。先発陣で貯金ができているのはドラフト2位ルーキー・酒居知史ただひとりという寂しい状況だ。
加えて涌井のFA権行使も噂されており、チームとして先発陣の整備は急務。若い佐々木に焦りは禁物だが、先発陣の軸としての働きが求められてくるだろう。
9月21日の西武戦では、一軍復帰2戦目のマウンドに上がる。相手の先発は球界を代表する左腕に成長した菊池雄星。リーグ最多得点を誇る強力打線を相手に佐々木がどんな投球を見せるか。来季のロッテを占う意味でも見逃せない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)