広島・薮田は優勝の立役者
プロ野球は10月10日をもって今季のレギュラーシーズン全日程が終了。パ・リーグはソフトバンクが2年ぶりの優勝、セ・リーグは広島が37年ぶりとなる連覇を成し遂げた。
今季もセ・リーグで圧巻の強さを見せつけた広島だったが、特に投手陣は大黒柱・黒田博樹が現役を引退するなど顔ぶれが変わった。その中で台頭してきた新たな力が、大卒3年目の薮田和樹である。
開幕は中継ぎとしてスタートしたものの、昨季の沢村賞左腕クリス・ジョンソンの離脱などもあって交流戦から先発に抜擢。すると転向後6連勝を挙げる大活躍を見せると、以降も順調に勝ち星を重ねて最終的には15勝(3敗)をマーク。最高勝率のタイトルを獲得した。
規定投球回には届かなかったものの、チームの連覇に大きく貢献したことは間違いない。リーグMVPを決める記者投票でも多くの票を獲得することだろう。
薮田につづけ!かつてのドラ1右腕に注目
そしてシーズン最終盤ではあるが、来季に向けて希望を持たせる投球を披露した男がいた。オリックスの吉田一将である。
入団から2年間は先発も務めていたため、正確に言うと“再転向”となるが、9月29日のロッテ戦で久々に先発するとそこでプロ初完封。10月6日の今季最終登板でも、王者・ソフトバンクを相手に7回途中2失点と力投を見せた。
一軍・二軍を行ったり来たりする中、先発としての可能性も示したかつてのドラ1右腕。果たして来季はどのポジションを掴み取るのか、逆襲のキーマンとして期待が高まっている。
ルーキーたちの飛躍にも期待
適性を見極めるために様々なポジションを経験するルーキーたちの中にも、たのしみな存在が2人いる。ロッテの酒居知史と、中日の笠原祥太郎だ。
ドラフト2位でロッテに入団した酒居は、4月下旬に中継ぎとして一軍デビュー。5月のなかばまでに10試合に登板したが、17日の西武戦で1回3失点と打ち込まれたのを最後に登録抹消となった。
ところが、8月4日の再昇格から先発の一角に入ると、以降は9試合の登板で5勝1敗の大活躍。苦しいチームの中で奮闘した。来季は頭から先発ローテーションの一角としての活躍に期待がかかる。
また、新潟県内の大学出身者として初のプロ入りを果たした笠原も、酒居と同様に先発転向後に輝きを放った。
中継ぎでは5試合連続失点を喫するなど結果を出すことができなかった左腕だが、9月1日の阪神戦から先発に転向すると以降の5試合で1勝2敗、防御率2.25と好成績を残した。
特にラスト3試合はすべて7回以上を投げて3失点以内に抑える好投。貴重な先発左腕として来季以降に大きな希望を持たせる姿を見せた。
思えば昨季日本一になった日本ハムも、それまでストッパーだった増井浩俊を先発に転向させたことがひとつのターニングポイントとなった。そして今季の薮田と、チャンピオンチームには“配置転換”でチャンスを掴み、大活躍を見せる投手が存在している。
今季終盤にキッカケを掴んだ投手たちを含め、来季も“先発転向組”に注目だ。
【今季の主な先発転向組】
▼ 藪田和樹(広島)
[先 発] 15試 12勝2敗 防2.47
[中継ぎ] 23試 3勝1敗 防3.00
[通 算] 38試 15勝3敗 防2.58
▼ 吉田一将(オリックス)
[先 発] 2試 1勝0敗 防1.15
[中継ぎ] 27試 1勝1敗 防3.62
[通 算] 29試 2勝1敗 防2.72
▼ 酒居知史(ロッテ)
[先 発] 9試 5勝1敗 防2.86
[中継ぎ] 10試 0勝0敗 防4.63
[通 算] 19試 5勝1敗 防3.13
▼ 笠原祥太郎(中日)
[先 発] 5試 1勝2敗 防2.25
[中継ぎ] 13試 0勝1敗 防4.86
[通 算] 18試 1勝3敗 防3.14