コラム

クレイトン・カーショー“エースの覚悟”

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ドジャースの大黒柱クレイトン・カーショー

白熱!ワールドシリーズ


 メジャーのポストシーズンもいよいよ佳境。現地時間10月24日(日本時間25日)に開幕したワールドシリーズは、第2戦まで終了して1勝1敗のタイ。ドジャースがホームで先勝、2戦目も優位に進めていたが、アストロズが意地を見せて延長逆転勝利を挙げた。

 1日移動日をはさみ、現地27日からはヒューストンでの戦いへと移る。ドジャースはダルビッシュ有が先発予定。第2戦で勢いづいたアストロズ打線を敵地で封じ込めることができるか、一世一代の大一番となる。


笑顔の好青年が突然…


 ワールドシリーズ第1戦。7回を3安打、無四球11奪三振・1失点の快投でドジャースを勝利へと導いたのが、クレイトン・カーショーである。

 昨季までの9シーズンで“投手最高の栄誉”サイ・ヤング賞を3度も受賞。チームの大黒柱にして、メジャーを代表する投手。そんな怪物左腕も、メジャーに昇格したての頃はいつも笑顔の好青年といった印象だった。当時ドジャースに在籍していた黒田博樹と仲が良かったこともあって、日本人メディアとの交流も多かった。

 しかし、いつからだろうか。クラブハウスでカーショーの姿を見ることは稀になり、登板日以外でカーショーに話を聞くことは困難になった。応答が簡潔なことも多い。

 ただ、こういう変化というのは時にあること。スーパースターであれば特に。
 
 選手として第一の仕事は、もちろんチームの勝利に貢献すること。それがチームのエースともなれば、その姿を率先してチームメイトに見せる必要がある。1試合1試合がいかに“真剣なビジネス”であるかを示さなければならないし、メディアへの対応は最低限果たすものの、その優先順位はどうしても低くなってしまう。


チームを世界一へと導く“覚悟”


 そんなカーショーという存在の大きさについては、現役選手たちが口々に語っている。

 かつてドジャースでカーショーとともに“二枚看板”を形成し、現在はダイヤモンドバックスで主戦投手として活躍しているザック・グリンキーは、「カーショーを見ているだけで学ぶことが多くある」と語っていた。その言葉通り、カーショーとともに戦ったドジャース時代のグリンキーの成績は凄まじいものがあり、2015年には両リーグトップの防御率(1.66)を記録している。

 ナショナルズの怪物右腕スティーブン・ストラスバーグも、ドジャース戦でカーショーの投球を目の当たりにした次の登板で見違えるような快投を披露。すると、その試合後に「チームメイトの闘争心を誘う、マウンドでの振る舞いに刺激を受けた」とコメント。なんと相手チームの投手にまで影響を与えていたのだ。


 ワールドシリーズ第1戦の試合後、アストロズのA.J.ヒンチ監督は「彼は攻撃的な投球でタフな面を見せた。我々は守りに入ってしまった」と脱帽。また、その試合で勝ち越しの2点本塁打を放ったジャスティン・ターナーは、「僕の人生で彼ほど負けん気の強い選手は見たことがない。リーグ有数の攻撃を誇るアストロズから11個の三振を奪い、7回まで僕らをリードしてくれた」とエースの投球に感謝を述べた。

 マウンドに立つカーショーの姿には、チームメイトの闘争心を促し、また相手を委縮させる不思議な力がある。そして、その力を手にした要因の1つに、かつて見られた“柔”の部分を捨てたことが挙げられるのではないだろうか。

 クラブハウスから姿を消し、笑顔を封印したカーショー。彼が抱いた“エースの覚悟”は、『世界一』になって初めて実を結ぶのである。


文=山脇明子(やまわき・あきこ)

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