DeNAの日本シリーズ進出で実現する“夢の対決”
28日の開幕が迫った2017年の日本シリーズ。今年の組み合わせは、パ・リーグで圧倒的強さを見せたソフトバンクと、セ・リーグのクライマックスシリーズで下剋上を果たしたDeNA。初の顔合わせとなるシリーズだが、「ソフトバンク・内川聖一VS古巣・DeNA」の対戦は注目ポイントの1つに挙げられそうだ。
内川は、2010年オフに横浜ベイスターズ(当時)からFAでソフトバンクに移籍。内川が在籍した当時の横浜は3年連続で90敗以上を喫して最下位に沈むという暗黒期で、2008年に至っては内川の打率(.378)よりもチームの勝率(.338)の方が低いという事態に陥っている。内川自身、当時の横浜でプレーすることに嫌気がさしていたのか、FAでソフトバンクに移籍する際、「僕自身、出ていく喜びを感じられますけど」と発言をして話題になった。
散々な言われようだった横浜だが、2011年オフに親会社がDeNAに替わって以降は徐々に成績が向上し、2016年には2007年以来のAクラスに入り、2017年も2年連続のAクラス入り。そして、クライマックスシリーズでペナントレースの覇者である広島を撃破した。セ・リーグ王者としてソフトバンクと相まみえることになり、同チームで主力打者として活躍する内川と対戦することになったのだ。
交流戦がある現在はあまり語られないが、かつては別リーグに移籍したFA選手が古巣と対戦する際は日本シリーズに限られていた。慣れ親しんだ古巣との対戦で好成績を残すか、はたまた研究されつくして抑え込まれるのか――。そこで今回は、日本シリーズで古巣球団と対戦した選手たちの成績を調べてみた。
野手は「ここぞ」という場面での好成績が目立つ
FA制度が1993年に導入されて以来、昨シーズンまでで延べ100人以上がこの制度を利用して移籍しているが、日本シリーズの舞台で古巣対決が実現した例は延べ6例とごくわずかである。まずは、野手の成績を見てみよう。
▼清原和博(西武→巨人)
・2002年日本シリーズ VS西武
4試合出場 13打数3安打 打率.231 2本塁打 4打点
1997年に移籍して以来、6年ぶりに古巣と相まみえた清原和博。清原の移籍直後、西武は松井稼頭央らを中心とした機動力を生かした野球にシフトして2連連続でパ・リーグを制しただけに清原の移籍にさほど喪失感はなかったが、かつてのスターとの対戦は大いに盛り上がった。
対戦成績を見るとさほどではないが、安打すべてに打点を記録するという勝負強さを発揮。第1戦では松坂大輔から東京ドームの看板直撃弾を放つなど、チームを勢いづけた。その他でも印象に残る活躍も多く、このシリーズの優秀選手賞を受賞している。
▼小笠原道大(日本ハム→巨人)
・2009年日本シリーズ VS日本ハム
6試合出場 23打数6安打 打率.261 1本塁打 3打点
・2012年日本シリーズ VS日本ハム
2試合出場 6打数無安打 打率.000 0本塁打 0打点
小笠原道大はFA選手で唯一、複数回古巣と日本シリーズで対戦している。初顔合わせとなった2009年はエンジンのかかりが遅く、札幌ドームでの1、2戦目は8打数1安打と抑え込まれていたが、東京ドームに戻った3戦目は1本塁打に決勝タイムリー2塁打を放つなど3打点を挙げてチームの勝利に貢献。
そして、2度目の対戦となった2012年はレギュラーシーズンも打率.152と大不振だったが、シリーズでもそれは変わらず6打数ノーヒット。4戦目にはスタメン起用されたが、5打数ノーヒットと期待に応えられなかった。
FAした先発投手は古巣に傾向を読まれがち?
続いては投手陣の3例を見てみたい。
▼武田一浩(ダイエー→中日)
・1999年日本シリーズ vs.ダイエー
1試合登板(先発)0勝1敗 防御率4.50
6回6被安打3失点6奪三振
最多勝を獲得した1998年オフにFA宣言。明治大学の先輩である星野仙一が監督を務める中日へと移籍すると、先発ローテを守り切ってチーム2位の勝ち星である9勝をマーク。右のエースとして存在感を示し、古巣ダイエーとの対戦となった日本シリーズでは第4戦目に先発した。
1番、2番を三振に切るなど上々の立ち上がりを見せたが、3回に秋山幸二、小久保裕紀にタイムリーを浴びて2点を失うと、6回にも小久保から本塁打を浴びてこのイニングで降板。6回を投げて6安打3失点と数字の上ではクオリティスタートではあるが、内容的にはいまひとつだった。
▼工藤公康(ダイエー→巨人)
・2000年日本シリーズ vs.ダイエー
1試合登板(先発)0勝0敗 防御率3.86
7回5被安打3失点8奪三振
1999年の日本シリーズで優秀選手賞を受賞し、ダイエー初の日本一に大きく貢献した矢先に巨人へFA移籍。2000年は12勝を挙げて巨人の4年ぶりのリーグ優勝に貢献して、優勝請負人としての面目躍如となった。右ふくらはぎの痛みを押して先発した日本シリーズ第1戦は8奪三振と貫録は見せたが、前年までバッテリーを組んでいた城島健司からソロ、そして松中信彦に同点2ランを喫して勝ち星を逃した。
ちなみに、直接の移籍ではないため対象外だが、2002年にかつて在籍した西武と対戦した際は第3戦に先発して8回2失点8奪三振の好投を見せて勝利。自身の持つシリーズ奪三振日本記録を102にまで伸ばしている。
▼豊田清(西武→巨人)
・2008年日本シリーズ vs.西武
3試合登板(リリーフ)0勝0敗1ホールド 防御率0.00
3回1/3 1被安打 3奪三振
リリーフ投手として唯一の古巣対決の経験者。シーズンではチームトップの26ホールドを挙げた割には登板機会がなかなかやってこず、シリーズ初登板となったのは第4戦目。しかし、ここでノーヒットに押さえたことで重宝され、その後は5、7戦と2試合に登板。ハイライトとなったのは優勝のかかった第7戦目。逆転されて1点ビハインドと言う状況を切り抜けて古巣の西武にその実力を見せている。
調べてみると、記録よりも記憶に残る活躍を見せるケースが多いFA選手たち。内川が28日からの日本シリーズでどんな成績を残すか、注目したい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)