コラム 2017.11.01. 12:13

オリックス・宮内オーナーの溢れるチーム愛

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報告会の記者会見に臨み笑顔を見せるオリックス・宮内オーナー (C)舩橋諄

どら増田のオリ熱魂!第20回・宮内義彦オーナー


 10月18日、都内にあるオリックス東京本社を福良淳一監督が訪ね、毎年恒例となっている宮内義彦オーナーへのシーズン報告と記者会見が行われた。

 シーズン中、試合を観戦した宮内オーナーが球場を後にする際にコメントを残すことはあっても、オーナーの話をじっくり聞けるのは、監督との会談後に行われるこの記者会見しかない。


福良体制へ


 この取材を行うのは3年目になるが、1年目は福良監督が監督代行から監督への就任が発表された直後とあって、就任の挨拶も兼ねたシーズン報告だった。

 2014年に熾烈な首位争いを繰り広げ、オフにはエース金子千尋の残留を含めた大型補強を断行。万全を期して臨んだ2015年シーズンは、怪我人の多発などもあり、5月末の時点で借金が15にまで膨らむと、当時の森脇浩司監督が責任を取る形で休養を表明した。

 その後、ヘッドコーチを務めていた福良監督代行がシーズンの残り試合で指揮を執り、一時は上昇の機運もあったが、チームはまさかの5位。シーズン終了直前に球団は、新シーズンを福良監督、田口壮2軍監督という新体制で迎えることを決定した。

 さぞかしご機嫌斜めかと思われたが、会見の宮内オーナーは非常に穏やかな口調で、常に笑みを浮かべながら話していたことを覚えている。

「時間をかけてでも自力のあるチームを作っていきたい」

 チームはブルーウェーブ時代の96年を最後に優勝から遠ざかっており、この間には大きな批判を浴びながらも近鉄との球団統合を実現させるために尽力もした。本音としては、優勝候補筆頭とまで言われた2015年は最低でもAクラスを思い描いていたに違いない。

 しかし、会見後に行われた囲み取材で福良監督が、「選手を育てるには時間がかかるでしょうと仰っていた」と振り返ったことからも、宮内オーナーが目先の優勝ではなく、長期的に強いチームの構築を新体制に託していたことが伺える。


最悪の結果に終わった2016年


 この会見で語っていたことを裏付けるかのように、翌年の開幕直前に行われた激励会で宮内オーナーは「今年は最低でもAクラスに入ってもらいたい」と語り、優勝という言葉は使わなかった。ところが、2016年は最下位という最悪な結末を迎える。

 この年のシーズン報告の会見では、穏やかな口調で「済んだことは仕方ない」と前置きをしながらも、最下位に終わったこともあり前年とは違って厳しい言葉が続いた。

「最下位なので評価はしません」
「負けてたまるか!という凄い執念を持ってもらいたい」
「意外な人が投打で2人ずつ出てこないと優勝できない」
「野球に対してもっと賢くなってもらいたい」
「プロ野球というのは3勝2敗(のペース)でいくと優勝、2勝3敗(のペース)だとビリ(最下位)になる」


 福良監督とは会談時に2人で主力の全選手について個別にシーズンの総括を行ったそうで、会談時間は約40分にも及んだ。


満足度44%の2017年


 2017年シーズンに福良監督が掲げていた「(同一カード3連戦での)1勝2敗からの脱却」は、前年のシーズン報告会見で宮内オーナーが展開した持論と通じるものがある。

 そして迎えた今シーズン。チームは春先こそ首位争いを演じて評論家の予想を裏切る快進撃を見せたが、5月になると大型連敗もあり失速。連勝しても大型連敗を繰り返し、3位楽天とは15ゲーム差で借金は16、5位の日本ハムとの差も開いていたことで、8月の時点で4位が確定した感は否めない。

「連敗に始まり連敗に終わった」
「6位が4位になったという感じはしない」
「勝率が.444ですから満足度は44%」


 今年の会見では、監督と「足りないこと」について話したことを明かし、4位という順位については「我々の下をいった2チームが極端に悪かったのではないか」と分析。しかし、今年の会見は終盤に語られた内容が印象深かったので是非読んでもらいたい。


愛という名の檄


「今のチームの成績は、4勝5敗(のペース)ですよね。だから勝率.444です。優勝しようと思ったら、あと2勝足さないといけない。6勝3敗(勝率.666)じゃないと優勝出来ない(今年のソフトバンクは勝率.657)。この2つをひっくり返すには、チーム力を相当上げないと優勝ラインには届かないということ。

地道な補強も必要なんだけれど、やはりチーム力をグーンと上げるような手立てを何か考えられないかな。そういうことが出来るか出来ないかが、来シーズンの大きな枠組みを決めてしまう。そういうふうに思っています。

そういう意味でドラフト、それからその後の補強と見ながら来年のチームを作っていく。同時に現有戦力の問題を大幅に改善しないといけない。攻撃の方は走れないということがある。極端に走れない。機動力が低すぎる(チーム盗塁数はパ最少の33。トップは西武の129)。

それから決定打がなかなか出ない。バッターが追い込まれると非常に弱い。これはやはり自信がない、力がないからそうなってしまうわけでね。そういう意味では打つ方もシーズンオフにもっともっと頑張ってもらわなきゃいかん。

守りの方でいうと投手力になるが、私が見る限り2アウトから得点を取られることが多い。なおかつ2ストライクから得点を取られる。力と頭の両方が足りないじゃないかと。そこを…インサイドベースボールをもっとしないといかん。

僕が言うのは漫画みたいだけど、野球をもっとしてくれと。何で2ストライクからあんなところに投げるんだと。そういうのが多い。その辺の改善は出来ると思う。言うならば現有勢力にはさらに一歩、本当のプロフェッショナルになってもらいたい。

1軍半ばかりじゃダメ。本当の1軍の選手を作り上げてもらう。猛練習のバファローズということに変えてもらいたい。昔、福良監督が現役のときはもっと練習したんじゃないかと僕は思う。ちょっと甘くなっている。

そういった下地があって、はじめて補強が実を結ぶんじゃないかなと思う。この秋の練習でどれだけ上手くなるのかはわからんけど。そこから頑張ってもらうというのも必要だと思います」


 メモを取りながら思わず唸ってしまった。宮内オーナーが素晴らしいのは、「素人目で見ても」という言葉を使うことで、チームを尊重する気持ちを踏まえつつ厳しい言葉を発していること。

 会見を聞く度に、一番のオリックスファンは宮内オーナー自身なんだということを感じる。今回展開された持論は、オーナーのチーム愛を感じるには十分なものがあるだろう。シーズン中にファンが抱いていたモヤモヤした思いの一端をオーナーが代弁したのは間違いない。


宮内オーナーを笑顔に


 田口2軍監督は就任会見で、オリックスの黄金時代を築いた故・仰木彬元監督から、亡くなった2005年に「最終的にちゃんと宮内さんを笑顔にさせるぞ」と言われていたことを明かした。

 その宮内オーナーから「すべての問題がね。負けが監督のせいだとは全然思わない。そういう意味で、2年間苦しんできたチームの飛躍を福良さんに託すというのが私どもの考えです」とチーム再建を託された福良監督の思いも同じだ。

 チームやファンとともに宮内オーナーにも祝杯をあげてもらうことが、何よりの恩返しである。チームはオーナーの愛が溢れる“檄”をしっかりと胸に刻み、来シーズンに臨んでもらいたい。


取材・文=どら増田
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