屈辱の1年をバネに…
球団史上ワーストの「96敗」――。これ以上ないほどの屈辱を味わったヤクルトの2017年シーズン。来季の巻き返しに向けて、チームは小川淳司監督を新監督に据えて再スタートを切る。
このオフの大きな動きと言えば、かつてチームを引っ張った宮本慎也氏のヘッドコーチ就任と、広島の強さを支えた石井琢朗コーチ・河田雄祐コーチの招へい。厳しさを植え付けられる指導者を招き入れ、チームの再建を図る。
首脳陣の入れ替えは進んだものの、選手の補強に関してはまだあまり動きは進んでいない。そんな中、この秋新たにチームに加わったのが、ソフトバンクから無償トレードで獲得した山田大樹と、西武を戦力外になった田代将太郎である。
2人のニューフェイス
山田は2006年の育成ドラフト1位でソフトバンクに入団。2010年の開幕前に支配下登録を勝ち取ると、パ・リーグの育成出身者として初めての白星をマークする。
以降は2011年に7勝、2012年は8勝と着実に実力をつけ、先発ローテーションに定着。田中将大(現ヤンキース)らと同じ『1988年世代』ということもあり、その中で育成から這い上がっての躍進は注目を浴びた。
ところが、その後は故障もあって低迷。今季はわずか2試合の登板で1勝に留まった。それでも、ファームでは2年連続で最多勝を獲得するなど格の違いを見せている。
新天地となるヤクルトでは、最年長の石川雅規に次ぐ先発左腕として期待されている。今季チームの先発左腕で白星を挙げたのは、石川の4勝のみ。これはリーグで最も少ない数字であった。裏を返すと、山田にとっては大きなチャンスと言えるだろう。
そしてもう一人、西武から戦力外通告を受けるも、トライアウトを経て加入が決まったのが田代だ。
プロ6年目の今季は初めて開幕スタメンを掴むなど期待を受けたが、レギュラー奪取とはいかず。キャリア最多の38試合に出場し、プロ初本塁打も放ったが、打率.071と結果を残すことができなかった。
ヤクルトには坂口智隆や雄平のほか、伸び盛りの山崎晃大朗、さらに上田剛史といった左打ちの外野手が多くいる。昨年、田代と同じように戦力外から加入した左の外野手・榎本葵は、1年で再び戦力外になった。こうした例を見ても、一軍に定着するまでの壁は決して低くない。
それでも、今や不動のレギュラーとなっている坂口智隆も、もとは自由契約からの加入組。どん底から這い上がって今のポジションがある。12月で28歳とまだ若いだけに、ここからが勝負なのだ。
元パ・リーグ組の活躍が多いヤクルト
振り返ってみると、近年ヤクルトに移籍してきた“元パ・リーグ戦士”の多くは結果を残している。
昨オフには大松尚逸(元ロッテ)、2016年シーズン中の移籍では近藤一樹(元オリックス)が加入しているが、大松は打率こそ低かったものの、2本のサヨナラ本塁打を記録するなど活躍。近藤は中継ぎとしてフル回転し、チーム3位となる54試合に登板している。
また、2015年オフには坂口智隆(元オリックス)、鵜久森淳志(元日本ハム)らが加入した。2014年オフにはFAで大引啓次(元日本ハム)、同年シーズン中には今浪隆博(元日本ハム)と多くの“元パ・リーグ組”を獲得し、貴重な戦力としてチームを支えた。
思えば野村克也監督が率いていた1990年代も、パ・リーグからの移籍組である田畑一也(元ダイエー)、辻発彦(元西武)、広田浩章(元ダイエー)らを次々に復活させ、『野村再生工場』と呼ばれていた。チームに残る“再生”の伝統を受け継ぐことができるか。山田と田代の活躍に期待がかかる。