新たな“本拠地”は相性抜群
12月4日、国内FA権を行使した大和のDeNA入団会見が行われた。プロ入りから12年を過ごした西宮を出て、新天地の横浜へ。守備力に問題を抱える阪神にとっては大きな痛手となり、DeNAにとっては大きなプラスとなりそうだ。
“守備職人”のイメージが強い大和であるが、新たな本拠地・横浜スタジアムではバットでも活躍を見せている。2013年以降のここ5シーズン、大和の通算打率は.257で出塁率は.309となっているが、それがハマスタでは打率.314、出塁率は.387と跳ね上がる。
ここ5年間の対DeNAの打率は.283となっていることから、単純なDeNA投手陣との相性の良さ以上にハマスタでの相性の良さがうかがえる。DeNAにとっては本拠地でよく打たれた打者がライバルチームから抜けることになり、そういった観点から見ても価値がある補強だといえよう。
若いチームに競争意識を
当然、球界屈指の守備力が加わることも大きなメリットになる。レギュラーを確約されたわけではないが、守りでいまひとつ物足りなさを見せる倉本寿彦を視野に入れての獲得であり、遊撃での起用が現実的ではないだろうか。
あるいは、レギュラーが固定できていない二塁をはじめ、外野手に疲労が見えてきたときには外野も…といった形で複数のポジションを争いながら柔軟に回していくことも考えられる。
すると、スタメンの座を追われたひとりを代打要員に当てることもできるようになる。リーグ屈指のクリーンナップを誇る強力打線がストロングポイントのDeNAだが、代打に関してはそれが当てはまらない。今季のDeNAの代打打率はリーグワーストの.156。リーグトップの広島(.260)とは実に1割以上の大差をつけられた。
それが大和の加入により、レギュラークラスの野手が代打陣に回ることになる。得点圏で勝負強さを見せた倉本をここ一番で起用することができるようになるなど、間違いなく采配の幅は広がる。
さらに、若い選手の内に秘められた潜在能力を引き出すために必要不可欠な“競争”を生むことにもなる。大和のレギュラー獲得に対するモチベーションは高いはず。センターラインを守る若き選手たちにとって、大和の加入は大きな刺激になり、チーム内の競争意識、ひいてはチーム力そのものを高めることになるだろう。
大和の加入はただひとりの選手を獲得したということばかりではなく、連鎖的にいくつものメリットを生む大きな補強になる。勢いに乗るチームを、さらなる高みへ。新加入・大和には“起爆剤”として大きな期待がかかる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)