新人ながらファームでは抜群の成績
阪神は10日、FAで移籍した大和の人的補償として尾仲祐哉を獲得する旨をDeNAに伝えたことを発表した。
阪神がDeNAからプロテクトリストを受け取ったと報じられたのは12月9日のこと。その翌日には尾仲の獲得を発表するという、まさに“即決”だった。
尾仲は高稜高から広島経済大を経て2016年のドラフト6位でDeNAに入団した右腕。まだプロ1年目を終えたばかりという22歳である。
鋭い腕の振りから繰り出す最速150キロの速球と、キレのある縦のスライダーが武器。ルーキーイヤーの今季、一軍では11試合の登板で1勝1敗、防御率6.52とプロの壁に苦しんだものの、二軍では25試合・32回2/3を投げて1勝負けなしの5セーブ、防御率1.38という安定感抜群の投球を披露。1投球回あたり何人の走者を出したかを表すWHIPは0.77で、奪三振率12.67、与四球率は1.38と圧巻の成績を残した。
成績では2013年の一岡竜司に勝る
人的補償での“もうけ物”と言えば、野球ファンならまず思い浮かべるのが一岡竜司(広島)だろう。
2013年のオフ、巨人にFA移籍した大竹寛の人的補償として広島に入団すると、翌2014年に16ホールドを挙げるなどいきなりの活躍。今季は自己最多の59試合に登板して6勝2敗1セーブ・19ホールド、防御率1.85という成績。連覇を成し遂げた広島リリーフ陣に欠かせない投手へと成長した。
その一岡の移籍直前の成績を見てみると、二軍で35試合・32回2/3を投げて0勝1敗15セーブ、防御率1.10、WHIP1.01、奪三振率11.57、与四球率2.76であった。投球回は奇しくも今季の尾仲と同じ32回2/3。防御率では一岡が勝るが、WHIPや奪三振率、与四球率はいずれも尾仲に軍配が上がる。
誰が獲得されてもファンから嘆きの声が上がるのが人的補償というものではあるが、尾仲の二軍成績を見るとDeNAファンに同情したくもなる。あくまで二軍成績であり、一軍でものになるかは別問題としても、DeNAファンとは対照的に虎党が歓喜するのも当然だ。
今季の阪神を支えたのは、間違いなく強力な救援陣である。とはいえ、ドリスとマテオは外国人であり、藤川球児や桑原謙太朗、高橋聡文といったところはすでにベテラン。岩崎優、石崎剛らとブルペンを支える若手の次なる矢として、尾仲には移籍1年目からの出番も大いにありそうだ。
果たして、尾仲は“第2の一岡”となれるか。大和を含め、それぞれの新天地における活躍を見守りたい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)