コラム

求む!松井稼頭央以来の“大物スイッチヒッター”

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かつてはスイッチヒッターの名選手がたくさんいた日本球界ですが…(C)KYODO NEWS IMAGES

かつては名スイッチヒッターがめじろ押し


 時代とともに変わりゆくトレンド。それは野球界にも同じことが言える。作戦や選手個人のプレースタイルなど、変化していくものは様々あるが、近年特に減少傾向にあるのが『スイッチヒッター』である。

 左右両方の打席でバッティングを行う選手のことで、一般的には相手投手が右ならば左打席に、相手投手が左ならば右打席に入る。たとえば足は速いものの長打力に乏しい右打者は、そのスピードを活かすためにスイッチ転向を試みることが多い。しかし、近年では両打ちを経てそのまま左打者になるという選手も少なくなく、スイッチヒッターとしてプレーする選手は減っている。


 かつて日本球界には多くの名スイッチヒッターが存在した。1980年代後半の広島打線には、正田耕三、山崎隆造、そして高橋慶彦の「スイッチヒッタートリオ」が先頭から並んだ。なかでも高橋の成績は傑出している。

 正田も首位打者に2度、盗塁王にも1度輝いているが、高橋は盗塁王のタイトルを3度獲得したほか、5度の打率3割、4年連続での20本塁打も記録している。まさに打って走れる野手の見本のような選手であった。

 そして、松井稼頭央(西武)の登場以前に「史上最高のスイッチヒッター」と呼ばれたのが、松永浩美だ。

 獲得タイトルこそ盗塁王、最高出塁率がそれぞれ1度のみだが、プロ4年目の1982年から10年連続で2ケタ本塁打を記録。生涯打率は3割目前の.293。リーグ最多得点を2度、最多三塁打も3度記録するなど、高いレベルで巧打・長打に俊足を併せ持つ選手であった。

 松永は1982年5月15日の日本ハム戦で日本人初の左右両打席本塁打を記録したことでも知られる。ちなみに、2007年にセギノールが更新するまで、松永が残した通算6度の両打席本塁打はプロ野球最多記録であった。


金子侑司の盗塁数は光るが…


 ほかにも「スーパーカートリオ」の一員として知られ、3年連続で盗塁王に輝いた屋鋪要をはじめ、その屋敷をしのぐ4年連続盗塁王・西村徳文、投手以外の全ポジションを守れる究極のユーティリティープレーヤー・木村拓也、スイッチヒッターの歴代最高打率.346を残した金城龍彦、犠打と守備の名手・平野謙などなど...。野球ファンには印象深い名スイッチヒッターは枚挙にいとまがない。

 では、現在のスイッチヒッターたちはどのような活躍をしているのだろうか。今季、一軍の主力であった主なスイッチヒッターの打撃成績は以下のとおりだ。

【主なスイッチヒッターたちの成績】
・藤井淳志(中日) 128試 率.265 本6 点42 盗5
・大 和 (阪神) 100試 率.280 本1 点16 盗2
・加藤翔平(ロッテ)98試 率.266 本5 点27 盗7
・金子侑司(西武) 90試 率.272 本5 点34 盗25

 今季はケガで出遅れながらも、リーグ4位の25盗塁を記録した金子の数字が光る。だが、やはり歴代の名スイッチヒッターたちと比較すると、全体的に小粒な印象は拭えない。

 両打席本塁打も、赤田将吾が2010年5月19日の広島戦で記録して以来、実に7シーズンも出ていない。松井稼頭央や西岡剛も若手の台頭やケガの影響によって出場機会が激減しており、現代野球最高のスイッチヒッター兼5ツールプレーヤーとも称された松井ももう42歳。来季からは古巣・西武に戻り、コーチを兼任することも決まった。

 試合展開、対戦投手によって器用にプレースタイルを変え、他のどんなタイプのプレーヤーも持ち得ない魅力でファンの心をつかむスイッチヒッター。そろそろ松井に代わる“大物”に現れてほしいものである。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)


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