あの福本豊をも超えた鈴木尚広の盗塁成功率
足の速い選手にとって、“見せ場”といえばやはり盗塁だろう。
文字通り“塁”を“盗”んでホームベースに一歩近づくプレー。得点圏に進むことでチャンスを広げ、チームの勝利に貢献するのが走れる選手にとっての重要な役目だが、一方で足の速い選手は相手バッテリーからも厳しくマークされるため、成功“率”という点では意外と高くなかったりもする。
実際、通算1065盗塁を決めてプロ野球最多記録を持つ福本豊も、成功率を見ると.781。通算200盗塁以上ではトップ5にすら入らない。
通算200盗塁以上でもっとも盗塁成功率が高いのは、巨人で足のスペシャリストとして活躍した鈴木尚広だ。現役20年間で規定打席に到達したことは一度もないものの、当時の原辰徳監督に見い出されたことで代走の切り札として台頭。通算228盗塁のうち、失敗は47個だけ。成功率は.829という高い記録を残している。
2016年に鈴木がユニフォームを脱いだ後、塁上で鈴木ほどの存在感を放つ選手というとなかなかいないものの、鈴木を超える可能性のある現役の俊足選手がいる。そこで、今回は現役選手の盗塁成功率に注目。トップ5をまとめてみた。
日本復帰後に成功率が上がった松井稼頭央
対象としたのは、2017年終了時点で現役選手のなかで通算盗塁数がトップ20に入っている選手たち。なおかつ2017年シーズンをもって現役を引退した片岡治大、井口資仁を除いた18名からトップ5を紹介する。ちなみに片岡の通算盗塁成功率.773、井口は.762だった。
▼ 第5位
赤松真人(広島)
☆成功率.791(136盗塁/36盗塁死)
第5位には広島の赤松真人がランクイン。阪神時代は故障に泣いて3年間で36試合の出場にとどまったが、新井貴浩のFA移籍における人的補償で広島に移籍すると出場機会が増加。移籍初年度の2008年は盗塁数こそ12だったが、成功率は.857。その後もコンスタントに2ケタ盗塁を記録し、いまや鈴木尚広のような代走屋としてチームになくてはならない存在になった。胃がんからの復帰を果たす2018年シーズンの活躍も期待したい。
▼ 第4位
坂本勇人(巨人)
☆成功率.793(138盗塁/36盗塁死)
巨人の顔・坂本勇人が第4位。クリーンアップを任されていた2017年は14盗塁で成功率は.700といまひとつだったが、かつては20盗塁以上があたりまえで、成功率も8割超えというハイアベレージを記録していた。もともと一塁到達の平均タイムが4.15秒という俊足を生かしてのものといえるだろう。
▼ 第3位
松井稼頭央(西武)
☆成功率.819(362盗塁/80盗塁死)
第3位は歴代最強ショートとしても名が挙がる松井稼頭央。通算300盗塁以上の現役選手では、唯一の失敗100以下という安定した成績を残している。盗塁王を獲得した1997年~1999年の3年間に限れば、成功率は.791(137盗塁/36盗塁死)と厳しいマークに遭っていたためいまひとつとなっているが、楽天時代の7シーズンは.848(56盗塁/10盗塁死)と数字を向上させている。西武に復帰した2018年シーズンはどんなプレーを見せるか楽しみだ。
パ・リーグ盗塁王を凌ぐ成功率現役1位は…?
▼ 第2位
西川遥輝(日本ハム)
☆成功率.858(182盗塁/30盗塁死)
2017年のパ・リーグ盗塁王にして、盗塁成功率も.886という好成績を記録した西川遥輝が通算でも第2位に。一軍初出場を果たした2012年も7盗塁を記録して失敗ゼロだったように、若手時代から高い盗塁成功率をマークしている。ちなみに2018年シーズンも2017年と同じだけの数字を記録すれば、200盗塁以上の盗塁成功率で鈴木尚広を抜いてトップに立つ。
▼ 第1位
荻野貴司(ロッテ)
☆成功率.879(153盗塁/21盗塁死)
盗塁王をおさえて第1位に輝いたのは、ロッテのスピードスター・荻野貴司だった。トヨタ自動車時代から抜群のスピードで知られ、「20mを走らせたら日本で一番速い」と評するスカウトもいたほど。プロ1年目の2010年もわずか46試合の試合出場で25盗塁を記録。以来、プロ入りから連続で2ケタ盗塁を記録する一方で、失敗数は毎年5以下という好成績を残している。ちなみに、2017年の盗塁成功率でも.897と西川遥輝を上回った。
長年故障に悩まされ出場試合数が限られていたが、2017年は初めて故障なく1年を過ごせた。2018年シーズン、フル出場したらどんな成績を残すか楽しみでならない。
調べてみると、坂本のような少し意外な名前もあった盗塁成功率ランキング。2018年シーズン、「代走のスペシャリスト」鈴木尚広を超えるような逸材は現れるだろうか。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)