コラム 2018.01.13. 11:18

日本人にとってのウインターリーグ~再チャレンジの場として~

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ドミニカの首都、サントドミンゴにあるキスケ― ジャスタジアム

それぞれのウィンターリーグ


 ポストシーズンの活躍もあり、その名を知らしめた横浜DeNAの乙坂智が、メキシコのウインターリーグ(WL)『メキシカンパシフィックリーグ』で武者修行を敢行。ヤキス・デ・オブレゴンの主力打者として活躍し、4割を超える打率を残した。

 昨年は、あの松坂大輔もプエルトリコリーグに参戦するなど、近年では日本の野球ファンの間でもすっかりお馴染みになった中南米のウインターリーグ。そこで今回は、中南米のウインターリーグでプレーした日本人選手を振り返っていきたい。


WLに参戦した最初の日本人!?


 中南米でプレーした最初の日本人は、おそらく1973年から83年まで巨人や広島でプレーした小川邦和になる。広島退団後、メキシカンリーグでプレーした彼は、そのオフシーズンもメキシカンパシフィックリーグでプレーした。奇しくも彼が所属したのは、乙坂と同じオブレゴンだった。
 
 しかし、彼に続く日本人はしばらく出てこない。その次となると、日本のプロ野球(NPB)を経由せずにメジャーリーガーになったマック鈴木が1997-98年シーズンにプエルトリコリーグのロボス・デ・アレシボというチームでプレーした。

 高校を中退してアメリカに渡った彼は、このときプロ6年目。前年にメジャーデビューを飾ったものの、この夏のシーズンはメジャーのマウンドに立つことができず、ステップアップのためにウインターリーグに参戦した。

 殿堂選手のロベルト・アロマーなど一線級のメジャーリーガーも参加していたこのリーグは当時、高いレベルを誇っており、その効果もあって、翌1998年に鈴木はメジャー復帰を果たし、スターダムにのし上がった。

 その後、オリックスでNPBデビューを果たすが、2シーズンで解雇。以後はラテン球界に身を投じ、夏はメキシカンリーグでプレーする一方、2006-07年シーズンにメキシコとベネズエラのウインターリーグでプレーしたのを皮切りに、両国で5シーズンにわたってプレーした。


水野の挑戦


 鈴木がプエルトリコでプレーした同じ時期にドミニカリーグでプレーしたのが水野雄仁だ。池田高校時代「阿波の金太郎」の異名で甲子園を沸かせた水野は、1996年限りで13年に及ぶ巨人でのキャリアを終えたが、1997年オフにメジャーリーグでの現役復帰を目指し、スプリングトレーニングへの招待状を勝ち取るべく、ウインターリーグに参戦した。

 水野は、ドミニカの新興球団、トロス(アズカレロス)・デル・エステで、日本人投手として初めて勝利投手となり、翌春のサンディエゴ・パドレスのキャンプの招待状を勝ち取った。残念ながらメジャーへの挑戦は叶うことなく、このウィンターリーグへの参加も、彼が当時解説を務めていたテレビ局の企画という側面が強かった印象は否めなかった。

 とにもかくにも、水野の「カリブデビュー」を皮切りに、日本やメジャーで実績を残したベテラン選手がウインターリーグを“売り込みの場”として利用するケースが続いていく。


伊良部、野茂…再チャレンジの足がかりに


 2001年オフには、モントリオール・エクスポズをシーズン終盤に解雇された伊良部秀樹が次の契約先を探すべくプエルトリコリーグへ。2007年オフには、このシーズンをマイナー暮らしで終えた野茂英雄がベネズエラリーグで冬のシーズンを送っている。

また、巨人や近鉄で活躍した三澤興一が、メジャーキャンプに参加するもシーズン前にカットされ、アメリカ独立リーグでプレーした2008年シーズンのオフに、さらなるチャンスを求めるべくドミニカとベネズエラでプレーした。

 近年では、三澤と同じくメジャー挑戦のためアメリカの独立リーグでプレー(2014年)した元ロッテのサブマリン、渡辺俊介投手が、かつて野茂も所属したベネズエラの名門、レオーネス・デ・カラカスに身を投じた。彼は翌シーズンもプロとして最後のシーズンをこのチームで過ごしている。

 そのベネズエラで最初にプレーした日本人が、今シーズン、監督就任1年目にして徳島インディゴソックスを独立リーグ日本一に導いた養父鉄。亜大から社会人の名門、日産自動車に進み、都市対抗優勝を果たしながら日本ではドラフトにかからず、27歳で台湾リーグに挑戦し、プロキャリアを始めたという筋金入りの「野球渡世人」だ。

その甲斐もあって、ダイエーからドラフト指名を受けたが1年で解雇。それでもプロキャリアをあきらめることなく渡米し、シカゴ・ホワイトソックスの3Aでは、ノーヒット・ノーランも達成した。2003-04年シーズンを皮切りに、3シーズン連続でベネズエラ、メキシコのウインターリーグでプレーし、両国で開幕投手も務めた。


キャリアアップとお金と


 養父は自らのウインターリーグ参加について次のように語る。

「基本的にはキャリアアップが目的ですね。ウインターリーグなら他球団のスカウトも見てくれますから。最初は当時所属していた2Aチームのベネズエラ人コーチから誘いがあって行きました。金銭も魅力でした。当時はマイナーで月3500ドルもらっていましたが、ベネズエラでは5000ドルでしたから。で、2年目はメキシコに行ったんですが、これは月給8500ドルにつられました(笑)。レベル的には、ベネズエラの方が高かったような気もしますが、最近はお金のあるリーグに好選手が集まっているのではないでしょうか」

 マイナーリーガーにとって、ウインターリーグはなかなかの稼ぎ場でもあるようだ。と言っても、養父は3年目のウインターリーグは報酬が低いはずのベネズエラで過ごしているから、彼にとっては修行の場という性格が強いのだろう。

「レベルうんぬんもそうだけど、ピッチャーのタイプも違いますね。ドミニカやベネズエラはストレート勝負なんだけど、メキシコは変化球主体なんです」と付け加えてくれた養父の言葉からは、ウインターリーグを目指す日本選手も克服すべき課題に合わせて行き先を選ぶべきであることがうかがえる。


中南米で再起を


 養父がメキシコに移籍した2004-05年シーズン、同じアルゴドネロス・デ・グアサーベでプレーしたのは、彼の大学時代の先輩、入来祐作だ。入来はこの夏のシーズン、巨人から日本ハムにトレードされていたが、不振に陥り、再起を目指して、メキシコに渡った。メキシコでは故障もあり、開幕後1週間ほどで帰国したが、このときマウンドで記録した94マイル(150キロ)のストレートが、スカウトの目に留まったのだろう、のち、ポスティングでメッツに移籍する際には、メジャー契約を勝ち取っている。

 ウインターリーグは、ステップアップをはかる選手の修行の場であるとともに、アメリカで行き先を失った選手の再チャレンジの足掛かりの場でもある。先述の伊良部や渡辺などはその典型例だ。

 日本のプロ野球からも、自動車事故がもとでオリックスを2006年シーズン限りで解雇された近鉄バファローズの元エース、前川勝彦が参戦している。1年のブランクの後、現役復帰の足掛かりを得るべく、ドミニカリーグのヒガンテス・デ・シバオの先発投手として7試合に登板し、ワシントン・ナショナルズとのマイナー契約を勝ち取っている。彼は、その後、カージナルスに移籍、その翌シーズンもドミニカとベネズエラでプレーした。

また、その前川のPL学園の後輩に当たる元ロッテの小林亮寛も、台湾リーグを解雇されたあと、2010-11年シーズンをメキシコのマイナーウインターリーグ、ベラクルスリーグでプレーし、夏のメキシカンリーグの名門、ディアブロスロッホス・デ・メヒコとの契約を勝ち取った。


取材・文=阿佐智(あさ・さとし)

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