阪神・熊谷は打撃に不安も…
その年もっとも活躍したルーキーに贈られる新人王。昨シーズンは京田陽太(中日)と源田壮亮(西武)が受賞した。
何と言ってもセ・パ両リーグともに野手、さらには遊撃手の受賞。両リーグともに野手の受賞となったのは、実に21年ぶりの出来事だという。
投手と比べ、いきなり活躍することが難しいとされる野手。特にパ・リーグは昨年の源田がリーグ19年ぶりの野手新人王。21世紀になってから初めてだと考えると、そのハードルの高さがお分かりいただけるだろう。
しかし、今シーズンの新人選手を見てみると、野手に有望株が多い。なかでも京田・源田と同じく遊撃手に新人王候補が揃っている。
セ・リーグでは、阪神のドラフト3位・熊谷敬宥に注目。仙台育英高時代は上林誠知(ソフトバンク)、馬場皐輔(阪神1位)らとともに甲子園に出場。その後、上林はプロヘ進んだが、熊谷は立教大へと進学する。
立教大では4年時に主将として大学日本一を経験。着実に力をつけてプロの世界へと飛び込んだ。守備が持ち味で打撃が課題となっているが、思えば京田と源田も春先の評価は同様だった。キャンプからオープン戦でアピールし、北條史也や糸原健斗らとのレギュラー争いを勝ち抜きたい。
福田・藤岡・山崎らがレギュラー奪取へ挑む!
パ・リーグの方では、注目の即戦力遊撃手が目白押し。3球団でレギュラー争いが起きそうだ。
本来であれば安達了一が正遊撃手となるオリックス。しかし、安達は持病の影響もあって、1年間を通しての活躍となると計算が立ちにくい。そのため、ドラフト3位で福田周平を獲得した。
福田は広陵高、明治大とエリートコースを進むも、プロ志望届は出さずにNTT東日本へと入部。昨年の都市対抗野球においてMVPにあたる橋戸賞を受賞するなど実績を積んだ。身長は169センチと小柄ではあるが、社会人では攻守ともに存在感を発揮。昨年は今年からチームメートとなる田嶋大樹とともに、社会人ベストナインも受賞している。安達や大城滉二、さらには二軍で遊撃を守っている宗佑磨、岡崎大輔らとのポジション争いが楽しみだ。
井口資仁監督を監督に迎えた新生・ロッテも、遊撃手争いが激しくなりそう。鈴木大地の三塁コンバートに伴い、遊撃を守ることが多かった中村奨吾が二塁に転向。遊撃のポジションが空白となっているのだ。
現時点での候補は平沢大河や三木亮、大嶺翔太というところになるが、そこに割って入ろうというのがドラフト2位で入団した藤岡裕大である。
社会人・トヨタ自動車といえば、昨年の新人王・源田を輩出したチーム。その源田が不動の遊撃手として君臨していただけに、藤岡はそれまで外野を守ることが多かった。それが源田のプロ入りをキッカケに、昨年から藤岡が遊撃に転向。シュアな打撃と強肩を活かした守備でアピールし、プロの扉を叩いた。
社会人では外野も守り、亜細亜大時代は三塁を守るなど、ポジションの選択肢は多い。本命は遊撃となるが、果たしてどのポジションで台頭してくるのか。見どころの多い選手である。
最後に、楽天のドラフト3位・山崎剛も魅力多き選手だ。
国学院大では史上初となる100安打(通算103安打)を達成した安打製造機。本職は二塁だが、自主トレ中に動きを視察した梨田昌孝監督が「遊撃手もやらせてみたい」とコメント。楽天にはリードオフマンの茂木栄五郎が遊撃のレギュラーを張っているが、故障もあってフルシーズン戦った経験はない。
思えばその茂木も入団当初は三塁だったが、プロ入り後に遊撃へと転向した。山崎も新たな場所で才能を開花し、茂木に挑戦状を叩きつけることができるか。キャンプから目が離せない。
このように、今シーズンも注目株が揃っている遊撃手のルーキー。この中からレギュラーを獲得し、新人王を受賞する選手が出てきても驚かないだろう。
しかし、過去の新人王を振り返ってみると、2年連続で両リーグとも遊撃手が独占したという例はなく、それどころか「2年連続で両リーグとも野手」すら1度もない。
高いハードルを乗り越え、新たな歴史を拓く選手が出てくるか。今年も“ルーキー遊撃手”から目が離せない。