どら増田のオリ熱魂!第26回・園部聡
「おっ!また行ったよ」
オリックスの秋季キャンプ終盤、ロングティーを行っていた園部聡は柵越えを連発。スカッとする特大弾に、高知東部野球場のスタンドはどよめいた。
園部自身も秋季キャンプを、「昨年いちばんの出来だった」と振り返る。
勝負の年と位置づけていた昨シーズンは、春季キャンプの一軍メンバーに選ばれたものの、キャンプ初日、福良淳一監督にコンディション不良を見抜かれて即二軍行き。いわゆる“鬼の福良”を発動させてしまう。その後、園部は野手でただ1人一軍に呼ばれることなく、シーズンを終えた。
秋季キャンプの手応え
「ああいうことがあり、体重のことをよく言われるんですが、秋季キャンプのようなバッティングはパワーがなかったら打てないと思うので、体重はあまり落とさず筋肉の割合を増やしていきたい。昨年はケガもあったんですけど、考え過ぎて詰め込み過ぎた部分がある。打った次の日に打てなかったり、その繰り返し。僕はもっとシンプルに前に打つことだけを考えればいいのかなと。ただ、メンタルはかなり強くなりました。途中からでしたけど、秋季キャンプに参加出来たのは大きかったです」
秋季キャンプで手応えを感じた園部が昨季を振り返る表情からは、自信がうかがえた。そんな園部の柵越えショーを連日見ていた福良監督は、「ああいうバッティングをし続けてくれたら、ナカジや(小谷野)栄一と併用したり、ウチで空き家になっている代打の切り札として起用できる。チームに幅ができる」と大きな期待を寄せた。
また、大砲を育てることに定評のある藤井康雄新打撃コーチには、ソフトバンクのある選手を例に、「お前は打球が速いんだから、とにかく打球を引っ掛けろ」とアドバイスされたという。このアドバイスを胸に、自主トレは舞洲で行う予定だったが、ある先輩から声がかかった。
「お前には教えたいことが山ほどある。一緒にやらないか?」
園部に手を差し伸べたのは、昨シーズン最終戦の試合後、若手選手の奮起を促したベテラン、小谷野栄一である。小谷野は昨年から、年明けは縞田拓弥らチームメイト数人と社会人野球、JR東日本の施設で自主トレを行っていた。園部に断る理由があるはずもなく、初めて先輩たちと社会人の施設で自主トレを行うことになった。
自主トレの充実
「小谷野さんに誘っていただいて、凄くうれしかった。小谷野さんは『教えたいことが山ほどある』と仰ってくださり、守備やバッティングを見てもらって疑問に思ったことを質問すると、『次はこうしてみたら?』などアドバイスをしてくださる。本当に質問攻めの毎日でした」
そして小谷野には、アドバイス以外にも感謝していることがある。
「小谷野さんたちは先に練習が終わっても、僕に好きなだけ練習をさせてくれるんですよ。なので、自分が納得するまでしっかり練習ができた。最後まで充実した自主トレでした」
秋季キャンプで大きな手応えを感じた園部は、自主トレの環境を変えたことで、自身を追い込むことができた。福良監督からの期待、アドバイスやチャンスを与えてくれた藤井コーチ、そして小谷野の気持ちに応えるには、一軍の試合で結果を出すしかない。
「今年は結果を出すことしか考えてません。どんな形であれ一軍の試合で打って、チームに貢献します」
今年の春季キャンプは二軍スタートになってしまったが、糸井嘉男に「俺の楽しみ」と言わしめ期待された“未完の大器”が開花する瞬間を、1年前に屈辱を味わった宮崎から見守っていきたい。
取材・文 / どら増田