どら増田のオリ熱魂!第27回・鈴木優
「都立の星から、オリックスの星を目指します」
初めて会話を交わしたのは、2015年夏の神戸サブ球場。あの初々しい眼差しは今でも鮮明に覚えている。都立雪谷高からドラフト9位(同年の最下位指名)でオリックスに入団した鈴木にマスコミから付けられたキャッチコピーは「都立の星」。地元のテレビ局でも大きく報じられるなど、話題になった。
勝ち星には恵まれなかったが、ルーキーイヤーの終盤には一軍デビューを果たしている。同年に監督代行を務めた福良淳一現監督の評価は高く、オフには高知秋季キャンプのメンバーにも選出された。その後、秋季キャンプには毎年参加しており、その都度成長過程をチェックしている福良監督は、昨年150キロ(最速152キロ)を計測した鈴木を見て、「真っ直ぐは凄くいい。あとは、1つでいいから何かを掴んでくれれば、一軍でも起用できる」と期待を込めつつ目を細めていた。
最も練習したオフシーズン
昨年は、11月末から12月にかけて台湾で開催された『アジアウインターリーグ』にも初めて出場。台湾まで視察に訪れた福良監督から「一軍でも通用することはわかっている。チャンスは与えるから掴んでほしい」と声をかけられたという。
そして迎えた1月27日、発表された宮崎春季キャンプ(2月1日~3月1日)の一軍メンバーに、鈴木優の名前があった。
昨年の春季キャンプは出遅れてしまい、我慢の日々を過ごしていたが、今回はウインターリーグから帰国すると、帰郷後も練習を欠かさずオフもそこそこに、年明けからは社会人・日本生命のグラウンドで自主トレを行った。
「このオフは、中日の大島洋平さんや小林(慶祐)さん、トレーナーの方々と、ファンクショナル(機能)トレーニングを通して、ただ単に筋力を向上させるだけでなく、正しい体の使い方を基に“動き”を鍛えました。相当追い込んだと言い切れるので、一軍でスタートする春季キャンプでは、それを存分に出していきたいです」
実際、この1月は舞洲の寮と日本生命のグラウンドを往復する日々だったようで、プロに入ってから最も「練習している」と感じられたオフシーズンだったという。
勝負の春季キャンプへ
福良監督からは、「1つでいいから」と言われているが、本人はキャンプで何処をアピールしていくのか?
「僕の武器はストレートだと思うので、そこでドンドン推しつつ、監督も仰っている変化球、決め球。カウント球としてのスライダーやスプリットを磨いていきたい」
確かに、150キロを記録するようになってからは、スピードと勢いを意識するあまり、狙い撃ちされる場面も目についた。しかし、シーズン終盤には変化球でカウントが取れるピッチングも見られ、台湾でも評価を高めた。そして迎える春季キャンプ――。
「開幕一軍を目指しているので全力でしがみついていきたい」
鈴木が開幕一軍を目指すのには、大きな理由がある。それは、メジャーに移籍した尊敬する平野佳寿を目標にしているから。平野の退団により、空き番となった背番号16を継承するという“夢”を抱いている。
鈴木自身、「それを胸張って言える選手になるためには、1年間一軍でたくさん投げる選手にならなきゃいけない」ということはよく理解している。そして、そう思っていた矢先に訪れた一軍スタートのチャンス。この好機を逃すわけにはいかない。
都立の星が「オリックスの星」として、チームに希望の光を照らす存在になったとき、鈴木優の“夢”も現実になるだろう。まずは、2月1日から始まる春季キャンプでのアピールに期待したい。
取材・文 / どら増田