白球つれづれ2018~第1回・稲葉ジャパンの命運を握る男たち
こいつは春から~。野球日本代表・侍ジャパンが会心のスタートを切った。
豪州相手の2戦に危なげなく連勝。投手陣は初戦の千賀滉大の6連続奪三振を皮切りに、2戦目の則本昴大ら、繰り出す投手がいずれも胸のすく快投で連続完封である。打撃陣を見ても、初戦は主砲の柳田悠岐と筒香嘉智の打棒が火を噴き、2戦目はわきを固める秋山翔吾、松本剛や今宮健太らの活躍と違う形で勝利をおさめたのは収穫と言っていいだろう。
もっとも、何十年と現場で野球を見続けてきた小生のような「ひねくれ者」?には何か消化不良のような感覚が残る。
はっきり言って、今回の豪州チームは弱過ぎた。同国内リーグでプレーする選手が主体。メジャーでキャンプ中の選手らがいないのは仕方ないにしても、150キロ台の剛速球投手がいるわけでない。鋭い変化球を駆使するほどでもない。逆に日本投手陣に目を転じると、これがメジャーリーガーなら通用しているのか?と思うような甘いボールも見受けられた。
あくまで2年後の東京五輪で金メダルに挑戦する過程の第一歩とは承知していても、この結果だけで満足していてはいられない。
侍ジャパンの課題
もちろん、侍ジャパンも今回選出された28選手がベストメンバーではない。
菅野智之や坂本勇人の巨人勢らも当然、稲葉ジャパンの骨格に入ってくるはず。また、これまでと同じルールならば、五輪ではベンチ入り選手も24人に絞り込まれる。
バリバリの主力と、2年後にはさらに成長するであろう若手の融合。少人数で戦うためには内外野の複数ポジションを守れるユーティリティ選手の必要性。球数制限のある国際試合では先発が早く降板したときに救援陣との間に「第二先発」も編成される。これらの課題をテストする意味合いの濃かった豪州戦だが、収穫と同時に改善が望まれるポイントも浮かび上がってきた。
まずは“右の大砲”の不在と、「一塁」「三塁」の固定化の問題だ。
初戦では豪州先発の左腕・ブラックリーに5回まで散発2安打と抑え込まれている。この間に苦しんだ柳田、筒香の主軸は2戦目でもワンポイントの左腕を攻略しきれていない。本番では米国やドミニカ、韓国らの強豪国が相手。同じような状況の時に、苦境を打破できる右の大砲が必ず必要となる。
今回は浅村栄斗と大山悠輔を指名したが、固定までには至らない。そこでクローズアップされるのは、やはり中田翔だ。昨季はレギュラー定着後ワーストの不振に喘いだが、本来の出来を取り戻せばクリーンアップの一角に欠かせない。故障や不振組では山田哲人、鈴木誠也も右の大砲として復活が望まれる。
一塁に中田が戻った場合でも、三塁の固定化はいまだ見えて来ない。過去の大会では不動の二塁手に菊池涼介がいるため山田を三塁に回したこともあったが、送球難で苦しんだ経緯がある。となると、右の強打者で一塁、二塁に三塁まで守ったこともある万能男・浅村の出番か?
セ・リーグ勢の奮起に期待
今回の強化試合でも注目された“ユーティリティ枠”には、もうひとり面白い存在がいる。今季から捕手に本格復帰が見込まれる近藤健介だ。
昨年は故障のため規定打席に達しなかったものの、4割台の打率をマーク。その打撃センスはピカイチだ。現状3人を登録している捕手陣だが、近藤なら捕手兼外野手、さらに代打の切り札としても期待が出来る。
また、侍の現監督である稲葉篤紀や青木宣親ら、過去の大一番で威力を発揮した「必殺仕事人」も欲しい。ここはベテランの出番で内川聖一が筆頭候補。2020年時には38歳になるが、勝負強い打撃は捨てがたい。
ここまで中田翔に浅村栄斗、近藤健介、そして内川聖一。うーん、すべてパ・リーグの選手である。生きのいいセ・リーグ勢の大化けはないものか…?
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)