驚異の奪三振数
古巣・マリナーズへの復帰が決まったイチローに続き、カブスからFAになっていた上原浩治が古巣・巨人への復帰を決断した。上原は10年ぶりの日本球界復帰となる。
上原といえば、1999年のルーキーイヤーから素晴らしい“制球力”の持ち主として知られている。1999年から2008年までの巨人時代には1.20という与四球率(9イニングあたりの与四球数)を記録。これはプロ野球史上、堂々の1位である(1500投球回以上)。
しかしこの上原、優れているのは制球力だけではない。高い精度を誇りながら、三振を奪う能力も極めて高かった。2008年までの巨人時代に、通算1376奪三振を記録。メジャーリーグで投手の能力を測る指標としてよく用いられるK/BB(与四球1個あたりの奪三振数)というスタッツがあるが、上原のこの数字は6.68で、実はこれもプロ野球史上1位である(1500投球回以上)。
【NPB歴代K/BBランキング】※1500投球回以上
1位 6.68 上原浩治
2位 4.61 土橋正幸
3位 4.29 杉浦 忠
4位 3.79 成瀬善久
5位 3.58 稲尾和久
衰え知らずの制球力
ランキングを見てもお分かりの通り、これまでのトップが4.61だったのに対し、上原はそれをはるかに超える6.68という数値を記録。まさに断トツの数字である。
さらに上原のすごいところは、2009年に活躍の舞台をメジャーに移した後も、その制球力は衰えることはなかったという点だ。メジャーでは、主にリリーバーとして9シーズンを過ごしたが、通算与四球率は1.46。メジャーで400投球回以上投げた投手は2635人いるが、上原は38位にランクインしている。
上原より上位にランクインした投手の顔ぶれを見ると、ほとんどが1900年以前にプレーしていた選手たちだ。当時の野球は現代のそれとは大きく異なり、奪三振率(9イニング当たりの奪三振数)も1個前後。四球、三振ともに極端に少ない時代だった。
そして上原のメジャーでのK/BBに話を移すと、日本時代を上回る7.33という数字をたたき出していた。400投球回以上投げた2635投手の中でも堂々の1位にランクインしている。
【MLB歴代K/BBランキング】※400投球回以上
1位 7.33 上原浩治
2位 5.88 ケンリー・ジャンセン
3位 5.16 セルジオ・ロモ
4位 5.12 クリス・セール
5位 5.11 田中将大
上位5人の顔ぶれを見るとわかるが、いずれも今も現役でプレーする選手たちだ。近年のメジャーでは奪三振が多く、与四球が少ない傾向にあることが見て取れる。そんな中でも、上原のK/BBの数値は飛び抜けているのである。
日本とメジャー、それぞれで歴代1位のK/BBを誇る上原。10年ぶりの日本でも我々に変わらない精密機械ぶりを必ず見せてくれることだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)