コラム

「野球がしたい」…現役にこだわった男たちの“生き様”を見よ

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巨人・上原浩治(C)KYODO NEWS IMAGES

白球つれづれ2018~第2回・男たちの生き様


 日本列島にようやく春風が吹きだした3月上旬。野球界でも、去就の注目されていたベテラン選手たちが次々と新天地のユニフォームに袖を通した。

 海の向こうメジャーリーグでは、イチローが古巣のシアトル・マリナーズへ復帰。44歳の安打製造機もなかなか所属球団が決まらずにファンはやきもきさせられたが、当の本人は「泰然」という言葉を使って現役続行に絶対の自信をのぞかせた。

 昨年オフから、MLBではFA選手に対して異常なほどの逆風が吹き荒れた。経営陣が高額年俸を有する選手との契約を嫌い、若手育成の名のもとに合理化を画策すれば、選手会側は一部球団の経営努力怠慢を訴えて提訴の構えまで見せる。2月中旬から始まるキャンプまでに、所属先の決まらない選手は一時100人を超えた。

 こうした逆風に弾き飛ばされた格好の上原浩治は、やむなく巨人へのUターンという選択をした。一時は「メジャーで所属が決まらなかったら引退」と語っていたが、42歳のリリーバーに対する評価は思うほど上がらず、日本での出直しを決断。

 「結果的にウソをついた形になったが、やっぱり野球がやりたかった」とは偽らざる本音だろう。東海大仰星高校時代は2番手投手。大体大へも浪人して入学した。雑草派エースは打たれ強い。巨人にとっては渡りに船ともいうべき上原のUターンは、V奪還の意外な切り札となるかも知れない。

 この上原より先に、日本球界への復帰を決めたのはヤクルトの青木宣親だ。メジャー7球団を渡り歩いた打撃職人も、36歳の年齢とパンチ不足が契約のネックになったとみられる。


野球が好きで、まだまだ進化を信じている


 これら3選手は古巣が救いの手を差し伸べた格好だが、NPBのどの球団からも声がかからず、新たな決断に迫られたのは前巨人の村田修一。こちらも若返りの名のもとに自由契約の宣告を受けた。

 松坂世代の37歳。堅守と長打力はまだまだ評価されていたが、結局ほかの11球団から声はかからず、BCリーグ・栃木に所属して再度のNPB復帰を目指すことになった。

 ちなみに、村田の月給は同リーグの規定で最高でも40万円という。かつての実績だけで通用しないのはプロの掟。イチローだってマリナーズでの新年俸は75万ドル(約8000万円)プラス出来高だ。前回のマリナーズ時代には最高年俸1800万ドル(約19億2000万円)を稼ぎ出したスーパースターでも例外ではない。こう見ると、上原の2億円プラス出来高や青木の3億3000万円の新サラリーは恵まれていると言えるかも知れない。(※金額は推定)


 ソフトバンクでの3年間、肩や肘の故障から未勝利に終わった松坂大輔は、今季から中日で復活を賭ける。かつて松坂と西武でチームメイトだった松井稼頭央も、42歳となった今季はコーチ兼任選手としてこれまた古巣の西武に戻ってきた。

 ここまで名前を挙げてきた6選手に共通するのは、いずれもタイトルホルダーであり、村田を除いてはメジャーの高い頂に挑戦した男たちだ。これまでの総年俸を計算すればみんな数十億円以上は稼いで、いま現役を辞めても暮らしに困ることは無いだろう。周囲からはロートル扱いされて、低年俸で買い叩かれても彼らには共通の思いがある。野球が好きで、まだまだ進化を信じているのだ。

 あるテレビ番組のインタビューで「仮にこのオフ、どこからも(入団の)声がかからなかったときはどうしていたか?」と問われた松坂は「リハビリと実戦勘を取り戻すため、メジャーの1A・2Aでも、アジアリーグでも挑戦したと思います」と語っている。

 ちなみに、過去の名選手の現役引退時を調べてみた。長嶋茂雄は38歳、王貞治は40歳。王は最終年ですら30本塁打を記録している。このONが余力を残しての引退なら、野村克也と落合博満は共に45歳。医学やトレーニング方法が進歩している現代なら、イチローが「最低でも50歳まで現役を」と吠えても不思議ではない。

 さて、このオフに彼らはどんな「通信簿」を残すのか?男の生き様を見せる時である。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)


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