コラム 2018.03.28. 11:05

重圧を力に!DeNA・神里が挑む勝負の1年目

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「7番・右翼」で開幕スタメンに抜擢されたルーキーの神里

開幕スタメンに抜擢


 3月25日、DeNAはJR桜木町駅前広場に5000人超のファンを集め、2018シーズンに向けた出陣式を行った。アレックス・ラミレス監督の口から発表された開幕スタメンの中で、サプライズといえば「7番・ライト」にルーキーの神里和毅を起用したことだろう。

 遡ること2日、同23日の西武戦前の打撃練習中に指揮官は神里のもとに歩み寄り、「Congratulations!」と声をかけた。開幕戦での先発起用を告げられた神里は、「わかりました」と返すので精いっぱいだった。

 人見知りな性格という神里が、訥々(とつとつ)と振り返る。

「(開幕スタメンは)『ないことはないかな』と思っていたんですけど、びっくりもしましたし、うれしい気持ちもありました」


チーム最多の盗塁数


 神里に白羽の矢が立ったのは、大まかにいえば2つの理由がある。

 1つは、これまでライトのレギュラーを守ってきた梶谷隆幸のコンディションに不安が残ることだ。春季キャンプは二軍でじっくりと調整を進めてきたが、オープン戦では12打数1安打と本来の姿を取り戻すには至らなかった。さらに、ここにきて背中の違和感を訴えるなど、開幕を万全の状態で迎えることは厳しい情勢だ。

 もう1つの理由は、神里自身がオープン戦を通じて持ち味を発揮し、アピールに成功したこと。とりわけチーム最多の4盗塁をマークした脚力は、盗塁数の増加をもくろむ指揮官の目を引いた。3月24日の西武戦では3四球を選ぶなど出塁率も高く、7番の神里が塁に出て、8番の投手が送り、勝負強い9番の倉本寿彦の打席で得点を狙う算段も立つ。

 走攻守三拍子揃った総合力の高さが評価され、ドラフト2位指名で念願のプロ入りを叶えた神里だが、中でも最大のアピールポイントはやはり走力だと自ら語る。

「手動(計測)ですけど、50メートルは5秒8。バッティングには波があっても、走塁には波がないと思うので、この足はしっかり生かしていきたい。オープン戦では自分が走るんだという気持ちを強く持っていた。だからこそ積極的に、いいスタートが切れたのかなと思います」

 走る意識を強く持ち続けたのは、チームの課題がそこにあることを理解しているからにほかならない。即戦力としての自覚があるからこそ、自身に何が要求され、どう行動で示していくべきかがよく見えている。


社会人を経験した意味


 社会人を経て入団した俊足巧打の24歳を見ていると、広島の田中広輔とイメージが重なる。リーグ覇者のリードオフマンの名前を出されたことに、神里は恐縮しながら言う。

「前にもそう言われたことはあります。あれだけの選手に似ていると言われることはうれしいですし、田中選手を超えられるような活躍をしたいなと思います。ただ、ぼく自身が近いタイプかなと思うのは中日の大島(洋平)さんですね。(社会人時代の所属が)同じ日本生命ですし、ホームランバッターではないけどヒットを打つこと、走ることに関しては似ているのかなって」

 沖縄出身で、糸満高校から中央大学へ進んだ。プロ入りを考え始めたのは、徐々に注目を集め始めた高2の冬。3年時(2011年夏)には甲子園の土を踏んで、中大の4年間を経て、プロの世界に身を投じるつもりだった。しかし無念の指名漏れ。そうして進んだ社会人野球の経験が大きかったと振り返る。

「大学はリーグ戦ですけど、社会人(の大会)は一発勝負なので、一球に対する執着心が強くなったと思います。会社を背負って戦ってますから、試合に負けると会社にも行きづらいんです。そういう重圧の中での野球を経験できたことが成長につながったんだと思う。社会人に行ってよかったなと思います」


「プレッシャーはあったほうがいい」


 走塁については「プロだからといって変わるところはない」としながらも、打撃に関しては壁を感じているという。「ピッチャーの球の質が全然違う。そこに早く対応しないと、この世界でやっていくのは難しい」と語るとおり、シーズンに入ってからもスタメンの座を守り続けるためには、打席での結果もコンスタントに残していくことが求められる。

 勝負の1年目、成長のエネルギーとなるのはプレッシャーだ。「注目されるのは好き?」と尋ねると、神里は言った。

「注目されたほうがいいかもしれないですね。プレッシャーはあったほうがいいタイプだと思うので」

 出陣式の前の段階では、「目標は10盗塁。20できれば最高です」と語っていた。ところが出陣式の壇上、詰めかけたファンの前に立って出た言葉は「できれば30盗塁したい」。

 期待が高まるぶんだけ、意欲も高まる背番号8。横浜スタジアムの大観衆に囲まれてどんなプレーを見せるのか、いまから楽しみだ。

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