高卒スラッガーのブレイク年
待ちに待ったシーズンが開幕して早くも10試合あまりが経過。今年も期待の若手選手が開幕一軍の座をつかみ、レギュラー定着に向けて懸命にプレーしている。そのなかでも目立っている選手のひとりが、プロ入り4年目の岡本和真(巨人)だ。
前年オフに退団した村田修一の背番号25を受け継いだ今季は、勝負強い打撃でオープン戦の打点王に輝き、開幕スタメンの座をゲット。その後も持ち前の長打力を発揮し、ここまで打率.286、3本塁打、13打点という成績を残している。
巨人ファン待望の生え抜きのスラッガーとして存在感を見せ、気の早いファンからは松井秀喜以来となる『生え抜き日本人選手の本塁打王』を期待する声さえあがっている。
この岡本をはじめ、高卒選手たちが「4年目」にキッカケを掴むというパターンは実に多い。古くは、王貞治が荒川博コーチとの二人三脚の練習で一本足打法を編み出し、初の本塁打王に輝いたのもプロ入り4年の1962年。“鉄人”と称された衣笠祥雄がレギュラーに定着したのもプロ入り4年目の1969年だった。
高卒選手のプロ入り4年目といえば、大学に進学した同期が4年生になる年。大学リーグで好成績を残せば秋のドラフト会議では上位指名を受け、翌春にはライバルとして対決することになる。そのため尻に火が付く選手が多いのかもしれないが、実際のところはどうなのか。今回は、高卒スラッガーのプロ入り4年目の成績について注目してみた。
高卒スラッガーは4年目までに台頭!?
対象は1988年以降にプロ入りした高卒選手で、通算200本塁打以上を放った上位7人。なお、球団はプロ入り4年目当時の在籍球団とし、唯一の現役選手、中村剛也は2017年シーズン終了時点の成績とする。
▼ 江藤 智(広島)
プロ入り4年目の成績(1991年)
→ 91試 率.215 本11 点31
[前年成績] 38試 率.239 本5 点10
[通算成績] 1834試 率.268 本364 点1020
▼ 前田智徳(広島)
プロ入り4年目の成績(1993年)
→ 131試 率.317 本27 点70
[前年成績] 130試 率.308 本19 点89
[通算成績] 2188試 率.302 本295 点1112
▼ 新庄剛志(阪神)
プロ入り4年目の成績(1993年)
→ 102試 率.257 本23 点62
[前年成績] 95試 率.278 本11 点46
[通算成績] 1714試 率.252 本225 点816(日米通算)
▼ 中村紀洋(近鉄)
プロ入り4年目の成績(1995年)
→ 129試 率.228 本20 点64
[前年成績] 101試 率.281 本8 点36
[通算成績] 2284試 率.266 本404 点1351(日米通算)
▼ 松井秀喜(巨人)
プロ入り4年目の成績(1996年)
→ 130試 率.314 本38 点99
[前年成績] 131試 率.283 本22 点80
[通算成績] 2504試 率.293 本507 点1649(日米通算)
▼ 城島健司(ダイエー)
プロ入り4年目の成績(1998年)
→ 122試 率.251 本16 点58
[前年成績] 120試 率.308 本15 点68
[通算成績] 1785試 率.289 本292 点1006(日米通算)
▼ 中村剛也(西武)
プロ入り4年目の成績(2005年)
→ 80試 率.262 本22 点57
[前年成績] 28試 率.273 本2 点5
[通算成績] 1432試 率.252 本357 点969
80試合で22本塁打を放ち、“おかわり君”の愛称がファンに浸透した中村剛也をはじめ、ほとんどの選手がプロ入り4年目の年に飛躍のシーズンを迎えている。
前田智徳や松井秀喜らは3年目の時点ですでにレギュラー入りを果たしているが、前田はキャリアハイとなる27本塁打をこの年にマーク。松井は自身初タイトルとなるリーグMVPを獲得している。
現役選手では…?
高卒スラッガーがモノになる場合、プロ入り4年目に大成する傾向があるのはわかった。しかし、いかに岡本和真が好成績を残していても、上記のような球史に残る選手たちと比べるのは時期尚早な感もある。
そこで、岡本と年代が近い現役の20代の高卒選手で、通算100本塁打以上、もしくはシーズン30本塁打を放った選手たちの4年目の成績も調べてみた。※年齢は今季開幕前のもので、通算成績は2017年シーズン終了時点
▼ 浅村栄斗(西武)
プロ入り4年目の成績(2012年)
→ 114試 打率.245 本7 点37
[前年成績] 137試 率.268 本9 点45
[通算成績] 970試 率.284 本115 点518
▼ 中田 翔(日本ハム)
プロ入り4年目の成績(2011年)
→ 143試 率.237 本18 点91
[前年成績] 65試 率.233 本9 点22
[通算成績] 1039試 率.252 本177 点643
▼ 丸 佳浩(広島)
プロ入り4年目の成績(2011年)
→ 131試 率.241 本9 点50
[前年成績] 14試 率.158 本0 点1
[通算成績] 964試 率.277 本108 点443
▼ 筒香嘉智(DeNA)
プロ入り4年目の成績(2013年)
→ 23試 率.216 本1 点3
[前年成績] 108試 率.218 本10 点45
[通算成績] 698試 率.286 本138 点445
▼ 坂本勇人(巨人)
プロ入り4年目の成績(2010年)
→ 144試 率.281 本31 点85
[前年成績] 141試 率.306 本18 点62
[通算成績] 1418試 率.286 本165 点639
▼ 山田哲人(ヤクルト)
プロ入り4年目の成績(2015年)
→ 143試 率.329 本39 点100
[前年成績] 143試 率.324 本29 点89
[通算成績] 682試 率.298 本133 点396
筒香嘉智は大きく成績を落としたが、その他の選手は軒並み前年以上の成績を挙げている。
なかでも坂本勇人は、この年に自身最多の31本塁打をマークし、そして山田哲人はこの年に自身初のトリプルスリーを達成した。チームも14年ぶりのリーグ優勝に輝くなど、まさにキャリアハイともいうべき1年だった。
これらを見ると、のちに大成する高卒スラッガーは、やはりプロ入り4年目の時点である程度の実績を残している。その過去の流れからしても、岡本も成長軌道に乗りはじめたようにも見える。巨人ファンにとって岡本の存在は、チームの将来そのものでもある。まだまだ続く長いペナントレースで、どれくらいの数字を残していくのだろうか。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)